Tremulousは史上最強のフリーソフトウェア系ゲームとの遭遇か?

Doom、Quake、Unreal、Half-Life、Haloなどに代表されるファーストパーソンシューティングゲーム(FPS)というジャンルのビデオゲーム市場において、Linuxおよびオープンソース系ソフトウェアは、数と質の両面でプロプライエタリ製品に大きく水を空けられている。この分野におけるLinuxの存在は、完全に無視されているとまでは行かないものの、よく言ってニッチ市場でしかない。そのような状況下での例外的な存在が、Tim Angus氏作成によるFPSとRTS(リアルタイムストラテジ)の混成ゲームであるTremulousだ。

Tremulousのゲームエンジンは、id SoftwareがGPLに基づいて昨年リリースしたQuake 3のフリーソフトウェアバージョンである。私は実際にtremulous.netのファイル配布用ページからLinux用のTremulous 1.1.0をダウンロードしてIBM ThinkPad T40ラップトップ、デスクトップ、ワークステーションの各マシンにそれぞれインストールしてみた(Windows用も入手可能)。いずれの場合も、ルートアカウントで下記のコマンドを入力して、表示される指示に従えばよい。

sh tremulous-1.1.0-installer.x86.run

Tremulousの基本構造はクライアントサーバ式アーキテクチャをとっているが、サーバの動作方式はユーザが選択できる。1つはtremdedプログラムなどを専用プロセスとして実行させる完全なスタンドアローン方式で、もう1つはクライアントとサーバを同じマシン上で同時実行させる方式である。tremdedに関しては各種のドキュメントが整備されているが、インストール用サブディレクトリには簡潔な設定ファイルが添付されており、またtremulous.infoという独立系Tremulousサイトにアクセスすれば独自バージョンのserver.cfgも入手できる。

問題は、自分の場合は何を選択すればいいのかだ。インターネット上でのTremulousプレイ用に専用マシンを用意できるのならば、連続実行する観点からもtremdedを選択すればいいだろう。LAN上でクイックピックアップゲームを楽しむのならば、クライアントのCreate Serverオプションを選択すればいい。

私の場合はTremulousをローカルで実行した場合の状況をテストしたかったので、未使用状態のワークステーションでTremulousクライアントを起動させてCreate Serverをクリックし、適当なマップを選択してから、名前をWart’s Lairに変更しておいた。次に、実際にゲームを試用すべく、通常使用しているデスクトップマシンに席を移した。そしてゲームの起動後、Localを選択してからRefresh Listを選ぶ。すると先の設定に従ってWart’s Lairが唯一選択可能なサーバとして表示されるので、これをダブルクリックすると、すべてが正常に接続された。

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ゲームの内容

基本的にTremulousは2チーム間の対抗戦という形式を取っており、一方は人類という誰もがお馴染みの種族だが、他方の種族は壁や天井をはい回ることのできるバグ型エイリアンだ。ゲームの進行は両陣営とも3つのステージに分かれており、ステージが上がるほど能力や装備が追加される。種族への所属は、単なるチーム分けという以外にも、機能的に1つの大きな差異がある。それは、人類は装備をアップグレードできるが、エイリアンは身体をアップグレードできるという点だ。そしていずれの種族も、自陣営に固有の構造体を運用してゆく必要がある。

エイリアン

初期状態のエイリアン陣営には、GrangersおよびDretchesという2つのクラスだけが存在している。Grangersはビルダーであり、これらがエイリアンの活動をサポートするための構造体を構築する。Dretchesはソルジャーであり、これらが人類およびその構造体を攻撃する。すべてのクラスがそうであるが、これら2つのクラスにもベーシックおよびアドバンスドのバージョンが存在しており、こうしたBasilisks、Marauders、Dragoons、Tyrantsなどは場面が後半のシーンに進むと登場してくる。

ゲームの進行に応じてエイリアン側は様々なタイプの構造体を建設できるが、最初にすべてのエイリアン構造体を制御するOvermindという意識集合体を構築しておく必要がある。この構造体がゲーム中に破壊されると、Eggsを除く他のすべての構造体が機能を停止し、新規にOvermindを再建するまでエイリアン陣営はアドバンスドクラスに変化する能力を失ってしまう。

Eggsとはエイリアンを増殖させるための構造体のことだ。その他の構造体としては、Acid Tubes、Barricades、Trappers、Boosters、Hovel、Hivesなどが存在する。いずれも、対人類戦争の遂行に必要な機能が割り当てられている。

開発者との質疑応答

NewsForge:このゲームのメインの開発者であるというお話を伺ったのですが、その点に間違いはありませんでしょうか? クレジットを見ると、多数の名前が挙げられていますが。またこれらの人々は、ボランティアで参加されていたのでしょうか、それとも有給の仕事として参加されていたのでしょうか?

