FTPSやIPv6にも対応、国産ならではの分かりやすさを備えた軽量FTPソフト「FFFTP」

 個人のウェブサイト管理から企業での資料送付まで、大容量のデータを転送するにはFTPを使うことが多い。日本で人気のFTPソフトとしては、「FFFTP がある。FFFTPはオープンソースのソフトウェアであり、有志による開発が進められている。最近開発が活発になっており、FTPSへの対応など新機能が多く追加されている。今回はこのFFFTPの使い方を紹介しよう。

 FFFTPは高い操作性が特徴のFTPクライアントである。エクスプローラとよく似た分かりやすいユーザーインターフェイスを持ち、ドラッグ&ドロップで簡単にファイルを転送できる。動作はとても軽快で、日本製ならではの漢字コード自動変換機能なども併せ持っている。このため10年以上の長きにわたって、定番ツールの座を守り続けてきた。

 近年ではセキュリティ意識の高まりやFTPに代わるファイル送信手段の普及により、FTPが利用される機会はやや少なくなっている。FTPは通信を暗号化しないため、やり取りしているファイルや情報が盗まれる可能性があるからだ。また、FTPサーバーを狙ったマルウェアによって多数のWebサイトが攻撃される事件も発生している。そのため、暗号化通信によってセキュリティを強化したFTPS(FTP over SSL)といった方式が近年では広まりつつある。

 FFFTPでは、バージョン1.98以降でFTPS(FTP over SSL)に対応。「Explicit」および「Implicit」双方のモードが利用でき、サーバー側がFTPSに対応しているなら安全な転送を実行可能だ。また、Windows XP以降でサポートされ、Windows Vista以降には標準搭載されているIPv6にも対応している。

 近年はファイルのやりとりにクラウドストレージや、SkypeなどのIMを使うことも増えた。しかし、LAN内でのファイル交換など、FTPを利用するケースはまだ少なくない。FFFTPの使い方は覚えておいて損はないだろう(図1)。

図1 FFFTP 1.98以降はFTPSに対応、安全なファイル転送が行える。
図1 FFFTP 1.98以降はFTPSに対応、安全なファイル転送が行える。

 なお、FFFTP 1.98c以前にはいくつかの脆弱性が含まれているため、可能な限り最新版の利用をおすすめする。

FFFTPのインストール

 FFFTPはOSDNのダウンロードページから入手できる。通常はWindowsのマークとともに「DL」と書かれたリンクをクリックし、最新のインストーラを保存すればよい。下部の「リリースファイル一覧」からは英語版やソースコードも入手できる(図2)。

図2 「DL」と書かれたリンクをクリックしてFFFTPの最新版を入手する
図2 「DL」と書かれたリンクをクリックしてFFFTPの最新版を入手する

 ダウンロードしたファイルを実行してインストールを行う。FFFTPのインストーラはウィザード形式なので、画面の指示に従って「次へ」をクリックしていくだけでよい。途中、インストール先のパスが存在しない場合は、フォルダの作成を確認する画面が表示されるが、ここでは「はい」をクリックする(図3、4)。

図3 「次へ」をクリックしていくとインストールが完了する
図3 「次へ」をクリックしていくとインストールが完了する
図4 この画面が表示されたら「はい」をクリックすればよい
図4 この画面が表示されたら「はい」をクリックすればよい

FFFTPの基本的な使い方

 デスクトップのアイコンかスタートメニューからFFFTPを起動すると、メイン画面とホスト一覧画面が表示される。使用を始めるにあたり、セキュリティの設定を行うため、ホスト一覧画面の「閉じる」をクリックする(図5)。

図5 最初に「閉じる」をクリックする
図5 最初に「閉じる」をクリックする

 サーバーへの接続時、毎回アカウント名とパスワードを入力する手間を省くため、FFFTPではこれらの情報をAES形式で暗号化し、レジストリに記録する。しかしGumblarの亜種をはじめとする一部のウイルスは、PCに感染するとこれらの情報をレジストリから抜き取り、暗号を解除した上で外部へ送信してしまう。そこで役に立つのが「マスターパスワード」機能だ。マスターパスワードを設定すると、暗号化の解除が極めて困難になる。仮にウイルスへ感染したとしても、FTPのアカウント情報を盗み出される恐れが少なくなり、安全性は飛躍的に向上するのだ。マスターパスワードを設定するには、まずメニューバーの「接続」−「設定」−「マスターパスワードの変更」を選択する(図6)。

