Stallman氏の取締役復帰が議論よんだFSF、取締役に関するFAQを公開
フリーソフトウェアを推進する非営利団体Free Software Foundation(FSF)は4月28日、FSFの取締役(ボード)についてのFAQページを公開した。
FSFといえばここ1ヶ月、FSFの取締役にRichard M. Stallman(RMS)氏が復帰したことで大きな議論が生まれている。Stallman氏は2019年秋、児童売春の罪に問われていたJeffrey Epstein氏(故人)事件の一部として、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授(故人)がEpstein氏の斡旋を受けて性的関係を持ったとする報道について、Stallman氏が当時17歳だった女性が自発的に行ったのではないかと記したことが論議を呼び退任した。その後、2021年3月にFSFの年次カンファレンス「LibrePlanet」で取締役に復帰すると発表、するとオープンソース界を中心に賛否両論が出された。
FSFからは4月12日、投票権のある会員の投票によりStallman氏を取締役に任命したことを発表、同日Stallman氏自身も声明文を発表した。この間、組織としての透明性を疑問視する声も出ており、これへの対応を進めている。今回公開されたFAQもその一環となる。なお、FSFは現在、法律の専門家に入ってもらって定款の変更を進めているところで、今後数週間で変更の可能性もあるとしている。なお、現在の定款は2002年に作成されている。
現在の取締役会のメンバーは、Geoffrey Knauth氏(プレジデント兼会計)、Gerald J. Sussman氏(MIT 電子エンジニアリング教授)、Henry Poole氏(CivicActionsのファウンダー)、Ian Kelliing氏(GNU/Linux開発者、シニアシステム管理者も兼務)、Odile Bénassy氏(フランスのフリーソフトウェア活動家)、そしてStallman氏の6名。投票権を持つ会員はKnauth氏、Gerald J. Sussman氏、Poole氏、Kelling氏、Bénassy氏、Stallman氏、Oliva氏の7名。
FAQは現時点で13項目が並んでいる。取締役の責任について、日常の業務に携わるのではなく、長期的な方向性と財務的な安定にフォーカスし、責任者の任命を行うと説明している。また、取締役のメンバーは取締役やFSFを代表することはなく、FSFを代表できるのはFSFのプレジデントや執行ディレクターなどの責任者になるとしている。また、新しい取締役メンバーに求める重要な資質として、FSFの信念に忠実であること、GNUライセンスとコピーレフトの一貫性を支持すること、の2つを挙げている。取締役以外のStallman氏のFSFでの役割については、「自身のキャパ内でフリーソフトウェアについてのスピーチを行う」とし、その際にFSFのグッズを販売したり、FSFとGNUのボランティアをリクルートし、FSFへの募金活動を行うこともあるとしている。なお、取締役のメンバーは取締役としては報酬を受け取らず、基本はボランティアベース。任期は正式には設けておらず、定期的に投票権をもつ会員、時として他のディレクターから評価されるという。
FSFとGNU Projectの関係については、GNU Projectがスタートした当初は支援を行なってきたが、現在はGNU Projectのボランティアが活動を支えているとしている。現時点では、GNU Projectが使用するハードウェアのサポート、一部サーバーのOS管理、GNU商標の管理やGNUソフトウェアの著作権の強制、GNUコミュニティの支援、GNUのプロモーションなどがFSFが行う主な取り組みとしている。また、FSFはGNUライセンスの法的なパブリッシャーであり、GNUライセンスの新しいバージョンで協力するとしている。
FSF board frequently asked questions(FAQ)
https://www.fsf.org/news/fsf-board-frequently-asked-questions-faq