Tim Angus:このプロジェクトのプログラマは私だけであり、ディレクタとリーダーも兼任しています。その他の開発者は、皆さんアーティストとして参加された方々ばかりです。Tremulousは、完全に非商用目的で開発されていますから。

NF:チーム活動をベースとしたFPSとRTSの組み合わせというのは面白い着想ですね。これはTremulousで最初に取り入れられたものなのでしょうか?

TA:こうしたコンセプト自身は、それほど目新しいものではありません。Tremulousの着想は、Quake 2をモディファイしたGloomという名前のゲームから得た部分もありますが、Half Life用の「Natural Selection」や商用ゲームの「Savage」も参考にしています。Tremulousはこうした構想を完全にフリーな形で初めて実装したものであり、id SoftwareによるGPL下でのソース公開ポリシーに従っているゲームの中でも特に成功したものの1つだと言えるでしょう。

NF:現在ないし将来的な構想として、Tremulousの商用化というのはありえるのでしょうか?

TA:ないでしょうね。PayPal経由の寄付金ボタン(あるいは類似のシステム)がWebサイトに用意される可能性はあるかもしれませんが、製品として売り出せるようなものだと私は考えておりません。そうした理由の一つは、Tremulousの成功はフリーな体制に起因していると信じているからです。お金を出してプレイするというシステムであったら、ここまで人気は出なかったでしょう。

人類

人類はRifleあるいはConstruction Kitが付属した状態で生まれてくる。Construction Kitが装備された人類は、エイリアン側のGrangerと同じで、ビルダーとして活動をする。同じくRifleが装備された人類は、エイリアン側のDretch同様のソルジャーであり、敵を攻撃する歩兵として活動をする。人類がゲーム中で装備できる兵装には、Blaster、Pain Saw、Shotgun、Las Gun、Chainsaw、Mass Gun、Pulse Rifle、Grenade、Flamethrower、Lucifer Cannonがある。

人類側は装備のアップグレードが行えるが、これは攻撃用の兵器だけでなく、Light Armor、Helmets、Medkits、Battery Packs、Jet Packs、Battlesuitsなどの装具を身につけることも可能だ。

人類陣営の構造体は、最初に構築すべきReactorがエイリアン側のOvermindに相当するものである。これが破壊された場合、Telenodesを除く他のすべての構造体が機能を停止してしまう。同じく人類側のTelenodesはエイリアン側のEggsに当たり、人類はこの構造体から生まれ出てくることになる。その他の構造体としては、Gun Turrets、Tesla Generators、Armories、Defense Computers、Medistations、Repeatersが存在する。

暗闇に閉ざされた場合のヒント

ゲーム画面が暗すぎて全域を見渡せない場合は、2つの方法で対処が可能だ。これに関するFAQを見ると、特に懐中電灯らしきものを用意する必要はないらしい。一番お手軽な方法は、~キーを押してコマンドコンソールを開き、/r_gamma 2と入力してからコンソールを閉じることだそうである。

コマンド入力なんて考えるだけでも身の毛がよだつという人であれば、Escキーを押してからOptions -> System -> GFX Softwareをクリックすることで、スライダによるブライトネス調整が行える。

その他の忠告だが、TremulousをウィンドウモードにしてGaimとの同時実行を行ってはいけない。それは、到着したメッセージが原因となって、脱出不能の事態に陥る可能性があるからだ。少なくとも私は、そうした悲劇を味わったことがある。

まとめ

私の経験から言う限りでも、Tremulousは最高に堪能できるフリーソフトウェア系FPSゲームであるが、こうした見解に賛同しているのは私だけではない。実際このゲームについては既にサポートコミュニティが形成されており、こうした人々の存在は同ソフトの人気を拡大してゆくだけではなく、今後の継続的な発展にも寄与してくれるだろう。

それでは最後に、ゲームエンジンをフリー化してくれたid Softwareおよび、それをみごとに活用したDarklegion Developmentの開発陣に感謝の言葉を。読者諸兄も一度試してみれば、気に入ること間違い無しだろう。

NewsForge.com 原文