Mandriva 2008.0は、素晴らしい出来映え

 このほどリリースされたMandriva 2008.0は、7.2以来の最良バージョンだ。

 Mandriva Linux 2008.0には3つのエディションがある。その1つMandriva OneはCD 1枚のフリー・ライブ・バージョンで、KDEまたはGNOMEのいずれかを選択できる。2008.0への移行を考えているが、ハードディスクにインストールする前に現在のハードウェア環境で動作するかや使い勝手を確かめたいときに便利だ。使いやすくグラフィカルなインストーラが付属しており、ソフトウェア・マネージャーにソフトウェア・リポジトリを追加し好みに応じてカスタマイズすることもできる。ライブCDが必要な場合やMandrivaをインストールするかどうか迷っている場合に適している。

 Mandriva Freeはフルサイズの従来型システムで、Freeと名付けられているのはフリー/オープンソース・ソフトウェアだけで構成され自由にダウンロードし無償で使えるから。含まれているソフトウェアは厖大だ。オープンソース・ソフトウェアを使いたい場合やコーデック、プロプライエタリのドライバ、プラグインを自分でインストールできる場合に適している。

 筆者が試用したMandriva Power Packはプロプライエタリのグラフィック・ドライバやワイヤレス・ドライバなどのドライバ類、マルチメディア・コーデック、Flashなどのプラグイン、商用ソフトウェアを含む完全なシステムだ。このエディションのダウンロード版(39ユーロ)は、ほとんどの人にとって最善の選択肢だろう。特に、Linuxは初めてという人やサポートの必要な人に適している。

 3つのエディションとも流行の先端を行くグラフィックスが使われており豪華だ。カーネル 2.6.22、KDE 3.5.7、GNOME 2.20、Xorg 7.2、GCC 4.2.2など、いずれも最新安定版のソフトウェアで構成されている。

インストール

119783-1-thumb.png
Mandriva 2008

 Mandrivaのグラフィカル・インストーラは、外見には筆者が使い始めた頃とほとんど変わっていない(グラフィックスは新しい)。しかし、内部はハードウェアの検出機能を中心に改善されている。このインストーラはシステムをインストールし構成するための手順を案内してくれるのだが、Mandrivaのパーティショナーはいつも非常に使いやすい。パッケージの取捨選択には簡易版と詳細版がある。目指すデスクトップ環境を選ぶだけで細かな作業はインストーラに任せてしまうこともできるし、Customインストールを選べば、Multimedia、Games、KDEといったカテゴリ・レベルでも個別にも選択することができる。

 筆者はノートパソコンのHP Pavilion dv6105にインストールしたのだが、これに20分ほどを要した。その後、ハードウェア、システム設定、自動起動のサービス、インターネット接続などを構成していく。ウィンドウがポップアップしプロプライエタリ・グラフィック・ドライバを使用するかどうかを尋ねてきたので、イエスと答えた。表示された確認画面を見ると、サウンド、マウス、グラフィックスは自動的に構成されている。筆者はタイムゾーンを設定し、ワイヤレス・イーサネットを構成してみたが、残念ながら機能しなかった。しかし、これは大きな問題ではない。かくして、インストールは終わり、ほとんどのシステムを検出して構成に加えたGRUBはマスターブートレコード(MBR)に収まった。

 起動すると無音だがかわいらしいスプラッシュ・スクリーンが現れ、ログイン画面に案内してくれる。そのログイン画面で、筆者はまずDrak3Dを選択しCompiz Fusion 3-Dデスクトップを使ってみた。KDEでもGNOMEでも動いたが、考えてみると、どちらもテーマは多色二重らせんのコミュニティだった。呼び物の3Dメニューがあり、Ia Ora流の飾りとスタイルで統一されている。また、メニューは見出しが増え(デフォルトのKDEメニューに似ている)アプリケーションが論理的に配置されたため、以前より使いやすい。総じて、洗練されプロフェッショナルな印象がある。

