Oracle、対SAP訴訟で攻勢――不正競争防止法違反に加え、著作権侵害と契約違反で追訴

 米国Oracleは6月1日、ドイツのSAP AGを相手取って起こしている訴訟で、新たに著作権侵害と契約違反に関する訴えを追加した訴状をサンフランシスコの連邦地方裁判所に提出した。

 訴状は、「本件は企業による大規模な窃盗事件である」としたうえで、SAPがソフトウェアとサポートに関する文書を不正にダウンロードし、Oracleの著作権を侵害したと主張している。また、契約違反に関しては、同社のサポート・サイト「Customer Connection」の規約にSAPが違反したとしている。

 SAPは、6月1日に声明を出し、7月2日までにOracleの新たな訴状への対応を明確する方針を明らかにした。同社は、「それまでに、Oracleの訴状に関する事実関係を明確にしたい。当社としては、正面から受けて立つ意向だ」と説明している。

 Oracleは、SAPの子会社であるTomorrowNowのスタッフが顧客を装ってPeopleSoftとJD Edwardsの顧客サポートWebサイトにアクセスしたと主張し、SAPとTomorrowNow、および50人の個人(氏名不詳)が違法な詐欺行為を行い、不正競争と産業スパイ行為に荷担したと訴えている。

 Oracleは、この2日前、好調な同社第2四半期決算を発表し、ビジネス・アプリケーションの売上げの伸びが、同市場シェア・トップのSAPを大幅に上回ったと強調していた。両社は、以前から厳しく対立してきたが、Oracleのデータベースやミドルウェア上でSAPのアプリケーションを稼働させるなど、両社の製品をいっしょに使っている顧客も存在する。

 Oracleは、Customer Connectionサイトでのダウンロードが2006年11月末から12月にかけて異常に増えたことに気づき、不正アクセスを発見したという。

 同社によると、この間、同社のソフトウェアやサポート資料が1万回以上不正にダウンロードされており、追跡調査の結果、テキサス州ブライアンにあるSAPアメリカ支社オフィスとTomorrowNow本社のIPアドレスに行き着いたという。

 Oracleはその後、TomorrowNowが不正に個人情報を入手した顧客のリスト(ハネウェル・インターナショナルやメルク、OCEテクノロジーズBVなどを含む)を作成した。

 Oracleは当初、この訴訟について公にコメントしておらず、SAP側も自社とTomorrowNowの立場を擁護し、Oracle側の主張に対抗していくということ以外、コメントしていなかった。

 SAPは4月20日に同社第1四半期決算を発表したが、その際に、CEOのヘニング・カーゲルマン氏は、「和解に応じるつもりはなく、その理由もない。当社が不正を行ったとも考えていない」と語り、「数週間以内に」正式な対抗策を打ち出すとしていた。

 この訴訟は、競合他社製品へのサポート提供のあり方など、サードパーティのソフトウェア・メンテナンス・ビジネスのあり方を左右するさまざまな問題を包含している。ちなみに、Oracle自身も、2006年5月からSymantecと提携してSAPのR/3に対するサポートを提供している。

 専門家の間では、TomorrowNowのスタッフがOracleのサイトからコンテンツをダウンロードしていたとすれば、顧客やサポート・スタッフのコンテンツ・アクセス権の制御、アクセスを禁じる情報の管理などについて、Oracle側に明確なポリシーがなかったことのほうが問題ではないかという声も出ている。

(ロバート・マクミラン、チャイナ・マーテンス/IDG News Service サンフランシスコ支局)

Oracle(米国)
http://www.oracle.com/
SAP(ドイツ)
http://www.sap.com/
TomorrowNow(米国)
http://www.tomorrownow.com/

提供:Computerworld.jp