図6 マスターパスワードの変更は非常に重要だ
図6 マスターパスワードの変更は非常に重要だ

 「新しいマスターパスワードを2回入れてください」というダイアログが表示されるので、任意のパスワードを入力し、再度表示されるダイアログでも同様のパスワードを入力する。以降、FFFTPの起動時に、設定したマスターパスワードの入力が求められるようになる。マスターパスワードの入力が面倒な場合は後述する方法でショートカットを作っておくとよい(図7)。

図7 任意のパスワードを2回続けて入力し、マスターパスワードに設定する
図7 任意のパスワードを2回続けて入力し、マスターパスワードに設定する

 マスターパスワードの設定が終わったら、メニューバーの「接続」−「接続」を選ぶか、ツールバーの一番左のボタンをクリックする。ホスト一覧画面が表示されるので「新規ホスト」をクリックしよう(図8)。

図8 再びホスト一覧を表示して「新規ホスト」をクリックする
図8 再びホスト一覧を表示して「新規ホスト」をクリックする

 するとホストの設定画面が表示される。「ホストの設定名」に任意の名前を入力し、「ホスト名」にサーバーのアドレスを入力。「ユーザ名」「パスワード/パスフレーズ」を入力したら「OK」をクリックする(図9)。

図9 サーバーのアドレスとアカウント情報を入力する
図9 サーバーのアドレスとアカウント情報を入力する

 ホスト一覧画面に戻るので、同様に「新規ホスト」をクリックして、必要な分だけサーバーの設定を行う。入力済みのサーバー情報を修正する場合は左側の一覧からサーバーを選択し、「設定変更」をクリックすればよい。また「新規グループ」をクリックするとフォルダを作成できる。多数のサーバーを管理する場合には活用したい。設定が終わったら接続したいサーバーを選んで「接続」をクリックしよう(図10)。

図10 接続したいサーバーを選んだら「接続」をクリック
図10 接続したいサーバーを選んだら「接続」をクリック

 FTPSで接続する場合、証明書の情報が表示される。「はい」をクリックすると処理が続行される(図11)。

図11 証明書が表示されたら内容を確認して「はい」をクリックする
図11 証明書が表示されたら内容を確認して「はい」をクリックする

 画面下部に「ファイル一覧の取得は正常終了しました」と表示されたら接続は完了だ。ウインドウ左側のペインにはローカルのPC内にあるファイル、右側のペインにはリモートのサーバー内にあるファイルが、それぞれ一覧表示される。Windowsのエクスプローラと同様に、フォルダをダブルクリックして開くか、アドレスバーの左側にある「上へ」ボタンをクリックして、転送したいファイル/フォルダがあるフォルダ(ディレクトリ)を選択しよう。ドライブをまたがる移動はアドレスバーから行える。また、エクスプローラと同じく「Backspace」などのキーボードショートカットも利用できる(図12)。

図12 左右ペインの「上へ」ボタンとフォルダのダブルクリックで必要なフォルダを表示する
図12 左右ペインの「上へ」ボタンとフォルダのダブルクリックで必要なフォルダを表示する

 目的のフォルダを表示したら、アップロードする場合は左ペインから右ペインへ、ダウンロードする場合は右ペインから左ペインへ、転送したいファイル/フォルダをドラッグ&ドロップしよう。すると、すぐに転送がスタートする(図13)。

図13 転送はペイン間でファイルをドラッグ&ドロップするだけだ
図13 転送はペイン間でファイルをドラッグ&ドロップするだけだ

 ローカルのフォルダをいちいち探すのが面倒なら、右ペインからエクスプローラに、あるいはエクスプローラから右ペインに直接ファイル/フォルダをドラッグ&ドロップして転送を行うことも可能だ(図14)。

図14 エクスプローラに/からのドラッグ&ドロップにも対応している
図14 エクスプローラに/からのドラッグ&ドロップにも対応している

 転送中は図15のようなダイアログが表示され、転送状況を確認できる。

図15 転送中の画面では進捗が表示され、転送の中止もできる
図15 転送中の画面では進捗が表示され、転送の中止もできる

FFFTPのその他の使い方と設定

 サーバー内やPC内のファイルを削除したり、ファイル名を変更したりするのは、ファイルを右クリックして表示されるコンテキストメニューから行える。コンテキストメニューからはフォルダの作成や、フォルダ内にある全ファイルの容量を計算することも可能だ(図16)。

