NCSAのCyberColloboratoryコミュニティを支えるオープンソース
NCSAでCyberenvironmentsのアソシエートディレクタを務めるJim Myers氏は、オープンソースが重要なのはコンポーネントに対するさまざまな研究者の要求に応えるために相当なカスタマイズが必要なためだと言う。Cyberenvironmentsでは、分散したコンピューティングおよびデータのリソースを統合することで、新たな科学的手法と優れた生産性を各地の研究者に提供している。すべてのリソースを結び付けるために、Myers氏が選んだのはオープンソースのポータルLiferayだった。その導入を決めるまでに、彼は同じオープンソースの2つのポータルGridSphereとSakaiも調査したが、Liferayのほうが「スケーラビリティが高く、オープンソースでありながらエンタープライズ指向だった」という点で条件にマッチしていたという。LiferayでMyers氏が気に入ったのは、すぐに使えるポートレットの選択肢の広さだった。「そのため、コンテンツそのものや変更が必要な部分だけに専念できた。また、メンテナンスの実施にかかる負担についてはあまり考えなくてもよかった。その心配がいらないほど多くの人がLiferayに携わっていたからだ」
そうしたポートレットのおかげで、NCSAの開発者たちは研究者のニーズに合わせたポータルの迅速なカスタマイズを容易に行うことができる。Myers氏は、仮にNCSAが従来のプロプライエタリなアプリケーションを扱っていたら、これほど容易には迅速なカスタマイズを行えなかっただろう、と語る。「我々は、これまで行われていなかったことをしているユーザと連携して仕事をしようとしているので、この先どんなニーズが出てくるかがよくわからない。(プロプライエタリなベンダが相手では)要求事項を集めたり、ユーザと緊密なやりとりをしたりするのは非常に難しい。それではスピードが失われてしまう。機敏なやり方で仕事をするうえでスピードはきわめて重要だ」
CyberColloboratoryには400名の登録ユーザがいて、Wiki、ブログ、ドキュメント共有、メッセージボードを利用して情報交換を活発に行っている。NCSAの開発者たちは、Google Maps用マッシュアップやソーシャルネットワーキング解析ツールなど、CyberColloboratoryコミュニティのためにデータ解析のカスタムツールを多数作成している。CyberColloboratoryが発足させた最初のプロジェクトの1つは、現場の研究者たちが石油流出について議論し、さらには流出状況のシミュレーションによって、履歴データを使った流出軌跡の確認や、流出が特定の地域に及ぼし得る影響の予測を行える方法を実証したものだった。
この類の協調によって研究の永続性が確立される、とMyers氏は言う。「我々は、こうした活動を長期的に継続させるための方法を考え始めなければならなかった。また、そうしたシステムを研究者によって監査可能なものにする必要もあった。そして、次の研究を行う人物には彼らのコンポーネントをプラグインできる能力が求められる」。CyberColloboratoryのポータルによってこうした「積み上げ式の活動」が可能になるのは、すべての研究や議論、そしてそれらを結び付ける協調作業のすべてが検索可能な1つのアーカイブ内に保存されているためだ。「CyberColloboratoryコミュニティにいる人々は、このポータルにアクセスすればほかの研究者のデータを利用できる。我々はソフトウェア開発の多くを、1年ないし最大で5年にわたる研究助成に基づいて進めている。このポータルがオープンソースでなかったら、今のメンバーがいなくなった時点で誰かがその開発を引き受け、スクラッチから作業を始めなければならないだろう」
Tina Gaspersonは権威ある業界誌のいくつかでビジネスおよびテクノロジ関連の記事を執筆している。1998年からフリーランスのライターとして活躍。