AMDのCEOが説く「ユーザーによる選択」の重要性
ルイズ氏は講演の中で、マイクロプロセッサ技術が新時代に突入しつつあることを述べたうえで、「ユーザーによる選択」という現象が起きていることを強調した。氏の言葉を借りれば、それは「チップ業界がこれまで経験してきた中で、唯一にして最大のパワー・シフト」となる。
もちろん、ユーザーによる選択が当たり前になれば、それだけコストもかかる。ユーザーには、技術的な見識や、紛らわしい広告に惑わされないための知識が求められる、とルイズ氏は指摘する。また、そうしたユーザーの変化を支援するうえで、AMDのトップとしての責任の1つは、「公正な選択」が行われるようにすることだと言い添えた。これは、過去に提訴合戦にまで発展したこともあるIntelへのメッセージにほかならない。
ルイズ氏は、ユーザーにとっての選択肢を増やすという考え方を強調するため、他の舞台演出も準備していた。同氏がオラクル、HP、IBMといったAMDのパートナー企業名を読み上げている途中、Dellの会長兼CEOであるマイケル・デル氏が割って入ったのだ。デル氏は、「ちょっと待ってくれ、どこか忘れていないか」と大声を上げながら、壇上に駆け上がった。長年にわたってIntelだけと取り引きしてきたDellは、最近その態度を改め、AMDのOpteronプロセッサを搭載したサーバを今回のOracle OpenWorldで発表している。
講演の後半、ルイズ氏は、「選択肢が増えることで伸びる可能性がある分野」として保健医療を取り上げた。氏は、元全米保健情報技術コーディネーターのデビッド・ブレイラー博士を壇上に招き、紙ベースの記録と旧態依然としたITシステムに縛られている米国保健医療業界を例に、目の前にある危機について語り合った。
ブレイラー氏は「紙は人を殺す」と言う。「医療過誤が原因で亡くなる患者は、米国で毎年10万人近くに上っている。そのうち、もしITシステムが十分に設置されていれば、最大で8割の命を救うことができた」というのが氏の見方だ。「全国規模の保健ネットワークを実現するのに必要なのは、ITベンダーによるさらなる技術革新と、すべての規模の医療施設にITを導入可能にする技術費用の大幅削減だ。ITは現在、保健医療業界の最高の治療法の1つであると考えられている」と同氏は付け加えた。
ルイズ氏は、こうした保健医療の現状を打破するのがITであり、ユーザーによる選択だと強調する。
「変化はゆっくりとしたものだが、ゆくゆくは一般市民が、自分の医療記録を自分で管理し、より良い保健医療を受けられるようになる」(ルイズ氏)
(チャイナ・マーテンス/IDG News Service ボストン支局)
提供:Computerworld.jp