図16 ファイルのコンテキストメニューから「削除」「名前変更」「フォルダ作成」などを選ぶとそれぞれの操作を実行できる
図16 ファイルのコンテキストメニューから「削除」「名前変更」「フォルダ作成」などを選ぶとそれぞれの操作を実行できる

 コンテキストメニューから「属性変更」を選ぶと、ファイル/フォルダのパーミッションを変更できる。Webサービスのスクリプトなどをサーバーで動作させる場合、必要になることがあるので覚えておきたい(図17)。

図17 属性変更ではオーナー、グループ、その他についてパーミッションを変更可能
図17 属性変更ではオーナー、グループ、その他についてパーミッションを変更可能

 FFFTPでは、転送時の転送モードがファイルの拡張子から自動的に決定されるが、明示的に指定したい場合はツールバーの「A」「B」と書かれたボタンをクリックしよう。それぞれアスキーモードとバイナリモードに切り替えられる。また、隣にある「SJIS」「EUC」「UTF8」「UBB」と書かれたボタンをクリックするとファイルの漢字コードを指定できる(図18)。

図18 転送モードや漢字コードを切り替えるにはツールバーのボタンをクリックする
図18 転送モードや漢字コードを切り替えるにはツールバーのボタンをクリックする

 一度しか利用しないサーバーと接続する場合、前ページで紹介したアカウントの設定を行う代わりに「クイック接続」を利用するのがおすすめだ。メニューバーの「接続」−「クイック接続」を選択するか、ツールバーの左から2つめのボタンをクリックすると「接続先」ダイアログが表示される。サーバーのアドレス、ユーザ名、パスワードを入力して「OK」をクリックすると、即座に接続が行われる。なお、うまく繋がらない場合は「PASVモードを使う」にチェックを入れてから「OK」をクリックすればよい(図19)。

図19 クイック接続ではアドレスとアカウント情報を入力するだけですぐに接続できる
図19 クイック接続ではアドレスとアカウント情報を入力するだけですぐに接続できる

 初期状態のFFFTPはまずFTPS(Implicit)でサーバーに接続を試みたあと、接続に失敗するとFTPS(Explicit)、FTPという順で接続を試行する。このため、暗号化されていないFTPサーバーにも取り立てて問題なく接続可能だ。しかし、FTPSで接続するつもりが誤ってFTPで接続され、パスワードが漏れ出してしまうというリスクもある。常にFTPSで接続したい場合は、ホストの設定画面で「暗号化」タブを開き、「暗号化なしで接続を許可」のチェックを外そう。なお、当然ながらFTPSが用意されていないサーバーとは接続できなくなるので注意されたい(図20)。

図20 「ホストの設定」の「暗号化」タブから「暗号化なしで接続を許可」のチェックを外すとセキュリティが向上する
図20 「ホストの設定」の「暗号化」タブから「暗号化なしで接続を許可」のチェックを外すとセキュリティが向上する

 起動時に毎回マスターパスワードを入力するのが面倒な場合は、コマンドラインから自動でマスターパスワードを入力してくれるショートカットを作っておくとよい。まずはデスクトップかスタートメニューのショートカットを右クリックし、コンテキストメニューから「プロパティ」を選択する(図21)。

図21 ショートカットを右クリックし「プロパティ」を選ぶ
図21 ショートカットを右クリックし「プロパティ」を選ぶ

 「リンク先」のテキストボックスに書かれているパス(通常は”C:\Program Files\ffftp\FFFTP.exe”)の後に、半角スペースを挟んで「-z -<登録したマスターパスワード>」(ハイフンゼットスペースハイフンマスターパスワード)と入力し「OK」をクリックする。以降はそのショートカットから起動すると、マスターパスワードを入力しなくてもよくなる。ただし、安全性はわずかながら低下するため、利便性とのバランスを考えて自己責任で使ってほしい(図22)。

図22 マスターパスワードが「password」なら、「リンク先」に「
図22 マスターパスワードが「password」なら、「リンク先」に「”C:\Program Files\ffftp\FFFTP.exe” -z -password」と入力する

今回紹介したツール:FFFTP