XMPツールキットのライセンスをAdobeが完全にオープン化

 AdobeからExtensible Metadata Platform(XMP)ツールキットの新バージョンがリリースされたが、今回のバージョンでは適用するオープンソースライセンスについての変更が施されており、同ツールキットのコードを各種フリーソフトウェアで使用することが正式に認められることになった。XMPとは、デジタル画像およびマルチメディア用メタデータを扱うためにAdobeが開発したXMLベースの規格である。

 本サイトでは4月に掲載したレポートにて、Nautilus用アドオン形式のXMP Managerおよびライブラリ形式のexempiという、2つのオープンソース系XMPプロジェクトを紹介している。当時のXMPソフトウェア開発キット(SDK)のバージョンは3.5であったが、このSDKに対してAdobeが課していたライセンスはGPLと共存できる形態のものではなかった。そのため、いずれのプロジェクトもXMP用の読み込み/書き込み機能を独自に再構築する必要があったのである。

 最新版SDKであるバージョン4.1.1に適用されることになったのは、BSDライセンスである。Adobe XMPのプロダクトマネージャを務めるGunar Penikis氏によるライセンス変更についての説明では、今回の措置は開発者コミュニティからの要望に応えてのことであり、コードをリリースするのであれば特定の企業の定めたオープンソースライセンスではなく、広く知られた既存のオープンソースライセンス下で行って欲しい、という意見が提出されていたとのことだ。

 「私どもに寄せられたフィードバックは主として非オープンソース系の開発者たちからのものでしたが、オープンソース系開発者の方々による意見も一部届いていました」とPenikis氏は語っている。「そこでライセンスの形態を、これら2種類のカスタマの要望を両立できるものに変更したのです」

 Penikis氏の説明によると、BSDライセンスは以前にSDKに適用されていたライセンスと共通する点が多く、妥当な選択肢であったということになる。その他にも同ライセンスには、GPLライセンスが適用されたソフトウェア群との共存が可能で、商用製品での利用もできるというメリットが存在していたとのことだ。同氏が希望しているのは、今回のライセンス変更によってコードの利用が進むことであり、「このSDKを積極的に利用しようという気運が高まり、コミュニティ内でいろいろと興味深いプロジェクトが誕生してくれるとうれしいのですが」と語っている。

 バージョン4.1.1のSDKでは、ライセンス以外にも2つの大きな変更が施されている。1つは新規のXMPFilesコンポーネントの追加で、これは一般的なメディアファイルフォーマットにおけるXMPメタデータの識別、読み込み、追加を行う一連のファイル操作用ルーチンである。具体的には今回のリリースにおいて、JPEG、TIFF、PNG、Photoshop、InDesign、PostScript、MOV、MPEG、AVI、MP3、WAVファイル用のハンドラが追加されている。こうしたXMPFilesの役割は、XMPデータの構文解析と操作をするXMPCoreルーチン群を補完する位置付けとしていいだろう。

 2つ目の変更は、Eclipseプロジェクトファイル群という形態による、XMPCoreへのJava実装である。この場合のEclipseは、Visual Studio、Apple XCode、Unix GCCというサポート対象のビルド環境を1つに統合する役割を果たすことになる。

 exempiプロジェクトを率いるHubert Figuiere氏は、次回のバージョンにおいて「開発努力の重複を避ける」ためAdobe SDKを直接ベースとした開発態勢に改めることおよび、ライセンス体系の単純化のためGPLからBSDへの変更を行う予定である旨をアナウンスしている。Linux環境でAdobeパッケージを用いた安定的なビルドを行うには複数のパッチを施す必要があるものの、Figuiere氏は既にこの問題に取りくみ始めており、また同氏は将来的なCおよびC++の実装も約束している。

NewsForge.com 原文