Drupal対WordPress:ブログ管理に適しているのはどちらか

 DrupalとWordPressはどちらも優れたブログ向けコンテンツ管理システムだが、平均的ユーザの立場で比較すると結果はどうなるだろうか。その答えを得るためにLinux.comは、Bryghtが用意しているDrupalサイトとWordPress.comのフリーサイトを使って同様のサイト設定を実施した。

 両者の比較はインタフェース、サイトをカスタマイズするための基本タスク、コンテンツの追加、コメントやスパムの管理、サイトの統計情報の表示、その他利用可能なオプションという観点で行ったが、傾向の違いはすぐに現れた。一貫して、Drupalには細部の調整項目が豊富にあって複数のブログの管理に適したツールが用意されており、設定の柔軟さではDrupalに劣るWordPressは使いやすさと操作性に優れていた。

インタフェースの使用感

 Drupalには階層的インタフェースが採用され、最上位にはほんの数項目しか存在しない。これはおそらく、Drupalのような多数のオプションを持つプログラムの場合、考えられる最悪の選択と言えるだろう。なぜなら、第2または第3階層になると、選択肢の多さに圧倒されてしまうからだ。コンテンツを追加するだけなら、こうしたメニュー構成にも耐えられる。だが、管理を行うとなると、同じ作業をするにも、WordPressならクリック1、2回で済む操作のたびに、3、4倍のクリックが必要になる。タスクが1つだけならそれほど違いはないが、1つのサイト全体の設定、または、関連性はあるが1か所にまとまっていないオプション群の設定を行う際には大きな差になる。

 Drupalにとって非常に有効な改良点の1つは、同じレベルのメニュー階層にある項目間を自由に行き来できるサブメニューを用意することだろう。例えば、現状では「Administer」→「Logs」→「Recent Hits to Logs」→「Top Visitors」というメニュー選択ができない。代わりに、まず(「Administer」→「Logs」→「Recent Hits to Logs」から)「Administer」→「Logs」の状態まで戻らなければならない。これは、マウスのクリック数を増やすだけでなく、インタフェースの習得もかなり難しくしている。

 DrupalのあとにWordPressのインタフェースを使うと、想像以上の快適さを感じる。WordPressのほうがずっと使いやすい理由の1つは、オプションの少なさにある。しかも、WordPressではメニュー階層の最上位にある項目が多いため、それほど階層を深く掘下げたり、目当ての項目をあちこち探し回らずに済む。ユーザビリティ向上のため、WordPressでは最上位の項目が半分ずつ2列に分割されており、2列目がサブメニューになっているところもある。また、WordPressには使用頻度の高いタスクを集めた「Dashboard」があり、これがあればほかのメニューをまったく使わずに済むユーザも多い。以上まとめると、作成者にとっても管理者にとってもWordPressのほうがずっと使いやすく覚えやすい、ということになる。

 だが、目当てのページにたどり着いてしまえば、両者のユーザビリティの差はほとんどなくなる。その意味で、DrupalとWordPressがどちらも2、3行のヘルプをインタフェースに組み込んでいる点は見事なのだが、まず何よりも探し求めているページを見つけることが重要だろう。

判定: WordPressの勝ち。オプションの数はDrupalのほうが多いが、もっと効果的に配置すべき。

デザインのカスタマイズ

 DrupalとWordPressはどちらも、予め定義されたエレメントとテーマの組み合わせを利用してブログレイアウトのカスタマイズを行うようになっている。

 予め定義されたエレメントは、Drupalであれば「Administrator」→「Site Configuration」→「Site Information」の下に、WordPressであれば「Options」の下に用意されているが、いずれも特に説明は要らないだろう。どちらにも、カスタマイズ可能なエレメントとしてブログ名、タグライン、スローガンが含まれている。しかし、それ以外のオプションに目を向けると、WordPressのものが日時の表示形式など比較的地味な調整項目なのに対し、Drupalの「Site Information」には、冒頭ページのミッションステートメント、匿名投稿者用の名前(Slashdotの「Anonymous Coward」にあたる)、デフォルトのフロントページ、フッターの内容など、もっと目につきやすいエレメントが並んでいる。なお、日時に関するDrupalのオプションが気になる人のために言っておくと、Drupalでは「Administer」→「Site Configuration」→「Date and time」でその調整が可能だ。