 インストーラにも起動手順にもデスクトップにも感心したが、筆者の場合、構成すべき個所がいくつか残っている。まずはワイヤレス接続。初めに、Mandriva Control Center(MCC)のグラフィカルなネットワーク構成機能を使ってみた。ウィザードにはワイヤレスの選択と、Ndiswrapperを介してWindowsドライバを使うというオプションがある。ほとんどのイーサネット・カードでは動作するのだろうが、筆者の場合は機能しなかった。

 そこで、Konsoleターミナル・エミュレーターを開き、いつも使っているコマンドラインやら、新しいディストリビューションを試用してきた長年の経験から得た技巧やらを試みたが、これにも失敗。諦めかけたところで、ロードされているモジュールを詳しく調べてみるとPCMCIAドライバがあるのに気づいた。これは必要ないのでアンロードしてからNdiswrapperを再ロードしたところ、今度は動作を確認した。そこで、ssb、pcmcia、pcmcia-coreモジュールを/etc/modules.d/blacklist-mdvファイルに入れて再起動すると、MCCで接続を設定してあったため(そのときは機能しなかったが)ワイヤレス接続は、Wi-Fi Protected Access(WPA)も含めて難なく動作した。

ソフトウェア

 Mandrivaでインストールされるソフトウェアは、エディションやインストール方法によって異なる。筆者の場合、Customインストールで、サーバーとLBSを除くすべてのカテゴリを選択した。その結果、3.9GBのアプリケーションがインストールされた。KDEに付属するすべてのKアプリケーションやGNOMEで気に入っているもろもろのアプリケーションのほか、Firefox 2.0.0.6やGIMP 2.4.0 rc2やOpenOffice.org 2.2.1といった必需品などだ。

 メニューには馴染みの薄いアプリケーションもあった。たとえば、Google EarthとPicasaのインストール。どちらもターミナルを開き、ソフトウェアをダウンロードしてインストールする。ともに動作すべき機能は動作したが、1つ問題があった。アプリケーションをインストールしても、メニューからインストーラのリンクが消えないのだ。

 Mandrivaには、さまざまな領域の有用なアプリケーションが広範に集められており、Ekiga SoftphoneやSkype 1.4でインターネットを介して友人や家族と話をしたり、Pidginでインスタント・メッセージを交換したり、FileZillaでファイルをダウンロードしたりできる。

 マルチメディア・アプリケーションでは、サウンドファイルの作成・編集にはMixxxやLinux Multimedia Studio、ビデオにはKino、DVDの再生には商用のLinDVDプレイヤー、FlashにはAdobe Flash Player、ビデオ・ファイルにはXine、Totem、Kaffeine、心を癒し部屋をロックさせたければAmarok、Sound Juicer、Rhythmbox Music Playerといった具合。

 リラックスしたいときはSecond Life、Planet Penguin Racer、Crack Attack、Frozen Bubbleといった著名なゲームを楽しめ、Power PackならCedegaが同梱されているので、Windowsの人気ゲームを使うこともできる。

 スケジュール管理にはPlanner、スプレッドシートにはGnumeric、家計管理にはGnuCashが用意されている。

 Compiz Fusionには広範囲にわたるコントロール・パネルがあり、効果、コントロール、動作を設定できる。こうしたオプションが使えるディストリビューションは、ほかには、筆者の知る限り2つしかないが、Mandrivaでは、メモリがわずか512MBしかない筆者のシステムでも問題なく機能した。1週間ほどこの3Dソフトウェアを使っているが、クラッシュすることも、ウィンドウが真っ黒や真っ白になったりいろいろな矩形が現れたりすることも、タイトル・バーが消えることも、画面が残ることもない。設定した効果は遅滞なく確実に現れる。筆者が見た中では、Mandrivaの実装は最上級だ。

 Mandrivaには、Metisseという3Dウィンドウ・マネージャも同梱されている。ウィンドウをいろいろな構成で回転、屈曲、ズーム、フリップ、ワープ、トップル、配置することができるのだが、利用の効率化支援が目的とはいえ、筆者にはオモチャにしか見えない。

 新たに追加されたものの中で最も手を焼いたのは、BlogRovrのFirefoxエクステンションだ。閲覧中の内容に関連するブログ投稿を配信するサービスだが、Firefoxを開くたびにBlogRovrホームページのタブが開き、構成ウィザードと小さなログイン・ウィンドウが現れるので、ソフトウェア・マネージャですぐにアンインストールしてしまった。

