「OpenStack 2014.2 Juno」公開、データ処理サービス「Sahara」が正式版に

 オープンソースのクラウド基盤「OpenStack」の開発母体であるOpenStack Foundationは10月16日、最新版となる「OpenStack 2014.2」(開発コード「Juno」)をリリースした。データ処理サービス「Sahara」プロジェクトが正式プロジェクトとなり、ネットワーク仮想化機能「NFV」の初期サポートも加わっている。

 OpenStackはInfrastracture as a Service(IaaS)型クラウドサービスを構築できる基盤で、米Red Hat、米IBMなどLinuxベンダーを中心に支持を集めている。仮想マシン作成・管理サービス「OpenStack Compute」(Nova)、分散オブジェクトストレージ「OpenStack Object Storage」(Swift)、ブロックストレージ「OpenStack Block Storage」(Cinder)、ネットワーキング機能「OpenStack Networking」(Neutron)、データベースリソース管理「OpenStack Database Service」(Trove)、IDサービスの「OpenStack Identity Service」(Keystone)、オーケストレーションの「OpenStack Orchestration」(Heat)といったモジュールで構成される。

 OpenStack 2014.2は、OpenStackの10回目のリリースとなる。OpenStackは6か月ごとのリリースサイクルを導入しており、4月に公開された「Icehouse」ことバージョン2014.1に続くリリースとなる。この間133社から約1420人の開発者が貢献した。貢献が最も多かったのはRed Hatで、米Hewlett-Packard(HP)、IBM、米Mirantisが続く。

 本バージョンではエンタープライズ向けの機能として、データ処理サービス「OpenStack Data Processing」(Sahara)が正式に導入された。Apache HadoopやインメモリフレームワークのApache Sparkを利用したビックデータクラスタのプロビジョニングや管理を自動化するものとなる。OpenStackによると、ビックデータ分析は企業の優先課題となっており、Saharaを利用して必要なリソースを迅速にプロビジョニングできるという。

 Swiftではストレージポリシー機能を導入、実装担当やアプリ開発者は地理的な区分にまたがって、異なるバックエンドでデータの保存、複製などについてポリシーを策定できる。

 ネットワーク分野の強化も大きな特徴となっており、ネットワーク機能の仮想化技術であるNFV(Network Functions Virtualisation)をOpenStack上で動かすための準備が進められている。これは今年春に決定した方針に沿い、5月にチームを結成して開発に着手、Junoでは最初の成果を盛り込んだとしている。これにより、キャリアやISPなどのテレコム業界にアピールする狙いとなる。

 NeutronではIPv6サポートが実現した。サードパーティのドライバとの互換性も強化されたほか、バックエンドでのOpenStack Networking API実装のプラグインが有効になり、Distributed Virtual Router(DVR)とLayer3 High Availabilityもサポートした。

 Novaでは、代替イメージから起動できるレスキューモードを改善した。nova-networkコードの改善によりネットワーク単位での設定が可能となった。スケジューリングなども強化されている。

 Keystoneではフェデレーション型認証を強化し、プライベートとパブリックのOpenStackクラウドに同じ認証を利用できるようになった。

 このほかにも、プラットフォーム全体でOpenStackクラウドの構築、運用、拡張、更新を容易にする機能強化が加わり、エンタープライズのニーズに応じた。

 開発チームは、2015年4月30日にリリース予定という次期版「Kilo」についても開発の方向性を説明している。それによると、「Ironic」として進めているベアメタルプロビジョニングサービスの統合を計画しているほか、ファイル共有システム「Manila」、キューサービス「Zaqar」、DNSサービス「Designate」などのインキュベーションプロジェクトの登場を予定しているとのことだ。

OpenStack Foundation
http://www.openstack.org/