 また、DrupalにもWordPressにも、数百とはいかないまでも数十ほどのテーマが用意されている。どちらのテーマも最低限の装飾しかないものが大半を占めるが、両アプリケーションとも、あらゆる美的感覚にかなうものを見つけ出すことは可能だ。概して、WordPressの「Presentation」メニューにあるテーマは、使用する色の調整可能範囲を決めたり、コンテンツを配置したりするものになっており、カスタマイズ可能な項目数はテーマごとに異なっている。これに対し、Drupalのテーマは、実施できるカスタマイズの程度にも影響し、かなり詳細な調整が行える。「Administer」→「Site Building」→「Themes」を選択すると、表示するエレメントの種類はもちろん、コメント投稿者の写真表示の有無といった詳細な項目も、任意のテーマについて設定できるのだ。Drupalの場合はそれ以上のカスタマイズも可能で、ヘッダー、フッター、サイドバーのカスタマイズができる「Site Bulding」→「Blocks」のほかに「Site Bulding」→「Menu」というメニューも用意されている。

 Drupalでは、管理ページ用に別のテーマを選ぶことも可能なので、管理には地味なテーマを使いながらも精巧にデザインされたサイトを運営したり、個人的にテーマを試して気に入ったものを探したりできる。一方のWordPressでは、テーマを選ぶとその変更がすぐにサイトに反映されてしまうので、サイトを変えずにテーマを試すことはできない。

判定: Drupalの勝ち。多くのユーザはWordPressでも満足できるだろうが、何よりページのデザインを重視するのであれば、Drupalのほうが高い満足感が得られる。

コンテンツの作成

 どちらのプログラムも、WYSIWYG形式での作成と編集のためにJavaScriptのTiny MCEを利用する。主な違いは、WordPressではデフォルトでTiny MCEが有効なのに対し、Drupalでは「Administer」→「Site Configuration」→「TinyMCE」で具体的な設定が必要な点だ。Tiny MCEを利用しない場合、Drupalは、HTMLタグを選択できる一連のフィールドしか提示しない。その代わり、管理者は、Tiny MCEにアクセス可能なユーザと作成にTiny MCEを利用するページを指定することができる。ユーザは、ツールバー、編集ウィンドウ、その他HTMLの検証やCSS(Cascading Style Sheets)に関するツールの設定も行える。こうしたオプションは、文字マップやスペルチェック、独自のHTMLコードといったオプションを有効にしたい場合に特に役立つが、どのオプションもWordPressでのTiny MCE用デフォルト設定には入っていない。なお、どちらのアプリケーションも、表の挿入はWYSIWYG形式では行えない。

 Tiny MCEを利用するかどうかに関係なく、グラフィックのアップロード、タグの割り当て、パブリッシングについては、DrupalとWordPressのどちらも期待どおりのオプションが揃っている。こうしたオプションを設定するインタフェースは当然WordPressのほうがデフォルトのDrupalより幾分使いやすいのだが、DrupalでTiny MCEを有効にするとほぼ同等の使いやすさになる。

判定: 大半のユーザにとっては五分五分。ただし、国際化対応文字の使用など特別なニーズがあれば、カスタマイズ面でDrupalが勝る。

コメントとスパムの管理

 コメントやスパムの管理の有効性は、WordPressとDrupalでほぼ同じだ。両ツールとも、承認が必要なコメントを通知してくれるメールアドレスを設定でき、スパム対策用フィルタとしてAkismetプラグインが利用できる。リンクによってコメントの承認、削除、スパム指定を行うWordPressはコンボボックスで動作を指定するDrupalよりも効率性の点でわずかに優れているが、Drupalはユーザ名、アドレス、ホストによってサイトへのアクセスを許可/拒否するルールを設定できるため、両者の優劣に差はない。

