Linuxレビュー:意気込みは見えるが押しの足りないFreespire 2.0

 今月、LinuxディストリビューションLinspireのフリー版にあたるFreespireのバージョン2.0がリリースされた。これは定評のあるUbuntuをベースにした最初のバージョンで、Freespireとしては初めてプロプライエタリなコーデックとドライバが収録されている。その外観には魅せられたが、中身については賛否入り交じる印象を抱いた。

 FreespireのイメージはライブCDとしてブートできるほか、ハードディスクに直接インストールすることもできる。例によって、まずはライブCDを試してハードウェア互換性をテストするのがよいだろう。ライブCDをブートすると、味わい深い玄人好みのブートスプラッシュ画面が表示されてから簡単なセットアップ作業に入る。まず、フルスクリーンのフレームバッファ化されたダイアログに、法律のプロによる解釈が必要になりそうな、関連のある使用許諾契約書が長々と表示される。続いて、サウンドシステムの音量の確認、調整、問題解決を行う。テストマシンのHewlett-Packard製dv2105ノートPCで音量を上げ、テスト用の曲を再生させて、サウンド系が動作していることを確認した。ほどなくKDE 3.5.6デスクトップが表示され、画面の解像度、ネットワーク機能、ダイアルアップ、タイムゾーン、表示言語、キーボードなど、さまざまなシステム設定用のボタンを備えた設定ウィンドウが開く。それらの設定を済ませると、美しい壁紙と精巧なアイコンで引き立てられたすばらしいKDEデスクトップが現れる。Freespireの見た目はなかなか良い。

 FreespireのベースがUbuntuであることは、コマンドラインやUbuntuネイティブのパッケージ管理システムを使って初めてわかった。Ubuntuでは、多くのコマンドでスーパーユーザ権限を得るためのsudoを使う必要がある。コマンドを実行するたびにsudoを使うよりも、suを使ってrootになっておくほうが簡単なので、Ubuntuベースのディストリビューションでは最初にrootパスワードの設定をすることにしている。

freespire_thumb.jpg
Freespireのデスクトップ
 デスクトップには、ハードディスクへのインストールを行うインストーラの起動アイコンが用意されている。このインストーラを実行すると、お決まりの手順に従ってキーボードの選択、rootパーティション名の決定、ユーザアカウントの設定などを行うことになる。なお、Windowsが占有していないディスクの残り領域を取得する、というオプションも存在する。私のパーティションはハードディスク内の順序どおりに番号付けしていないので、使いたいパーティションをFreespireの特異な命名規則で見つけ出すのに数分かかった。たとえば、各パーティションはPrimary 1、Logical 8といった形で表示され、swapパーティションは無視されるので、swap以外のパーティションはすべて1つの数字で表されることになる。それでも、2回現れる確認画面の最初の画面で従来の/dev/sdXxや/dev/hdXxという名前が出てくるまでは、自分が正しいパーティションを選んだかどうか確信が持てなかった。

 もう1つ不便に感じたのは、Freespireによるパーティションの作成や編集の方法だった。パーティション設定手順のページにある情報スタンザには、それまでの設定がすべて終了した後でインストール用のパーティション作成が必要になった場合はインストールを中止し、マシンをリブートして、ブートオプションの3番目にある「このコンピュータのハードディスクドライブでパーティションの作成または変更を行う(CREATE or MODIFY partitions on this computer's hard drive)」を選択しなければならない、と記されている。しかし、実際のブートオプションの3番目は「セーフグラフィックスモードでFreespireを起動する(Start Freespire in safe graphics mode)」となっており、インストーラ内の情報が新しいリリース版向けに更新されていないことがわかる。なお、Freespire 2.0ライブCDにはGNOME Partition Editorが付属しているので、手作業でパーティション操作を行う必要があれば、これを使うとよいだろう。

 インストール手順にはパッケージ選択のオプションがまったくないため、誰がインストールしても同じソフトウェア群がインストールされる。また、ライブCD環境で行ったカスタマイズ内容は、ハードディスクへのインストールにはまったく反映されない。今回は、FreespireにGRUBブートローダのインストールを行わせることにした。GRUBは、マシンにインストールされている他のオペレーティングシステムをすべてではないにせよ、ほとんど見つけ出してくれた。

 ライブCDのときと同じブートスプラッシュが表示されたあと、地味だが目を惹くログイン画面が現れる。KDE 3.5.6デスクトップが最初に起動したときには、FirefoxがLinspireのClick-N-Run(CNR)ウェアハウスのユーザログインページを開こうとする。このCNRは、ワンクリックでソフトウェアをインストールできるツールだ。

 今回のリリース版で新たに追加されたものの1つに、十数種類の無線イーサネットチップなど各種ハードウェア向けのプロプライエタリなドライバ群がある。ただ残念なことに、私の環境ではどれも動作しなかった。そのため、やはりNdiswrapperに頼らなければならなかったが、こちらはうまく機能したのでWindowsドライバのインストールと利用は問題なく行えた。また、KDEのNetwork ManagerではWPA(Wi-Fi Protected Access)とWEP(Wired Equivalent Privacy)のどちらを有効にしてもルータに接続できなかったが、コマンドラインからWEPに接続することはできた。だが、WPAでの接続はどうしてもできなかった。

