Sun、8コアの「Niagara 2」――UltraSPARC T2を出荷開始――シングルチップで64スレッドの処理をサポートする新プロセッサ

 米国Sun Microsystemsは8月7日、新型プロセッサ「UltraSPARC T2」の出荷を開始した。同社は、通信業界の既存顧客をつなぎ止めると同時に、ネットワークを高速化する手段を求める新たな顧客を獲得できると期待している。

 「Niagara 2」という開発コード名でも呼ばれるT2は、8つのコアを持ち、シングルチップで64スレッドの処理をサポートする(Niagara 1の2倍に相当)。

 Sunは、Niagara 2を「チップ上のサーバ・システム」と位置づけ、演算処理だけでなく、10ギガビットEthernet、PCI Express I/O、高速メモリ・アクセスなど数多くの機能を盛り込んでいる。

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「UltraSPARC T2」のブロック・ダイアグラム(資料:米国Sun Microsystems)

 Niagaraシリーズは、CMT(Chip Multithreading Technology)設計を採用し、プロセッサ間で複数の演算命令を同時にやり取りすることができる。また、Niagara 2では、さまざまな機能が盛り込んでいるにもかかわらず、1つのスレッドを処理するのに必要な電力を、Niagara 1と同じ2ワットに抑えているという。

 同社マイクロエレクトロニクス部門のエグゼクティブ・バイスプレジデント、デビッド・イェン氏によると、Sunは、サーバだけでなく、ネットワークおよび通信インフラストラクチャ用のルータやスイッチに使用されることを期待している。

 今年3月に創設された同部門は、Sunの製品で使用するだけでなく、外部企業にラインセンスするための技術を開発する役割も担っている。

 イェン氏は、「すでに、スイッチやルータにNiagara 2を採用する方向で複数の世界的な通信企業と本格的な交渉を進めている」と語ったが、具体的な内容は明らかにしなかった。

 Sunは、ラックマウント型サーバT1000とT2000のプロセッサをNiagara 1からNiagara 2に置き換えようとしており、ブレード・サーバなどの製品にも使用する方針だ。

 また同社は、ライバルのHPやDellといった他のサーバ・ベンダーにチップをライセンスすることにも前向きな姿勢を示している。ただイェン氏は、実現までには「かなり長い道のりが必要だ」としている。Sunのチップは、すでに富士通のサーバに使用されているが、両社は長期にわたる提携関係にある。

 IDCのアナリスト、ジーン・ボズマン氏は、Niagara 2の有望な市場として、ネットワーク機器の分野を挙げている。VoIPやIPTV、Web 2.0などの新技術は、いずれも高速なネットワークを必要とするからだ。

 「Sunのチップは、ネットワーク・トラフィックの処理にも最適化されており、Sun以外の企業にとってもきわめて魅力的だ」(同氏)

 なお、Sunのマイクロエレクトロニクス部門のCTO、リック・ヘザーリントン氏によると、Niagara 2は、65ナノメートル(nm)プロセスを採用しているという。ちなみに、Niagara 1のプロセスは90nmだ。

 Sunは、Niagara 2に対応するコードを、SolarisやJavaプログラミング言語と同様、オープンソース・ライセンスでリリースする。

 また同社は、CMTプロセッサのロードマップに基づき、UltraSPARC T2の後継チップ「Victoria Falls(開発コード名)」を2008年上半期に投入する予定だ。

 イェン氏によると、Victoria Fallsは、拡張性を高めたNiagaraチップの次期バージョンで、1つのマザーボードに複数のプロセッサを組み込むことが可能になるという。また、16コアの次世代プロセッサ「Rock」を2008年下半期に投入することをあらためて表明している(関連記事)。

(ロバート・マリンズ/IDG News Service サンフランシスコ支局)

米国Sun Microsystems
http://www.sun.com/

提供:Computerworld.jp