Summer of Code for 2007に向けたGoogleの改善構想
今年で3年目を迎えるSOCとは、フリー/オープンソース系ソフトウェア(FOSS)プロジェクトに貢献するコード開発に報奨金を提供しようという、学生を対象にしたプログラムである。同プログラムが立ち上げられたのは2005年のことだが、既に1,000名を越す学生と100を越すプロジェクトが参加しており、申請段階にまで遡るとすれば、これらの数字はおそらくその10倍になるだろう。過去2年間において、参加者の約80%は各自の開発計画を終了させており、自身に対する4,500ドルの報酬および指導プロジェクトに対する500ドルの報酬を手にしている。
Googleのオープンソースプログラムコーディネータを務めるLeslie Hawthorn氏の説明によると、2007年度における最大の変更点は準備期間の延長だとされている。従来のスケジュールでは募集開始が4月で活動開始が5月末とされていたが、今年はアナウンス時期を2月に繰り上げ、指導プロジェクトの参加募集も3月14から23日、学生の参加募集も3月5から12日に前倒しされている。審査の通過者発表は4月9日に行われるが、プログラムのオフィシャルな開始日は5月28日になるとのことだ。
総勢4名で構成されるGoogleのSOC管理チームにとっても、このように準備期間が延長されたことは、過去の参加者やサポータの力を借りて各地の大学構内にSOCの広報ポスターを掲示する時間的余裕が生まれることになる。またこうした広報活動の展開および、同プログラムの存在が世に知られ始めていることを考え合わせると、今回はよりいっそうの申請者数増加が予想されるため、その審査に要する時間も必然的に長期化するはずである。
Hawthorn氏の説明によると、タイムテーブルを延長した最大の目的は、学生および指導プロジェクトの双方がより有意義な準備期間を過ごせるよう配慮しておくことにあるとされている。「寄せられたフィードバックの中に、コード開発と並行しながら短期間の一夜漬け態勢で学生たちを各自のプロジェクト活動に馴染ませるのは実際問題として困難である、という意見がいくつか寄せられていました」とHawthorn氏は語る。今回、募集開始から活動開始まで6週間という幅が持たせられたおかげで、指導プロジェクトの関連ドキュメントやコードリポジトリに学生たちは充分慣れ親しむことができるはずであり、またDrupalのホームページにも書かれているように「コミュニティの一員となる」チャンスも得られるのである。Hawthorn氏は、こうした準備期間を利用できることについて、「その間にコミュニティのメンバと実りある交流をすることによって、各自の参加するプロジェクト以外の活動にも学生たちが目を向けることになり、本プログラムが終わった後でもコミュニティとの関係が継続されるようになることを私どもは望んでいる訳です」と説明している。
準備期間の延長はGoogle側にとってもその他の利用価値があり、それは例えば学生や指導者が途中で辞退するなどの想定されるトラブルへの対処法を、事前に指導プロジェクト側にアドバイスしておく期間に充てられることだ。「指導プロジェクト側に対しては、申請段階において、こうした問題の発生時にどう対処する予定であるかをGoogle側に報告してもらうようにしておきます」とHawthorn氏は語る。「そして申請書類の審査時に、問題と思われる箇所を見つけたら、こちら側の意図を伝えるつもりです。」こうした問題について実際にどう対処するかは当事者である指導プロジェクトが決定することであるが、審査段階でこうした措置を執っておく目的は、その種の問題が発生しうる可能性を予め意識させ、事前にアドバイスを与えておくことだとされている。
その他にもHawthorn氏が指摘しているのは、準備期間に余裕が取られたことで、今回のSOCの成功率が高められることおよび、一度は落選した応募者に再戦の機会が与えられる可能性である。例えば、審査を通った学生が何らかの事情で活動開始前に辞退した場合、そうしたケースでは「いったんは審査で落とされたものの欠員が出るのを待っている学生にチャンスが与えられることになります」とHawthorn氏は語る。「最終的な決定は、指導プロジェクト側の裁量で決まることになるでしょう」
2007年度におけるもう1つの試みは、学生および指導者側向けにKnowledge Base Wikiを用意することである。これらのwikiについてHawthorn氏は、「本プログラムをより有意義に利用できるよう、新規の応募者に対して、過去に参加した指導者や学生たちからのアドバイスを与える場所」であると説明している。既にGoogleサイドからは、過去の指導者や参加学生に向けてアドバイスの投稿が呼びかけられているが、その他の人々からの意見も歓迎しているとのことだ。
Google側が改善すべき課題はいま1つ残されており、それは昨年度の参加者の一部から、学生側への報奨金の支払いが遅いことに不満の声が上がっていることだ。Googleもこうした問題については以前から解決策を模索していたのだが、オープンソースプログラムマネージャを務めるChris DiBona氏によると、本プログラムの規模の大きさが1つの障害となっているとのことである。「要は会計処理上の問題なのですが、これがなかなか始末におえません」とDiBona氏は切り出し、2006年の場合の数字として、同プログラムには「90の国々から634名の学生が参加しており、報奨金を支払う際の通貨は73種類にもなります」という状況を説明している。これに補足する形でHawthorn氏は「こうした問題の再発を防止ないし抑制するため、今年度については他の支払いシステムが利用できないかを現在検討しているところです」としている。
これらの改善を本年度において施すことになったのは、過去2年間の活動に対して寄せられたフィードバックの存在が大きな動機の1つとなっている。特に昨年2006年10月において、Drupal、Joomla!、Ubuntu、Apache、Subversionからの代表者を招いた、指導者サイドの視点による意見交換会をGoogleが主催していたのも大きいだろう。「コミュニティおよび指導者側と学生側から寄せられたフィードバックは非常に役立つものがあり、大いに感謝しております」とHawthorn氏は語っている。「こうした有用なコメントが頂けなかったら、現在進めている改善はありえなかったかもしれません」
Bruce Byfieldは、コンピュータジャーナリストとして活躍しており、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿している。
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