データ・プログラミングの「抽象化」に取り組むMicrosoft――多様なデータ・ソースへの統一的なアクセス手法を開発者に提供

 データ・プログラミングの「抽象化」にMicrosoftが取り組んでいる。さまざまなデータ・ソースへの統一的なアクセス手法をアプリケーション開発者に提供することが目的だ。同社では、具体的な成果を次期Visual Studioなどに盛り込むとしている。

 Microsoftのデータ・プログラマビリティ担当ディレクター、ブリットン・ジョンストン氏は3月27日、サンフランシスコで開催中の「VSLive!」コンファレンスで講演し、データ・プログラミングの抽象化に関する同社の計画について説明した。「われわれは、データ・ソースの種類に依存しないプログラミング環境を開発者に提供したいと考えている。近いうちに、『Conceptual Data Programming』というコンセプトに基づいた開発環境を提供するつもりだ」(同氏)

 同社がデータ・プログラミングの抽象化に取り組んでいるのは、EoD(Ease of Development)の実現というアプリケーション開発のトレンドが背景にある。ジョンストン氏は、2年前からこのテーマに取り組んでいると語った。

 Microsoftは、データ・プログラミングを抽象化する方法として、論理データベース・スキーマの上に抽象レイヤを構築することを考えている。「Entity Data Platform」によってデータ・アクセス処理の抽象度を上げ、XMLデータ、ファイル、OLAPシステムなどさまざまなソースへのアクセスを共通のコードで実現するというのが同社の目標だ。

 「テーブルやカラムの形で論理スキーマが認識されている現状から脱却するには、いくつかのステップを踏まなければならない」と同氏。最初のステップとなるのは、ADO.NET(ActiveX Data Objects)、Visual Studioの次期バージョン、.NET Frameworkでの抽象レイヤのサポートだという。

 データ・プログラミングに関するMicrosoftの構想には、LINQ(Language Integrated Query)やEDM(Entity Data Model)なども含まれている。EDMは、抽象度レベルを引き上げ、再利用可能な構成物やサービス・エコシステムの開発を実現するとされている。ジョンストン氏によると、ここでのEntityとは、ビジネス・プロセスに関連づけられたデータを表す属性の集合体を指している。

 データ・アクセス・プログラミングの統一という目標に向けて、Microsoftは開発環境の改良にも着手した。例えば、XML Schema対応のXMLスキーマ・デザイナを、次期Visual Studio(開発コード名:Orcas)のベータ版(5月リリース予定)に組み込むと、ジョンストン氏は述べている。

 Orcasのベータ版には、データベース・オブジェクトのバインディング機能を備えたEDMウィザードに加えて、XSLT(XML Stylesheet Language Transformations)ファイルのデバッガが備わる見通しだ。

 また、ジョンストン氏はVSLive!で、VBA(Visual Basic for Applications)の後継製品となる「Visual Studio Tools for Applications」をリリースしたことも明らかにした。同ツールにより、顧客やISV(独立系ソフトウェア・ベンダー)、ビジネス・パートナーによるアプリケーションのカスタマイズ作業を支援すると、同氏は語った。

 なお、年内にOrcasとともに投入される見通しのVisual Studio for Applications 2.0では、オブジェクト宣言が可能なダイナミック・プログラミング・モデルや、Webサービスのプログラミング基盤となるWCF(Windows Communication Foundation)なども追加される予定となっている。

(ポール・クリル/InfoWorld オンライン米国版)

米国Microsoft
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提供:Computerworld.jp