地図グラフが作れるEuroOffice Map Chart
人口統計や地理に関するデータをグラフ化したいとしよう。OpenOffice.orgのグラフ作成機能を使えば、棒グラフや円グラフ、さらに分解ドーナツグラフを使ってデータを表示できる。だが、それらのグラフを地図上に重ねて大州別、国別、地方別のデータを示すことはできない。そこで必要になるのが、 EuroOffice Map Chart Professional (EOMCP)というエクステンション(拡張機能)だ。多くのOpenOffice.orgエクステンションと違ってEOMCPは無料ではないが、その価格は妥当(9.90ユーロ=約12米ドル)で、無料体験版も利用できる。
EOMCPは正規のOpenOffice.orgエクステンションなので、インストールは簡単だ。OpenOffice.orgで「ツール」→「拡張機能マネージャ」を選択して「追加」ボタンを押し、ダウンロードしておいたEuroOffice_Map_Chart_Professional.oxtを選択して、「開く」ボタンを押すだけでよい。エクステンションのインストールが済んでからOpenOffice.orgを再起動すれば、EOMCPが使えるようになる。
高度な図表が作れるEOMCPだが、基本的な機能の使い方は難しくない。ここでは、ヨーロッパの国々の人口密度を示す地図グラフを作成してみよう。まず、Calcのシートに次の列(カラム)を作成する。国の名前を記した「Country」と、各国の人口密度の値を記した「Population」の2つだ。続いて、A1セルを選択した状態で「挿入」→「EuroOffice Map Chart」を選択してEuroOffice Map Chartウィザードを開く。あとは、このウィザードに従って地図グラフを作成していく。ウィザードの最初の画面では、グラフ化するデータの範囲を指定する。たいていはウィザードがデータ範囲を適切に自動選択してくれるが、うまくいかない場合は、データ範囲フィールドか、その隣にあるボタンを使って、自分で範囲を指定できる。
続いて「Data series in rows」オプションを選択し、(最初の行には各列のラベル名が記されているという前提で)「First row as label」チェックボタンをオンにする。グラフを別のシート上に作成する場合(大きな地図グラフを扱う場合はそのほうが便利)は、そのシート名を「Create chart on the worksheet」ドロップダウンリストから選択する。「Next」ボタンを押すと、ウィザードが「Configure the map」画面に変わる。ここではヨーロッパ各国のデータを表示するので、「Database to use」ドロップダウンリストから該当するデータベースを選択し、「Data range contains」ドロップダウンリストから「Countries」を選択する。「Display them over」オプションが「a continent」および「Europe」になっていることを確認したうえで、「Next」ボタンを押す。
次の画面では、地図グラフに凡例を付けるために「Legend」チェックボックスをオンにし、「Title」フィールドにタイトルを入力する。「Color scheme」ドロップダウンリストからグラフのカラースキーマを選択し、「Create」ボタンを押せばグラフが作成される。とりあえず、これで最初の地図グラフは完成だ。
EOMCPには、より高度な地図グラフの作成に使える便利な機能がほかにもいくつかある。たとえば、いわゆるサブグラフ(subchart)を指定して、もっと複雑なデータ範囲(2列以上のデータを含むなど)をグラフ化することができる。たとえば、国別の人口とWebブラウザのシェアを示す次のようなデータ(数値は架空のもの)が考えられる。
国 | 人口 | Internet Explorer | Mozilla Firefox | Opera |
---|---|---|---|---|
ドイツ | 83251851 | 70 | 27 | 3 |
フランス | 59765983 | 85 | 11 | 4 |
このデータをEOMCPでグラフ化するには、先ほどのウィザードでサブグラフの種類を指定する必要がある。種類は、円グラフ、棒グラフ、主題図から選べる。たとえば円グラフを選ぶと、国別のWebブラウザのシェアが小さな円グラフで地図上に表示される。
円グラフと棒グラフについてはこれ以上の説明はいらないだろうから、主題図(thematic chart)についてもう少し説明しておこう。この種類のグラフでは、図形記号を使ってデータを示すことができる。たとえば、人口密度と共に1人当たりの国民所得をグラフ化する場合には、紙幣のSVG画像データが主題図のサブグラフで利用できる。そうすると、各国の1人当たり国民所得のデータ値が紙幣マークの大きさとして地図上に表示されるわけだ。
EOMCPでは、大州別の地図だけでなく、国やその地方別の地図も扱える。たとえば、ドイツの大都市のデータを人口と共にグラフ化する場合は、「The data range contains」ドロップダウンリストから「Cities」を選択し、「Draw them over」セクションのオプションを「a country」および「Germany」に設定する。さらに、EOMCPは「統計用途で行政区分を参照する」ための規格であるNUTS(Nomenclature of Territorial Units for Statistics)をサポートしている。そのため、ドイツの州別データをグラフ化したければ、「The data range contains」ドロップダウンリストから「NUTS 1」レベルを選択すればよい。NUTSによる区分はヨーロッパの国々でしか使えないが、EOMCPには米国の州のデータベースも用意されている。
EOMCPに付属するデータベースは、世界各国、米国の州、ヨーロッパ、ハンガリー詳細図の4つである。これで足りなければ、EuroOffice Map Toolを使って独自の地図を作って追加することにより、地図のデータベースを拡充することができる。このツールは、上級ユーザや開発者向けに作られており、SVGおよびShapefile形式の地図が扱える。
さらに、EOMCPの最新版ではSun Report Builderエクステンションとの連携が可能になっている。つまり、OpenOffice.org Baseのデータを利用した地図グラフ付きのレポートを作成できるわけだ。EuroOfficeのWebサイトには、Sun Report BuilderでEOMCPを使う方法が詳しく説明されている。
EOMCPはオープンソースでもフリーでもないので、根っからのFOSS信者には受け入れられないかもしれない。しかし、地理データをグラフ化できる強力かつ柔軟なツールを求めているユーザにとっては、非常に魅力的なエクステンションといえるだろう。
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Dmitri Popovはロシア、英国、米国、ドイツ、デンマークの各コンピュータ誌に寄稿しているフリーランスのライター。