マイクロソフト、Office 2007からPDFサポート機能を削除

米国マイクロソフトはOfficeスイートの次期バージョン「Office 2007」から、文書をPDFで保存する機能を削除することを決めた。Office 2007にPDFファイルの保存機能をバンドルすることに対して、アドビ システムズが法的措置をとるという姿勢を示していることへの対応策だ。

 「われわれはこの機能を削除することをアドビに提案した。当社としては削除の判断をすでに決定している」とマイクロソフトの広報担当者、ジャック・エバンズ氏は6月2日に語った。

 同社は文書をXPS(XML Paper Specification)ファイルとして保存する機能もOffice 2007から削除する。XPSはアドビのPDFファイル形式と競合するマイクロソフト独自のファイル形式である。

 アドビはマイクロソフトによるPDFの使用を巡って、欧州で同社に対して法的措置をとる構えを見せていた。マイクロソフトに近い情報筋は5月2日、アドビが欧州連合(EU)に苦情を申し立てるか、独禁法訴訟を起こすかは不明だと語った。アドビの広報担当者ジョーディ・ワーナー氏は2日、法的措置を取るかどうかに関して「アドビは何も決定していない」と説明している。

 両社の対立は今年2月、マイクロソフトがPDFでの保存機能をOffice 2007で提供することにアドビが懸念を表明したことから始まった。現在配布中の同ソフトウェアのベータ版には同機能が搭載されている。

 マイクロソフトによると、同機能の削除に伴い、年内出荷予定のOffice 2007の購入者は、Officeアプリケーションで作成された文書をPDFまたはXPSファイルとして保存するためには、ダウンロード配布される無料ソフトウェアを利用する必要がある。

 マイクロソフトは、アドビが自社のソフトウェアがOfficeから削除され、有料で別途提供されることを望んでおり、両社は妥協策を模索してきたと述べている。

 「アドビの意向に配慮するために多くの重要な措置を講じ、係争を回避するために多くの提案を行ってきた。しかし、彼らが求めていることは顧客の利益につながらないと考えるに至った」(エバンズ氏)

 アドビのワーナー氏は、マイクロソフトはアドビにとって重要なパートナーだが、当社は、同社の独占的な営業手法に依然として懸念を抱いていると語った。「当社のCEO、ブルース・チゼンがこれまで再三訴えてきたように、マイクロソフトは市場で独占的地位を築いており、われわれは常に、彼らがその地位を悪用する可能性を懸念している」

 エバンズ氏によると、マイクロソフトはアドビとの融和を図るため、アドビのFlashおよびShockwaveソフトウェアをWindows Vistaにバンドルすることや、OEMメーカーがXPSをWindowsから削除することを認めることなども提案したという。

 にもかかわらず、アドビはマイクロソフトに対し、「世界中のだれもが無料で使える機能について、使用対価を顧客に負担させる」ことを求めていると、エバンズ氏は話している。

 なお、アドビが欧州で法的措置を講じる可能性については、2日付けのウォール・ストリート・ジャーナルが最初に報じた。

(エリザベス・モンタルバノ/IDG News Service サンフランシスコ支局)

米国マイクロソフト:http://www.microsoft.com/
米国アドビ システムズ:http://www.adobe.com/

提供:Computerworld.jp