判定: 使いやすさを優先するならWordPressだが、スパムの管理を重視するならDrupalだろう。

サイトの統計情報の確認

 複数ユーザでの利用を想定したシステムだけあって、Drupalには広範にわたる情報をカバーするログが用意されている。一般的なステータスレポートに加え、最近のアクセス数、「アクセス拒否」および「存在しないページ」の各エラー発生回数、上位参照元サイト、検索キーワード、訪問者数といった情報がログとして残る。これで足りなければ、「Administer」→「Site Configuration」を選択して、サイトでGoogle Analyticsを利用するように設定することもできる。

 Drupalの情報の詳しさに比べると、WordPressのサイト統計情報は期待外れな内容だ。最近追加されたコンテンツのサマリは「Dashboard」に表示されるが、WordPressが提供する最も詳しい情報は「Blog Stats」と「Feed Stats」の下に表示される。「Blog Stats」には、参照元サイトのほか、サイトの検索に使われたキーワード、サイト上でクリックされたリンクが一覧表示され、またページヒット数がカラムとグラフの双方に表示される。だが、Drupalの提供する情報に比べればごく限られたものでしかない。「Feed Stats」にはグラフが表示されるだけで、情報はもっと少ない。ただ、公平を期すために言っておくが、こうした機能はまだベータ段階のものだ。

判定: Drupalの勝ち。たとえアクセスがあまり多くなくても、自分のサイトがどのように利用されているかをできるだけ詳しく知りたいと思うことは、ブロガは言うに及ばず、普通の人間としてもごく自然なことだろう。

その他の機能

 どちらのプログラムにも用意されている便利な機能が、検索エンジンと一般ユーザの双方からのサイトの閲覧をブロックするものだ。Drupalでは、「Administer」→「Site Configuration」→「Site maintenance」からサイトをオフラインにできる。あるいは、「Administer」→「Site Building」→「Modules」から「Ping」モジュールを無効にするか、「Administer」→「User Management」→「Roles」からサイトに対するユーザのすべての行動を抑制することもできる。WordPressでも同様のオプション設定が可能で、「Options」→「Privacy」→「I would like my blog to be visible only to users I choose」(ブログの閲覧を自分が選んだユーザだけに制限する)を選択したうえですべてのユーザを管理アカウントから除外すればよい。どの方法でも、サイトの準備ができる前にアクセスやコメントの書き込みを受けて困ることのないように、サイトの設定前にアクセスを無効化することができる。

 追加の機能は、WordPressではプラグインDrupalではモジュールの形で入手できる。WordPressのプラグインは、統計情報、レポート、広告管理などの拡張機能からコメントやスパムの処理を強化するツールまで多岐にわたる。Drupalのモジュールの選択肢の多さも同等で、RSSフィードのアグリゲータ、フォーラムや投票の追加といった機能が用意されている。

判定: 引き分け。WordPressのプラグインとDrupalのモジュールの膨大な数を考えると、正確な優劣の判断は不可能。ただ言えるのは、使いたい特定の機能があるならどちらにあるか調べればよい、ということだ。

まとめ

 今回の比較には予め用意されていたサイトを使ったので、読者の利用するDrupalまたはWordPressサイトの機能はここで説明したものとは異なる可能性がある。しかし、この2つのプログラムには非常に体系立った違いが見られたので、ほかで利用されるサイトの厳密な構造がここでの結果と大きく食い違うことはないだろう。

 WordPressもDrupalも成熟したソフトウェアであることは間違いなく、おそらくかなりの影響を相互に与え合っているのではないだろうか。重要な機能がどちらか一方にしか存在しないという状態が長く続くことはないだろうし、多分ほとんどのブロガーはどちらでも満足できるはずだ。

 結局、どちらを選ぶかは、両者の長所と短所の比較結果ではなく使う人の好みとニーズで決まる。ブログ管理のあらゆる面にわたってできるだけ多くのことを自分で決めたい場合、または複数のブログを管理する必要がある場合は、Drupalがぴったりだ。一方、管理作業の一部をプログラムに任せることを積極的に考えていて、それほど込み入ったニーズがなく、操作の効率を重視し、ブログが1つまたはせいぜい2、3個の場合は、WordPressが適しているだろう。

Bruce Byfieldは、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿するコンピュータジャーナリスト。

NewsForge.com 原文