SAP、子会社のOracle情報不正ダウンロードを認める――SAP社員の情報入手は否定、再発防止に向け子会社TomorrowNowの経営体制を変更

 ドイツのSAPは7月3日、同社と子会社TomorrowNowが米国Oracleの製品情報を不正に入手したとして訴えられている問題で、TomorrowNowがOracleのWebサイトから不適切なダウンロードを行った点については認めたものの、情報はSAPの従業員の手には渡っていないと主張した。

 SAPは、TomorrowNowのスタッフが顧客を装ってOracleのWebサイトに不正侵入し、Oracle製ソフトウェアとサポートに関する文書をダウンロードしたとして、今年3月にOracleから提訴された。

 SAPは6月、同訴訟について「正面から受けて立つ」意向を示していた。しかし今回、同社CEOのへニング・カガーマン氏は従来の主張を180度転換し、“大規模な産業スパイ”として同社を訴えているOracleとの和解に応じる意思があることを明らかにした。

 梱包材のメーカーでSAPユーザーの1社である米国オーウェンス・イリノイのITインフラストラクチャ・サービス担当グローバル・ディレクター、ロドニー・マスネー氏は、この訴訟がSAPのビジネスに悪影響を及ぼすことはないとの見方を示した。「SAPの顧客にとって、同社が倫理意識の高い企業だと知ることは重要だ。この争いは最終的に沈静化すると思う」と同氏は述べている。

 米国SAPユーザー・グループ(ASUG)の会長も務めるマスネー氏によると、7月3日にカガーマン氏と電話で話したとき、カガーマン氏は引き続き徹底調査を行うとともに、データの窃盗に関与した従業員に対して適切な措置を講じると約束したという。

 さらにカガーマン氏は電話で、「TomorrowNowとSAPの間には堅牢なファイアウォールがあり、情報がSAPの従業員の手に渡ったことはない。TomorrowNowの従業員が一定の手順に従わなかったことで、ダウンロードしたデータが膨大になってしまったのではないか」と説明した。

 SAPは再発防止に向け、COO(最高執行責任者)のマーク・ホワイト氏をTomorrowNowの取締役会長に任命するとともに、両社の手順を厳格に守らせ、新たなポリシーを策定し、また従業員向けの特別な教育プログラムを用意すると言明した。

 マスネー氏によると、COOに任命されたホワイト氏は「非常に倫理感にあふれる人物」だという。

 一方、調査会社ニュークリアス・リサーチのアナリスト、レベッカ・ウェッテマン氏は、SAPを管理不行き届きだと批判する。「謝罪と対応が不十分だし遅すぎる。SAPの経営陣が従業員をしっかり管理しきれてなく、また知的財産権にも十分注意を払っていないことは、SAPの顧客にとっても憂慮すべきことだ」(同氏)

 また、ロンドンの調査会社オーバムでアナリストを務めるデビッド・ミッチェル氏は、SAPは社会的評価の凋落を避けるため相応の努力が必要だと語る。同氏は調査メモに次にように記している。「法廷闘争になる可能性は残されているし、解決まで何カ月もかかるかもしれない。判決がどうであれ、SAPに対する評価は、広報を通じていかにうまく世論を乗り切るかで決まってくる」

 SAPが情報の不正入手を認めたのを受け、Oracleは3日に電子メールで次の声明を発表した。

 「カガーマン氏は、Oracleの知的財産を繰り返し違法にダウンロードしたことをようやく認めた。当社は、違法ダウンロードの規模を把握し、SAPがOracleの知的財産をどのようにビジネスに流用したかを完全に理解するべく、SAPを提訴した。われわれは、SAPがプレス・リリースに記している、司法省による同社の調査に全面的に協力する意向である」

(マーク・ソンジニ/Computerworld オンライン米国版)

SAP(ドイツ)
http://www.sap.com/

提供:Computerworld.jp