Linuxカーネル4.11リリース、プラガブルなI/OスケジューラやSSD向けスワップ機能などを実装

 Linux開発者Linus Torvalds氏は4月30日、「Linuxカーネル4.11」のリリースを発表した。perfツール、マルチキューブロックレイヤーなどで強化が加わっている。Intelの最新のAtomプロセッサ「Gemini」もサポートした。

 Linuxカーネル4.11は、2月後半に公開されたLinuxカーネル4.10に続く最新版。8回のリリース候補版(RC)を経ての公開となった。今回のリリースにおける大きな変更点としては、プラガブルなI/Oスケジューラフレームワークの導入やSSD向けのスケーラブルなスワップ機能、MDレイヤーにおけるRAID4/5/6向けのジャーナリングサポート、statシステムコールの代替となるstatxシステムコールの導入、新たなperf ftraceツールの導入、OPALドライバやSMC-Rプロトコルのサポート、VGAコンソールにおけるスクロールバックバッファ実装などが挙げられている。

 本バージョンで導入されたプラガブルI/Oスケジューラーは、Linuxカーネル3.13で導入されたブロックレイヤーのマルチキュー設計フレームワークを強化するもので、異なるI/Oスケジューラーを稼働中に切り替えられる。deadlineスケジューラのポートも加わり、今後もI/Oスケジューラーを追加するという。

 これまでHDD向けに設計されていたスワップの実装が強化され、SSDなどの新しいストレージデバイス向けの拡張が加わった、たとえば高速なデバイススワップによるメモリのオーバーコミットなどが可能になるとしている。

 perfツールキットでは、ftraceインターフェイス向けのシンプルなperfフロントエンドツールが加わった。現時点ではfunction_graphまたはfunctionの2種類のトレーサーをサポート、機能も単一のスレッドトレーシングで、テキストでtrace_pipeを読み込み、stdoutに書き出すにとどまっている。

 新たにサポートされたSMC-R(Shared Memory Communications-RDMA)プロトコルはIBMが開発したもので、RFC7609で定義されている。イーサネット上でRDMA転送を行うRoCEを利用することでCPU消費を削減しつつ、信頼性のある接続を実現できる。TCPのリプレースを目的としたものではなく、既存のTCPソケットアプリケーションを書き直すことなく効率化を改善できるとしている。

 そのほかLZ4圧縮モジュールのアップデートや安全なシーケンス番号アルゴリズムSipHashのサポート、F2FSやEXT4、BTRFSといったファイルシステムの強化なども行われた。CIFSではper-shareで暗号化を利用できる。

 ハードウェアでは、Intelの「Gemini Lake」チップのサポートが加わった。また、AMD Radeon GPU向けのオープンソースのARMGPUドライバでは電源管理が改善されている。

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