IBMラショナルの責任者が「SLM統合」と「Jazz」のビジョンを語る
ラショナルのゼネラル・マネジャーであるサバー氏は、Eclipseベースの新たなプロジェクト(コード名「Jazz」)にも言及した。同プロジェクトは、ソフトウェア開発ライフサイクルのさまざまな局面に対応するコンポーネントを結び付けるもので、将来登場するラショナル製品のためのフレームワークになるとされている。以下、インタビュー内容を抜粋して紹介する。
──各種の開発ツールを結びつけたり、ポートフォリオ管理機能を組み込んだりできるツールに対する企業ニーズが高まっているが、こうしたニーズにどうこたえようとしているのか。
最近まで、クライアント/サーバ・コンピューティングや個々のディベロッパーの生産性が重視される時代が長く続いた。しかし、こうした取り組みは必要条件ではあったが、結局のところ、十分な条件ではなかった。
法令順守や柔軟性、統合性、ビジネス・プロセス管理といった課題に関して、ソフトウェア開発に対するプレッシャーが多くの組織で高まっているが、こうした要求に目を向けると、状況がきわめて複雑化していることに気づくはずだ。
ディベロッパーの中には、生き残ることだけを考えている人も少なくない。こうした人々は、開発からコードの実装や運用に至るすべての工程でビジネス・アナリストから出された要求条件を満たし、文書化して示すことができないため、例えば、金融機関内の監査にパスすることさえできない。開発チームが地理的に離れた地域に分散している場合は、さらに問題の深刻度は倍増し、きわめて困難な状況になる。
われわれは、製品のポートフォリオを刷新し、ITガバナンスへの対応や分散拠点間での開発作業の効率化、法令順守といったさまざまな課題に対応する製品の強化に取り組んでいる。当社のツールを使うことによって、ディベロッパーはこうした問題に気を使う必要がなくなる。
──これらの問題に対処するためどのような変更を加えたのか。
われわれは、法令順守などに対応する要求条件管理ツール「RequisitePro」を投入するなど、多くの機能強化を行った。今では、単にテストを自動化するだけではなく、品質を維持・向上するためのワークフローやプロセスの管理機能も用意している。
また、複数の製品を連携させ、当社のポートフォリオや既存機能全体でいっそうの統合化を推進することにより、エンド・ツー・エンドでライフサイクル追跡機能を連携させたり、開発作業を簡素化したりできるようになっている。さらに、追跡機能を使えば、開発ライフサイクル全体を貫く道筋を描くことが可能になり、監査の条件を満たすことができる。
──今後どのような機能拡張を予定しているのか。
Eclipseの開発を担当したのと同じチームが18カ月前からJazzと呼ばれる実証プロジェクトを推進している。Jazzは、ソフトウェアのライフサイクルとシステム開発を統合管理することに重点を置き、完全な統合化によって、どのようなことが実現できるのかを提示することを目指している。
また、要求条件、コード構成、テスト・ケースなどに何らかの変更を加えた場合に、そこからライフサイクル全体に情報を流すことができる。開発メタデータに対する基本的な共通監視機能を使うことで、どの時点で変更が行われても、その情報がライフサイクル全体に流れ、必要のある人物にすぐ通知される。われわれ自身も、既存のアーキテクチャを進化させるための設計パターンとしてこのプロジェクトを利用している。
──Jazzの機能が他の製品に搭載されるのはいつごろになるのか。
Jazzのメリットは、来年以降明確になってくるはずだ。われわれは、コラボレーションに対する首尾一貫した視点とWeb重視のクライアントをベースにしたアーキテクチャを採用し、当社の全製品に対応するWebインタフェースを完全に統一するためにJazzを活用しようと考えている。Rational ClearCase(バージョン管理ツール)とClearQuest(不具合追跡ツール)のWebインタフェースは、このアーキテクチャを使って統一される。
その次に来るのは、(開発チームに対応するツール・スイートの)リリースであり、Jazzで培ったわれわれの経験を多彩な機能として製品に盛り込むための方向性や、構築ツールやモデリング・ツールに対応するインタフェースのメカニズムについて説明することができるはずだ。今後製品をリリースするたびに、どのようにしてJazzのビジョンに近づこうとしているのかを明らかにすることができるだろう。
(ヘザー・ヘイブンステイン/Computerworld 米国版)
提供:Computerworld.jp