ツールとユーティリティ

 Mandrivaには、アプリケーション・ソフトウェアだけでなく、管理ツールも揃っている。Mandriva Control Centerは最古級の集中管理型システム構成ユーティリティで、年ごとに改良と拡張が施されてきた。今回のリリースでは新機能は少なく、ハードウェアの検出機能やデータベースなど、基盤を構成するサブシステムが改善されたようだ。

 新しいツールの1つにPackage Statsがある。ファイルに最後にアクセスした時間を表示するので、アプリケーションを整理する(削除するか、次回はインストールしない)のに便利だ。ただし、筆者のシステムでは正確な時間はわからなかった。Mandrivaは、システムのパフォーマンスを上げるため、デフォルトではファイル・システムをnoatimeでマウントするからだ。したがって、ファイルを正確に評価するには、このマウント・パラメーターを削除した状態でしばらくシステムを運用する必要がある。また、その結果によってアプリケーションを整理するときは慎重にすべきだ。

 Network Centerも新たに加わったツールで、ネットワークとデバイスを簡単に構成することができる。IP設定、ホスト名、パスワード、接続プレファレンス、ブート手順などの構成が可能。接続やモニターもできる。Set up a new interfaceは、自動的に検出されなかったデバイスのためのツールだ。

 Import Windows documents and settingsも新しいユーティリティで、その名が示す通りの機能を持ち、動作はおおむね良好。筆者が試用したところでは、ハードディスクのWindowsパーティションからインストーラとイメージファイルがいくつかインポートされDocumentsフォルダに入った。また、Wordドキュメントは~/tmpに、使用中の壁紙はホームディレクトリに入ったが、ブックマークは行方不明。少なくともブラウザにはない。また、WindowsデスクトップのWord文書はインポートせず、電子メールもインポートしようとしなかった。

 ソフトウェアマネージャーとオンラインアップデートツールは若干改善された。インターフェイスが多少整理され、使いやすくなっている。パッケージのレイアウトもよくなり、リポジトリへの追加処理も改善された。

 Mandriva Linux Starter Guideも新たに追加されたものの1つ。主として初心者を対象とする入門書で、よく書かれている。システムのインストールからコマンドラインの使い方まで広範なテーマが説明されており、わかりやすい図版も付いている。初心者にMandriva Linuxを知ってもらうために、大いに役立つだろう。

ハードウェア

 ハードウェアのサポートもMandrivaの得意分野だ。多くのリリースで、市販されている最新のハードウェアを真っ先にサポートしてきた。

 KDEの場合、取り外し可能なメディアを挿入するとダイアログボックスが開き、操作を選ぶことができる。GNOMEでは、そのメディアのディレクトリに対してウィンドウが開く、あるいは、音楽CDの場合など、対応するアプリケーションが起動する。

 高度な省電力機能も最初の起動時から有効になっている。CPUは800MHzで待機し、必要に応じて高速化する。LCD画面はアイドルが15分続くと表示を停止し、電源コードを外すと輝度を落とす。ハイバネーションも機能する。メモリまたはディスクへのサスペンドは、眠るときも起きるときもスムーズで反応が速い。筆者が調整したのは、ふたを閉じたときの動作だけだ。デフォルトではサスペンドするように設定されている。こうした機能が初めから正常に機能するのは素晴らしい。

まとめ

 Mandriva 2008.0は優れたリリースだ。セットアップしてから今まで問題は生じていない。筆者のシステムは高速で動作し、反応は速く、安定して動いている。新たに用意されたグラフィックスは豪華で、フォントもよい。ハードウェアのサポートにも満足だ。特に、省電力機能は気に入った。マルチメディアも、手元にあるファイルフォーマットはすべて再生でき、WebでFlashビデオを見ることもできる。

 Mandrivaは初心者にとって最良のディストリビューションとして知られ、その一方、熟練者にとっても使いやすかった。それは、このバージョンでも変わらない。2008.0は、素晴らしい出来映えのリリースである。

linux.com 原文