Linux版Picasaのバージョン2.7は見事な出来映え
このベータリリースはPicasa 2.7のプレビュー版にあたり、これでLinux版がWindows版に追いつくことになる。また、PicasaはまだMac OS X版が存在しない唯一のGoogleアプリなので、Apple派の友人には自慢できるだろう。
Linux版Picasaの以前のバージョンと同様、今回のリリースにもWindows互換レイヤWineのカスタマイズ版がバンドルされており、Picasa内部に自動でインストールされるようになっている。そのため、自分でWineの環境を管理する手間が省けるだけでなく、今後オリジナルのWineをインストールする際にPicasaとの互換性について心配する必要もない。
ダウンロード用にパッケージ化されたバイナリには、RPM形式とDebian形式のものがある。RPMパッケージは32ビットIntel(i386)とAMD64(x86_64)兼用で、Red Hat、Fedora、SUSE、Mandriva向けとなっている。一方、Debianパッケージには32ビットIntel版とAMD64版の2つのバージョンがあり、どちらもDebianとUbuntuで動作する。
新たなインストール方法として、GoogleのTesting Repositoryが使える。これは、APTまたはyumを利用した自動アップデートが可能な公式パッケージ・リポジトリだ。リポジトリの追加手順は、それぞれのパッケージマネージャ向けのものが用意されている。今のところ、このリポジトリにはPicasa 2.7しか存在しないが、愛用するマシンのパッケージマネージャにこのリポジトリを追加しておけば、Googleから公開されるLinuxユーザ向けの新しいパッケージを見逃すことはないだろう。
Testing Repositoryを使うにせよ、Picasa 2.7だけをダウンロードしてインストールするにせよ、インストーラは旧バージョンのPicasaがマシン上にあれば検出して置き換えようとする。もちろん、以前の設定と画像は保存される。
新たな機能
このリリースの大きな追加機能として、Googleのオンライン画像共有サービスPicasa Web Albumsのサポートがある。「Webアルバム」ボタンを押すことで、Picasaから自分のオンラインアカウントに画像をエクスポートしてアルバムに追加できるほか、新規アルバムの作成、画像のリサイズ、コメントの編集、公開/非公開の設定が行える。Picasa Web Albumsのアカウントをまだ持っていない場合は、サインアップのページが表示される。なお、既存のGoogleアカウントで同社のほかのサービスを利用していても、このページではひととおりの手順が要求される。
「ギフトCD」ボタンにより、写真を集めたCDを作成することもできる。Linux版Picasaの前バージョンでは表示のみで使えなかった機能だ。もう1つの目玉として、写真でコラージュを作成する機能がある。選んだ画像を組み合わせて、サムネイル表示、疑似ランダムに写真を積み上げた“パイル”、隙間なく敷き詰めたグリッド表示、すべての画像を重ね合わせる多重露出といったパターンが作れる。
いくつかの変更によって、ライブラリの閲覧および検索の柔軟性が向上している。まず、作成したフォルダ階層は2ペイン方式のファイルマネージャのようなツリー表示が行える。また、画像をカメラから既存フォルダに直接インポートできるので、バッチごとに新規フォルダを作らずに済む。
今回のベータリリースに付随する検索ツールでは、いくつかの便利なメタデータ・プロパティによる検索が可能だ。「iso:」というオペレータを使うことで、フィルム速度で写真を検索できる。「iso: 400」とすれば、ISO 400で撮影された写真が得られるわけだ。また、「focal:」オペレータでは、「focal: 105mm」のように、フォーカス長に基づく検索が行える。どちらのオペレータを使う場合でも、関連するEXIFデータが画像に埋め込まれている必要がある。
Googleはこのバージョンの新機能として、新しいデジタルカメラの機種とAdobe DNGファイルのサポートも挙げている。
不満な点
こうした進歩にもかかわらず、いくつかの機能には依然として改善の余地がある。まず、今回のバージョンはWineアプリケーションとは思えないほど見事な形でWine上に構築されているが、それでもWineの部分が垣間見えることがある。インタフェースの大部分は巧妙で最新のものになっているが、ダイアログボックスはWineによる旧式のWindows 95ライクなウィジェットセットになっていて、見た目によくない。
また、マシンで使っているウィンドウマネージャの特徴が、すべてではないが一部に残ってしまうのも問題だ。私の環境ではテキスト強調色を自作のテーマで設定したもの(白)にしているのだが、Picasaでも同じ強調色がテキスト選択時の背景(こちらも白)を考慮せずに使われていた。確かに些細な点だが、それならPicasa側で容易に対処できそうなものだ。
Linux版に特有の部分についていえば、一部の新機能に納得のいかない点がある。たとえば、「iso:」および「focal:」の検索オペレータは悪くないが、「aperture:」(絞り値)や「shutter:」(シャッター速度)のようなオペレータのほうが便利ではないだろうか。普通に考えれば、もっと多くのメタデータがPicasaで使えたはずだ。だが、現状ではXMPがサポートされていないため、EXIFデータを参照するには画像を右クリックしてコンテキストメニューを用いるしか方法がなく、複数の画像情報を比較することができない。
また、Picasaの自動検索機能は煩わしいのでオフにせざるを得ないだろう。きっと開発者は、この機能を欲する、または必要とするPicasaユーザ(つまり、コンピュータ上にはプライベートな写真を1枚ずつしか置かず、それらの管理だけにPicasaを利用するユーザ)を頭の中に思い描いていたのだろう。だが、こうした想定はあまり現実的とはいえない。見つかったすべての「*.jpg」ファイルをインデックス化しようとするPicasaは処理時間が余計にかかるだけでなく、必要のない画像まで取り込んでしまう。いずれの点でも、実際の写真の管理が多少面倒になる。
さらに、画像編集モードの操作性がいまひとつで、画像内からズーム操作を行うことができない。キーボードの各キーはキャプション入力ウィジェットに、マウスホイールは画面上部の画像選択機能にそれぞれ割り当てられており、マウスの移動がドラッグ操作にしか使えないためだ。また、画像の「ヒストグラム」表示を動かせるようにしてほしい。画像の右下隅に重なるように半透明で表示されるのだが、その位置が固定されているので右下隅の部分を見る際に支障が出る。
従来機能の満足できる点
Picasaを使ったことがないなら、これを機にぜひ試してみてほしい。画像補正と特殊効果のフィルタの質と使いやすさはLinuxのどんな画像処理ツールにも劣らない。プレビュー表示は高速で、各種オプションはわかりやすく、操作の取り消し、やり直し、元の画像への復元も非常に簡単だ。
ファイルのエクスポート、CDの作成、Bloggerとの統合、スライドショーおよび動画の作成といった便利な機能も処理がスムーズで使いやすい。Web アルバムに対応した機能もすばらしい。ただし(Bloggerとの統合と同様)Googleのサービスでしか使えない。
十数種類のプロバイダからインターネット経由でプリント注文できる機能は、もっとすばらしい。これほど多くの写真プリントサービスが、ほかのフリーソフトウェアですぐに利用できるようになるとは思えない。
ベータ版でないPicasa 2.7の最終リリースの予定日は今のところ決まっていないが、GoogleのTesting Repositoryを登録しておけば、だれよりも早くその知らせを受け取れるはずだ。