Linuxレビュー:GeeXBoX 1.1でコンピュータをメディアセンター化する
Ogg、MP3、MP4、AVI、DVD、VCD、それらのリッピング版など、入手できる限りの種類のメディアファイルをGeeXBoXに与えてみたが、いずれも何の問題もなく再生できた。だが、ディストリビューションとしてのGeeXBoXのすばらしさは、その使いやすさと柔軟性の高さにある。
GeeXBoX 1.1のISOイメージのダウンロードサイズはわずか8.9MBに過ぎない。ハードウェア要件も最小限の内容になっていて、Pentium II 400MHzプロセッサと64MBのRAMがあれば十分にGeeXBoXを動かせる。ただ、当然のことながら、メディア再生用のCD/DVDドライブは必要になる。GeeXBoXそのもののメモリへのコピーとマシンのブートが終わると、ブート用CDがイジェクトされる。メディアセンターを起動するたびにこのブート用CDを入れるのが面倒なら、ハードディスクにGeeXBoXをインストールすることもできる。GeeXBoXのインストールにはわずか8MBのパーティションが1つあればよく、パーティション形式はLinuxのext2/3だけでなくWindowsのFATにも対応している。ハードディスクのないマシンでGeeXBoXを動作させたい場合は、USBデバイスへのインストールも可能だ。
GeeXBoXはすぐに立ち上がり、シンプルなグラフィカル環境が現れる。最初の画面には、各種メディアファイルを開いて再生したり、設定の変更(オーディオ/ビデオ再生、字幕表示など)やオプションの設定(スリープタイマや自動再生モードなど)を行ったりするコントロール群が表示される。開発者たちの手腕により、このディストリビューションは、普通のDVDプレーヤーとしても使いやすいものになっている。字幕のフォントサイズに対する細かな好みを言わなければ、デフォルトの設定で満足できるだろう。
優れたハードウェアサポート
GeeXBoXは、基本的にメディアプレーヤーのMPlayerをコアとする構成になっている。MPlayerを使うことで、GeeXBoXはローカルのハードディスクやUSBデバイス上のファイル、SambaやNFSによるネットワーク上の共有ファイルのほか、インターネットからストリームコンテンツを再生することもできる。
また、GeeXBoXは優れたハードウェア検出機能も備えている。Linuxカーネル2.6.21.3をベースにしたこのディストリビューションには、ビデオ、サウンド、ネットワーク、Wi-Fiの各カードのほとんどすべてについてドライバがバンドルされているという。確かに、私の所有するデスクトップマシンやノートPCのいずれでも、サウンド、ビデオ、ネットワークのすべてのデバイスが問題なく検出された。また、PCカード型無線アダプタだけでなく古い802.11bのPCIデスクトップカードもNDISwrapperによって動作した。
GeeXBoXでは、多数のTVチューナーカードもサポートされている。手持ちのTVチューナーカードがサポートされていれば、GeeXBoXを使ってテレビが見られる。また、このディストリビューションはLIRC(Linux Infrared Remote Control)パッケージを使用しており、2000を超える赤外線レシーバやリモコンにも対応している。ここでの唯一の欠点は、GeeXBoXの開発者が広く普及しているひと握りのリモコンのキーバインドしか用意していないことだ。そうしたリモコンでなければ、独力でキーバインドを理解しなければならない。個人的には、Bluetoothコントローラもサポートしてほしかった。
GeeXBoXのカスタマイズ
正式なGeeXBoX 1.1のISOイメージをダウンロードして使用した場合、インターネットラジオ/ビデオの再生や、プロプライエタリなファームウェアを搭載した無線アダプタの検出はできない。これは、このディストリビューションがGPLに準拠しているからだ。しかし、同プロジェクトは、GeeXBoXのカスタマイズ版スピン(spin)を生成するための簡単なグラフィカルユーティリティを提供している。
このGeeXBoX ISOジェネレータは、Linux、Windows、Mac OS X用の各実行ファイルとして10.9MBのパッケージに収められている。このジェネレータを使うと、GeeXBoXのインタフェースの外観変更、テーマや言語の選択、解像度やオーディオのチャンネル数(ステレオ、5.1chサラウンド)といったオーディオ/ビデオパラメータの設定が行える。GeeXBoX 1.1ではATIのリモコンがデフォルトになっているが、このジェネレータで独自のリモコンや受信デバイスを選ぶこともできる。
このジェネレータで私が気に入っているのは、ネットワークの設定が可能なことだ。ネットワーク用のハードウェアや設定項目は、GeeXBoXに自動検出や自動設定を行わせることも、ジェネレータの実行中にそれらを入力することもできる。これはメディアセンターマシンに固定IPアドレスを与えたり、GeeXBoXをブートするたびに入力せずに済むように無線SSIDと暗号化キーを事前に設定したりしたい場合に役立つ。手持ちの無線カードがサポートされていない場合は、GeeXBoXのISOジェネレータを使ってそのカードのWindowsドライバを収録することもできる。そうすれば、NDISwrapperでそうしたドライバが使用されるようにGeeXBoXがカスタマイズされることになる。また、このジェネレータを利用すれば、ライセンスの競合によって正式版に収録されなかったコーデックやファームウェアの追加も可能だ。
ISOジェネレータでは、オーディオやビデオのストリーミングを有効にすることもできる。SHOUTcastおよびIcecastのラジオやTVストリーミングがサポートされている。チャンネルリストのフィルタリングを可能にするために、このジェネレータには特定のチャンネルをブラックリストまたはホワイトリストとして登録できるフィールドが用意されている。また、カスタマイズ版のGeeXBoXでは、クリック1つでFTP、Telnet、Webサーバのようなサービスを実行できる。これらのサービスのインストールに加えて、ジェネレータでWebブラウザを有効にしておくとGeeXBoXを使ってインターネットのブラウジングが可能になるといった、ソフトウェアの追加機能もぜひ利用したかったところだ。
ドライバやコーデックのほか、カスタマイズ版GeeXBoXには、収録したいメディアファイルを収めたフォルダを追加することもできる。そのため、どのコンピュータで実行するかに関係なく、カスタマイズしたGeeXBoXディストリビューションでは自分で選んだ音楽やビデオがいつでも楽しめるわけだ。
GeeXBoXの開発者たちはバージョン2.0の作業も積極的に進めており、同バージョンでは機能の追加だけでなく徹底的な見直しも予定されている。しかし、リリース予定日はまだ一切公表されていない。
GeeXBoXは、非常に実用的なメディアセンターディストリビューションだ。シンプルで初心者にも親しみやすいユーザインタフェース、広範囲におよぶハードウェアサポート、そして設定面での高い柔軟性を備えている。ちなみに、私としてはGeeXBoX 1.1の正式なISOイメージのダウンロードはお勧めしない。むしろ、ISOジェネレータだけをダウンロードして、自分用にカスタマイズしたGeeXBoXのISOスピンを作るべきだろう。