Microsoft CEO、Ballmer氏によるフリー/オープンソースへの批判に意見する

コメンタリ:先日のとある記者会見の席上、MicrosoftのCEOを務めるSteve Ballmer氏はフリー/オープンソースへの批判を展開する口実として、この種の人々は他者の知的所有権を尊重していないという旨の発言を行った。今回の一件に私が注目したのは、鉄面皮の二枚舌人間が自らの行為を都合よく棚上げする行為に呆れたからだけではなく、この発言を口にしたのが、世に名だたる史上最大の知的財産の不正使用者であるMicrosoftの関係者の1人だったからだ。

1つ確かなことがある。それはオープンソース系プロジェクトが他者のコードを盗用するのは困難であるということだ。これらのプロジェクトで用いられるコードについては、万人に対してアクセスが認められているからである。オープンソースという理念が世界中で受け入れられ、信頼と尊敬を得ているのは、こうした透明性があったからに他ならない。コードの内容に興味を抱いた人間は、誰であれ自分自身の目で確認できるのだ。Ballmer氏は今回の発言により、地球上で“最もボンクラ”ないしは“最大のデタラメ”なIT企業経営者として、SCOの連中と肩を並べたと見なしていいだろう。同氏が“ボンクラ”であるのか“デタラメ”であるのかの判断は読者諸兄に委ねることにするが、私個人としては“ボンクラでデタラメ”とした方がいいかとも思っている。

いかがわしさに溢れたBallmer氏の発言は、とりあえず脇に置いておくことにする。その代わりにMicrosoftがらみの特許侵害訴訟について、現代の神託とでも言うべきGoogle様の審判を仰いでみよう。「sues Microsoft」(Microsoftを訴訟)および「patent infringement」(特許侵害)というキーワード指定で検索したところ、なんとヒット数が90,000件を越えてしまった!

Microsoftに対する特許侵害訴訟

改めて言うまでもないが、ここ数年Microsoftに対する特許侵害訴訟が何件も起こされている。これらのうちで最初にして最大の勝利者となったのはStac Electronicsという企業であり、いわゆる「Extend and Embrace」(拡張と囲い込み)という言葉が使われ出したのはこの訴訟事件からであると思うが、これは独占禁止法違反に問われたMicrosoftに対して米国司法省が、同社の目に余る市場支配戦略の1つを示す際に用いた表現ということで一躍世に広まったよう記憶している。

Stac Electronicsによる訴訟以前にも、AppleがMicrosoftを訴えたことがあったが、結果的にこの裁判はApple側の敗訴で終わった。もっともこの件に関しては、経営不振のAppleにGates氏が1億5000万ドルの援助を申し出たという1997年当時の出来事があっただけに、“今後AppleはMicrosoftに対する特許侵害訴訟を起こさない”との密約による裏取引が行われたのだという噂が方々でささやかれていた。

話を20世紀中に限ったとしても、Microsoftに対して起こされた特許侵害訴訟を数えだしたらきりがない。年代順にグラフ化したらおそらくはVistaの売り上げ実績よりも急激な伸び率を示すはずだ。その一部を挙げるだけでも Carlos Armando AmadoTV Interactive DataAlcatelVirnetX、ATT、Sun MicrosystemsArendiTimeLine、3M、SendoForgentSymantecなど、そうそうたる顔ぶれの企業が名を連ねることになる。

現代は訴訟社会であることや、正気の沙汰とは思えない特許関連の法律(および訴訟)がまかり通っていることは認めるとしても、Microsoftの人間が、それも長年CEOを務めてきたその人が、公開の席において知的財産の尊重を他者に求めるなどは、理解の範疇から激しく逸脱している。

これほど多数の訴訟を起こされていたMicrosoftであるが、その裏側では、特許侵害で同社を訴えないことをコンピュータ業界の人間に誓約させるべく、躍起になってその豪腕をふるい続けていたのである。それは当時最強の攻撃力を誇っていたWindows 95のライセンス認可という武器を片手に、そのカスタマである企業群に権利の放棄を迫るという手口であった。この1995年当時、Greg Aharonian氏は次のように語っている

先週、米国司法省はソフトウェアおよびハードウェア関連の150社に対してMicrosoftとの関係についての質問状を送付したが、その中では特にMicrosoft側の行為として、同社がWindows 95をライセンスしている企業に対し、特許侵害およびその他のライセンスに関する訴訟をMicrosoft相手に起こさないよう求めたことがあるか、という質問が記されていた。おそらくは、これらの企業の中の何社かが司法省に対して、こうした要件をライセンスの条件とすることは彼らの企業活動にとって不公正な制約を課すものであるという苦言を申し立てていたのであろう。

今回の事件で特に目新しい点は何もない。Microsoftという企業は、自分たちと同じ活動をしている競合他社に目を付けては批判活動を展開することでつとに有名である。そして今日に至るもMicrosoftは他人の知的財産に手を出し続けており、その際には、根拠のない特許権を主張して特許侵害の裁判に持ち込む、というのが彼らの常套手段なのだ。いったいBallmer氏のどの口から、フリー/オープンソース系ソフトウェアのコミュニティに対する糾弾として“他者の知的所有権を尊重していない”という言葉が出てくるのであろうか? 残念ながら、Microsoftが露骨なまでの手口を常用しているということは、同社が競合製品を妨害しようとするFUD行為の常習犯であるという事実と同様、知らない人間の方が珍しいのだ。

NewsForge.com 原文