 グラフィックの設定にもいくつか難点があった。インストール前の状態では、“nv”というXorgドライバを使って望みどおりに1280×800の解像度が得られていた。今回は、Freespire 2.0で新たに使えるようになったNvidiaのアクセラレイテッド・ドライバを使うことにした。ところが、画面解像度のスタートアップ設定画面でドライバを“nvidia”に変えたところ、デスクトップの解像度が1024×768しか選べなくなった。仕方なく/etc/X11/xorg.confファイルを直接手で編集することで、最適な解像度に戻すことができた。これもまたX関連の問題だが、正常に動作していたタッチパッドの反応が鈍くなることがときどきあり、またパッド上に指を置いたままにしておくとカーソルが本来の位置より右に寄ってしまうことが何度もあった。

 CPUスケーリングやRAMへのサスペンドといった高度な省電力機能は何も設定しなくても問題なく動作したが、ハードディスクへのサスペンド(ハイバネーション)機能は違った。なぜかこのオプションは、ノートPCをスリープさせるものではなく、スクリーンセーバーを起動してデスクトップへの復帰時にパスワード入力を要求する設定になっていた。

 サウンド機能は、何も調整しなくてもすべてのアプリケーションで適切に動作した。今回のリリースにおける別の追加要素として、マルチメディア関連のプロプライエタリなコードとコーデックがある。そこで、KPlayerを何種類かのビデオおよびオーディオフォーマットでテストしたが、すべて問題なく再生できた。映像は鮮明、音声も明瞭で、タイムラグやフレームのコマ落ちもなかった。また、Firefoxを使えば、GoogleやYouTubeのビデオ、GamespotやAppleの宣伝ビデオ、その他FlashやJavaを利用したサイトのコンテンツも楽しめる。

 Freespireにバンドルされているアプリケーションはそれほど多くないが、使い始めるには十分な量だ。NVU、Gizmo、Pidgin、Lsongs、OpenOffice.org、Firestarter、Kiosk Admin Tool、K3b、その他いくつかのKDEアプリケーションや(KSmileTrisやKBattleshipなどの)KDEゲームが収められている。OSには低遅延のプリエンプティブ・カーネル2.6.20-16とXorg 7.2.0が備わっており、KDE以外にもION/PWM2ウィンドウマネージャが利用できる。多くのユーザはお気に入りのアプリケーションを追加インストールするのに時間をかけることになるだろうが、その作業もapt-getやCNRを使えばそれほど難しくないはずだ。

 コマンドラインからapt-getのパッケージデータベースを更新すると、Ubuntu Feistyのリポジトリが更新されるのが標準出力で確認できた。Freespire 1.0とは違い、このバージョン2.0ではSynapticフロントエンドが姿を消しているが、コマンドラインでapt-getを使えば問題ないだろう。実際、私はSynapticの検索機能が気に入っているので、apt-getを使ってSynapticをインストールした。

 私の憶測だが、Synapticがなくなっているのは、おそらくCNRが追加されたためだろう。CNRサービスは現在アップデート中でまだ利用できないので、今回試すことはできなかった。大雑把にいうと、CNRでは各ソフトウェアがカテゴリ別に閲覧できるように表示される。興味のあるアプリケーションが見つかると、CNRによってダウンロードとインストールが行われ、メニューに該当するエントリが追加される。基本サービスの利用は無料だが、ゴールド会員の費用は50ドルである。私はSynapticやapt-getが使えるので、個人的には会費を払ってまでこのサービスを利用する理由は見当たらない。だが、Windowsからの乗り換えでapt-getのことを知らないような人であれば、このサービスを利用するかもしれない。

 このディストリビューションにしばらく触れてみて、Freespireに対する印象は賛否入り混じったものになった。Freespire 2.0は、すばらしいブートスプラッシュ、美しい壁紙、今どきのカラフルなアイコンを備えている。インストーラについては、いくつかの競合製品に比べるとわかりやすさと使いやすさの点で少し劣っている。一部の設定はコマンドラインから自分で行わなければならなかったが、ハードウェアサポートの面は許容範囲だろう。なかにはハードディスクへのサスペンドがないのを不満に感じるユーザもいるだろうが、省電力機能も容認できるレベルだ。収録ソフトウェアは少々物足りないが、最も一般的なタスクについてはそれなりのものが揃っている。アプリケーションによっては最近リリースされた他のディストリビューションのものよりバージョンが少し古いものもあるが、各アプリケーションもOSそのものも安定していて、まずまずのパフォーマンスが得られた。

 個人的にはFreespireが気に入っていたが、直接Windowsから乗り換えようとする人にとっては最適な選択肢ではないかもしれない。というのも、Freespireを十分に使いこなすためには、ある程度Linuxの使用経験が必要だと感じたからだ。そうした(直接Windowsから乗り換える)ユーザには、SimplyMEPISPCLinuxOSStux Linuxのどれかを一目見ることをお勧めする。これらのディストリビューションであれば、いずれもグラフィカルな設定システムとパッケージ管理システムのおかげで、一度もターミナルを開かずに動作させることができるはずだ。

Linux.com 原文