2010年版Linuxカーネル開発報告書:モバイル企業の貢献が増える、開発活動は安定
Linuxを推進する非営利団体Linux Foundationは12月1日、Linuxカーネル開発に関する年次報告書「Linux Kernel Development」を発表した。この1年間でLinuxカーネルに追加されたコードは150万行、参加企業は米Red hatなどのLinuxベンダーに加え、フィンランドNokiaなどのモバイル企業の参加が目立った。
Linux Kernel DevelopmentはLinux Foundationが2008年以来毎年公開しているLinuxカーネル開発の報告書。主としてLinuxカーネル開発の活動や誰が書いているのか、出資企業はどこか、にフォーカスしている。
2005年3月公開のカーネル2.6.11から2010年2月公開の2.6.33、5月の2.6.34、8月の2.6.35までを調査した(Linuxカーネルの最新版は10月公開の2.6.35)。それによると、2.6.35のコード行数は1346万8253行。この1年で加わったコードは約150万行で、毎日9058行が追加、4496行が削除、1978行が変更されていることになるという。なお、コミット数は2009年6月の2.6.30をピークに減少。ext4やbtrfsなどの長期的プロジェクトが完成し安定してきたこともあり、変更率も減少している。
開発作業に関わった開発者数の増加も安定した。2.6.35では1187人、わかっているだけでも184社が参加したが、開発者数は2.6.24(2008年1月リリース)で千人台に達して以来、2.6.32(2009年12月リリース)の1248人を上限に1000〜1200人台を推移している。企業も2.6.33の259社を上限に180~250台を推移している。累計では、2005年以降6117人の開発者、659社がLinuxカーネル開発に関わったことになる。
Gitレポジトリの履歴個人開発者の活動を集計したデータでは、バージョン2.6.12(2005年5月公開)からの場合、最も変更が多かったのはDavid S. Miller氏の2533件。全体の1.3%という。2.6.30からのデータでは、Paul Mundt氏の665件(1.3%)。Linux Torvalds氏は両方で上位30には入っておらず、2.6.12~の変更数は886件、2.6.30~は168件という。レポートでは、Torvalds氏をはじめシニアレベルのカーネル開発者はアクティブで開発プロセスの重要な部分を担っているものの、変更数からは測定できないとしている。
カーネル開発者の雇用主は、最大がRed Hatで、全体の12.4%にあたる変更数23356件がRed Hatの開発者による作業となる。次いで、米Novell(7%)、米IBM(6.9%)、米Intel(5.8%)など。所属なしは18.9%、所属先不明は6.4%(バージョン2.6.12以降)。
だが、2.6.30~の集計では、順位は入れ替わり、1位Red Hat(12%)、2位Intel(7.8%)、3位Novell(5%)、4位IBM(4.8%)、5位Nokia(2.3%)となる。ここでは、ルネサステクノロジ(2%)やTexas Instruments(1.5%)など、組み込み・モバイル系の貢献が増えている。
Linux Foundation
http://www.linuxfoundation.org/
「Linux Kernel Development」
http://www.linuxfoundation.org/docs/lf_linux_kernel_development_2010.pdf