独自ブログサイトの簡単な構築を可能とするPivot

 PivotはGPLライセンスが適用されているブログアプリケーションであるが、データベースやライブラリを別途用意する必要がなく、インストールの手間も最小のもので済むという点で他の同種ソフトウェアとは一線を画している。現状では開発の初期段階にあるものの、このソフトはセットアップする上での柔軟性と操作性の点で特に優れており、自分で独自のブログ用Webサイトをこれから運用しようと考えている人間にとって最適の選択肢だと言えるだろう。

 Pivotを使用するには、PHP 4.1.0以降がインストールされたサーバが必要となる。ただしPivotでは大半のデータをXMLファイル形態で保存するようになっているため、WordPressやMovable Typeとは異なりMySQLデータベースを必要としない。またできるだけ多くの人間に使ってもらえるよう、Pivotでは外部ライブラリを一切使用しない仕様になっている。

 Pivotをインストールする一番簡単な方法はPivot Setupを利用することである。それにはまずzip形式のセットアップ用ファイルをダウンロードしてこれを解凍し、その中にあるpivot-setup.phpスクリプトをテキストエディタで開き、自分のパスワードを指定してからファイルを保存しておく。スクリプトに関する設定はこれだけで終わりである。設定後のスクリプトはブログ用のディレクトリにアップロードして、そのアクセス権限を777としておけばいい(chmodを使用)。次に、このスクリプトに対するリンクをブラウザから直接開く。サーバ側に設定上の問題があったり何らかの設定変更が必要な場合は、スクリプト実行前のチェック段階でPivotより警告が出される。問題が検出されなければ、インストール処理用のインストラクションが開始されるので、後はそれに従って操作をすればいい。インストールに必要なファイル群については、Pivotの場合ユーザの手を煩わすことなく、SourceForge.netからの取得とセットアップまでが自動で処理される。

 こうした自動処理が何らかの理由で正常に機能しなかった場合は、必要な全パッケージのダウンロード(本稿執筆時点での最新バージョンは1.40.3 Dreadwind)、Webサーバへのアップロード、各自の用途に応じた設定変更を手動操作によって行えば、Pivotをセットアップすることができる。手動操作でのインストールプロセスについては、簡潔にまとめられた設定ガイドが同プロジェクトから提供されている。

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Pivot

 Pivotに装備されている機能の多くは、他のブログアプリケーションと共通している。具体的には、アカウントの登録とログイン、ブログ投稿記事への返信、スレッド型コメントシステムを介したコメント投稿者への返信などだ。その他にはPingおよびトラックバック機能、ブログの投稿記事をインデックス化して検索する機能も用意されている。ただしPivotが登場して間もないこともあり、フリーで利用可能なテンプレートについてはWordPressやMovable Typeほどの品揃えにはなっていないが、PivotStylesで運営されているアーカイブは順調に増強されているようだ。

 Pivotでは特別な操作をすることなくRSSフィードを作成できるが、これはすべての投稿記事を対象としたものとなり、特定のカテゴリだけに絞ることはできない。なおPivotのRSSフィードは、RSSまたはAtomのフォーマットで取得できる。

 また、これは一部のドキュメント類についても当てはまる話だが、Pivot用にいくつかのプラグインおよび機能拡張が作成されているものの、その所在が非常に分かりにくくなっているのが難点だ。とりあえず基本的な情報については、Pivot Documentationに簡単な一覧が用意されている。

現状で残されている不備

 先にも触れたようにPivotは未だ開発途上にある若いソフトウェアであり、ある程度の不備が残されているのも致し方ないだろう。現状では固定形式のサポートページが用意されていないため、ユーザはブログ形態での情報交換を余儀なくされており、必要な解説は誰かがいちいち書き起こさなければならない。とは言うもののPivotのコミュニティの一部メンバは、この問題の対策に乗り出したようである。例えば同プロジェクトには専用のサポート部門が用意されていないため、必要とするテクニカルサポートが常に受けられるとは限らないのだが、その一方で活発な意見交換の行われているコミュニティが存在しており、またドキュメント作成を目指したPivot Documentation Projectも立ち上げられたところである。

 その他の問題点としては、最近Pivotのサーバ群が結構な時間ダウンするようになっており、そのあおりを受ける形で、現在利用可能なサポートすらも得られなくなるケースが頻発している。

 軽量型のブログアプリケーションを探しているユーザにとって、Pivotは最適な選択肢の1つだろう。そのインストール手順は私の知る限りにおいて最も簡単化されており、それと同時に、他のブログアプリケーションが有している大半の機能と操作性は確保されている。ただしアクセス量の多いサイトで運用するのであれば、データをXMLファイル形式で格納するPivotはサーバに負荷がかかりすぎるため、従来型のデータベースをバックエンドで使用するブログアプリケーションを利用した方がいいだろう。そうではなく小規模なサイトを運営するだけであれば、Pivotを試してみる価値は充分にあるはずだ。

Linux.com 原文