Novell-Microsoft協定によるGPLv3の遅れ
2006年1月に発表されたGPLv3プロセス定義によると、FSFの当初の計画では同ライセンスの最終ドラフトの公開が「2006年10月頃」、正式版の公示は「遅くとも2007年3月、できれば同年の1月15日」となっている。このプロセス定義は、GPLv3の策定を支援する各委員会で目立った問題が提起されなければ、ドラフト第2版(2006年7月に公開された)が最終バージョンになる可能性についても言及している。
だが、この第2版については、特許とデジタル著作権管理テクノロジに関する言い回しについての懸念が表明され、Linus Torvalds氏をはじめとするLinuxカーネルの開発者によって反対の声明が出された。一方で、ドラフトの改訂者の1人であるRichard Fontana氏は、第2版の公開後しばらくして「我々は策定プロセスを遅らせるつもりはない」とLinux.comに語った。
ドラフト第3版の公開が予定されていた頃に発表されたのがNovellとMicrosoftとの提携だった。これにより、それまで予期しなかった多くの懸案事項が発生した。メディアとフリーソフトウェアコミュニティの双方から、この協定はGPLに違反するのではないかという意見が出たが、それはMicrosoftがNovellのSUSE Linux Enterpriseの再配布にあたってロイヤリティを支払うことになっていたからであり、また同協定にGNU/LinuxによるMicrosoftの知的財産権の侵害が発覚した場合にNovellの顧客だけが保護されるという内容が含まれていたからであった。FSFはすぐさま、同協定が現行のGPLの下では法的な問題がないとの判断を下したが、FSFの顧問弁護士でGPLv3の法律面の起草責任者であるEben Moglen氏は「この協定に対抗する形でGPLv3を利用するというのが我々の戦略だ」と述べたという。
しかし、その方法の詳細はまだ公にされておらず、NovellとMicrosoftとの協定についてフリーおよびオープンソースソフトウェアのコミュニティに広がった懸念は、GPLv3各委員会での議論を長引かせ、激化させている。また、GPLv3委員会のなかにNovellのメンバーが少なくとも4人いる(法律家のGreg Jones氏とPatrick McBride氏、テストアーキテクトのFederico Lucifredi氏、Novellのオープンプラットフォーム・ソリューション・グループCTOであるMarkus Rex氏)ことで、議論がさらに長引く恐れがある。そのうえ、Microsoftとの協定に反対してNovellを辞めたSamba開発者Jeremy Allison氏がまだ委員会のメンバーとして残っていることが、もっと複雑な問題の火種になる可能性もある。
とはいえ、ドラフト第3版が遅れている最大の理由は、FSFがこうした予期せぬ状況に対処するにあたって慎重を期しているからのようだ。「我々は、NovellとMicrosoftの協定がもたらした状況にも対応できるように、引き続きGPLv3の細かい部分に取り組んでいる。今は、採用予定の言い回しが我々の意図しない結果につながる可能性について調査している。満足できる調査の結果が得られ次第、次のドラフトを公開する予定だ」(Brown氏)
詳細を明らかにすることは拒みながらも、Brown氏は、次のドラフトの公開は「何週間も先ということはなく何日か先」だと考えている、と語っている。
Bruce Byfieldは、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリスト。