声を届けよう:Linuxでポッドキャスト

 今多くの人々が、ブログをやめてポッドキャスト――標準的なMP3プレイヤならどれを使用しても再生することのできる、ダウンロード可能なオーディオファイルの作成――に挑戦している。セッションの録音/編集/パッケージングはそれほど難しいことではないが、しかし最近まではこの作業を行なうためのツールはそれほど多くは存在していなかった。けれども現在では、Linuxフレンドリーなアプリケーションがあちらこちらで登場し始めている。

 必要となる基本的なツールは、ポッドキャストの誕生以来それほど変わっていない。最低限でも、優れたマイクとヘッドフォン、そしてライン入力ポートのあるサウンドカードが必要になるだろう。様々なハイエンド向けハードウェア製品も販売されているが、一般的なポッドキャストのためには、いくつかの基本的なハードウェアと優れた編集用ソフトウェアがあれば、ほとんどの人にとっては十分だろう。

 複数人の会話のポッドキャストを録音するには、同時に複数の話し手に対応するために、SkypeやGizmoの会議電話機能を利用してみると良いかもしれない。なお複数の場所にいる複数人の音声を録音する際には、回線のノイズを劇的に削減する手として、拾われる周囲の雑音がPCよりもずっと少ない、固定電話回線経由でセッションを行なうことも検討してみよう。FreeConferenceCall.comInstantConferenceのようなサービスを利用すれば、話し手同士の回線を繋げて通話を録音することが無料でできる。

 マイクを通して直接コンピュータに音声を録音して、音声をクリーンにし、その後セッションをアップロードするという作業の役に立つ、様々なフリーのツールが存在する。以下に最もよく使われているものをいくつか紹介する。

Ardour――プロのサウンドエンジニアの需要を満たすように設計されている。他のフリーなオーディオ編集ツールよりも使いこなせるようになるまでが大変だが、多機能でパワフルだ。また他のオーディオ編集ツールにはない、ビデオ用オーディオ機能がいくつか含まれている。

Audacity ――オーディオ録音ソフトウェアとしては最古参の部類に属するもので、大抵のLinuxディストリビューションに含まれているが、もし使用中のディストリビューションに含まれていなかったらダウンロードすればよい。Audacityのノイズ削除ツールを使えばポップノイズもヒスノイズもハムノイズも消すことができるので、凝った高価なマイクシステムの必要がなくなる。また手軽なダビング機能やインポート/エクスポート機能も、ポッドキャストを行なう人々の間では人気が高い。

Ecasound――単純な再生、ファイル形式の変換、基本的なミキシング用として設計された、基本的なオーディオ録音アプリケーション。Ecasoundはコマンドラインツールだが、いくつかのGUIラッパも利用可能になっている。

トークキャスト
ブログはつまらない、ポッドキャストはもう古いという人は、トークキャストを試してみよう。Talkshoeは、ユーザがインタラクティブなライブのラジオショーをホスト/録音することができる、ウェブベースのサービスだ。まだ正式にはLinuxをサポートしていないが、Talkshoeの作者たちによるとLinuxネイティブ版も近いうちに実現するとのことだ。それまではWineとJavaを使ったこの対処法を試してみると良いかもしれない。

ポッドキャストをホストする

 ポッドキャストを作成したとして、どのようにして聞き手の元に届けたら良いのだろうか? ポッドキャストのホスト機能が、少なくとも3つのよく使われているCMSで提供されている。

Drupal――Drupalは高機能なサーバサイドCMSで、追加のモジュール経由でポッドキャストをサポートしている。オーディオファイルをコンピュータで録音して、そのファイルをブログ記事に追加するだけで、Drupalが自動的にポッドキャストとして読者に提供してくれる。またクリエイティブ・コモンズのモジュールを使えば、ブロガーはブログ記事と一緒に公開するコンテンツについてもライセンスを選択することができる。

WordPress――通常はブログ用のツールとみなされているが、WordPressを使えば、ユーザはオーディオコンテンツもRSS 2.0やAtom経由で配布することができる。この機能は、ポッドキャストは初心者だが、ブログにはすでに親しんでいるという人にうってつけだ。MP3ファイルをブログのエントリの中にアップロードしさえすれば、後はWordPressが適切に行なってくれる。

LoudBlog――LoudBlogは、ブログのような環境でポッドキャストを行なうことを主な目的として設計されたCMSだ。録音したオーディオコンテンツがあれば、LoudBlogを使ってRSSフィードとカスタマイズ可能なウェブサイトを自動的に生成することができる。LoudBlogは基本的なブログ機能を備えてはいるが、主にオーディオ/メディアファイルを扱うように設計されていて、大量のテキストを扱うことや、大量のテキストと合わせてオーディオ/メディアファイルを扱うことには向いていない。

 当然ながらブログにポッドキャストを載せることは、ポッドキャストを配布するための唯一の――あるいは必ずしも最良の――方法ではない。 PodAdmin は、ウェブベースのシンプルなポッドキャストマネージャで、主にホスティングサービスに録音をアップロードするために使用することができる。PodAdminはPHP/MySQLを使用しているソフトウェアで、単独でも、あるいはどのCMSと組み合わせても使用することができる。

 Linux用のポッドキャストツールは現在はまだブログ用プラットフォームと同じくらい普及しているわけでも使いやすいわけでもないが、ポッドキャストは情報を届けるための方法として人気が高まり続けている。実のところ、メディア調査会社のArbitronが昨年発表した調査結果によると、35才以下の米国人の53%が、過去に少なくとも一つのポッドキャストを聞いたことがあるとのことだ。

 このことはポッドキャストという方法を使ってウェブサイトにトラフィックをもたらしたいブロガーにとっては福音だが、ポッドキャストは人々に情報を届ける方法としては時間のかかる方法でもある。録音、編集、圧縮、アップロード、そしてオーディオファイルにタグを付けるという作業は、思ったことを単にキーボードで打つことと比べるとずっと多くの時間が必要だ。

 しかし、時間がある人(あるいは、ポッドキャストをマスターしたいと思う人)なら、ポッドキャストでできることは、単に自分の好きな娯楽や趣味について熱狂的に語ることだけにとどまらず数多くある。ポッドキャストの数多くの活用方法のうちのいくつかを以下に示す。

  • コンピュータのソフトウェア/ハードウェアのインストール/導入を簡単にするために、文書やマニュアルページを録音しておく。
  • 毎週の教会の説教などの音声ファイルを教会や宗教グループのウェブサイトに載せる。
  • 職場のトレーニングセミナーを録音する。
  • 著作権の切れた童話などを朗読して、ホスティングサービスにアップロードする。

 ポッドキャストについてもう少し知りたいと思うなら、先延ばしにしないようにしよう。ブログのトレンドは数年間続いているが、ポッドキャストはすでにトークキャストやビデオブログ(「vlog」)などの他のマルチメディア体験に取って代わられようとしている。それでも、無料や低価格のポッドキャスト用の優れたツール――最新のアイデアであるフォンキャストなど――が生まれ続ける限り、ポッドキャストは使われ続けるはずだ。

Linux.com 原文