フリーソフトウェアのスーパー・ポータル・サイト、openDesktop.org
フリーオープンソースソフトウェア(FOSS)の最新版がほしいとき、まず思い浮かべるのはfreshmeat、Softpedia、GnomeFilesなどのサイトだろう。だが、FOSSコミュニティーは細分化しており、新版を紹介するサイトは乱立気味で、それらすべてをウォッチし続けるのは難しい。しかし、そうした専門サイトのためのポータル・サイトがある。2007年に誕生したopenDesktop.orgだ。「未来のデスクトップを作ろう」を掲げるこのサイトでは、デスクトップやディストリビューションの種類に関わりなく、新しいソフトウェアの概要を一覧することができる。
openDesktop.orgを維持管理しているのはFrank Karlitschek。ドイツのシュトゥットガルトに住む35歳だ。昔からGNU/Linuxを利用しており、KDEのアイコンと組織運営を支援している。
Karlitschekが初めてソフトウェア・サイトを開設したは2001年のことだ。「KDEのテーマとコミュニティーのための真のウェブ・サイトがなく、不満に思うようになっていた。Themes.org(現在はfreshmeatの一部)というサイトがあったが、使いにくいうえにオフラインのことが多かった」
そこで、KarlitschekはKDE-Look.orgというサイトを立ち上げた。「このサイトは大成功で、数日後には専用のサーバーに移さなければならないほどだった」。その2年後「このKDEアプリケーション向けアプリケーション・ディレクトリーは閉鎖されることになった。そこで、KDEアプリケーションのための新しいWebサイトを作ることにした」。KDE-Apps.orgだ。
こうしたサイトの成功を見たGNOMEコミュニティーは、GNOME向けのサイトを作るようKarlitschekに要請した。Karlitschekはこれを受け、「数週間後GNOME-Look.orgを立ち上げた」
それからというもの、同様の要請が引きも切らず、KarlitschekはCLI-Apps.org、Android-Community.org、Compiz-Themes.org、Xfce-Look.org、Debian-Art.org、InkscapeStuff.orgなど、数年間にわたって「さまざまなプロジェクトのための類似Webサイトを20以上も」作った。それらを合わせると、FOSSの主要領域の動きを総覧できるほどだ。
こうしたサイトはいずれも同じ外観と構成を持ち、同じインフラストラクチャーとユーザー・データベースを使い、広告とスポンサーで維持されていた。
しかし、サイトが増えるにつれて、Karlitschekは物足りなさを感じるようになった。「フリーソフトウェアの世界がデスクトップの主流になるにはもっと密接に連携する必要がある。KDEとGNOMEはとりわけその必要があると思った。そして、2007年に、必要なのはユーザー・アプリケーション、テーマ、開発者が一堂に会せるWebサイトだという結論に達した。これがopenDesktop.orgの始まりだ。フリーソフトウェアの人々のための大きなコミュニティー・サイトを作ろうと考えたのだ」
openDesktop.orgの概要
openDesktop.orgはいわばスーパー・ポータル、つまりKarlitschekが数年にわたって作り続けてきたすべてのポータルのポータルと呼ぶことができよう。メイン・ページを開くと、各サイトにあるアプリケーションと画像の概要が一覧され、マルチメディアや通信などのカテゴリーで絞り込んだり、サイト横断的に検索したりすることができる。最初に開くタブでは公開時期の新しいものから表示されるが、タブを切り替えれば、アルファベット順、評価順、ダウンロード回数順で表示することもできる。
ソフトウェアの多くはソースコードでの提供だが、パッケージも提供するものが一部ある。その多くは.deb形式だ。
フリーソフトウェア・コミュニティーの連携という目標に沿って、登録した利用者がグループを作ったりメール・フォーラムに参加したりブログを書いたりすることもできる。最近では、FOSSで働くための仕事掲示板が追加されている。
openDesktop.orgは、公式には、デスクトップやディストリビューションに関して厳密な中立を維持しており、Karlitschekは「すべてのフリーソフトウェア・プロジェクトのための場だ」と強調している。しかし、実際には、KDEアプリケーションに関する活動が多いようだ。おそらく、Karlitschekが最もよく知っているFOSSコミュニティーがKDEだからだろう。
そうした偏りはあるものの、openDesktop.orgの必要性に疑いの余地はない。Karlitschekによると、日々100件の新規アップロードと20万件のダウンロードがあるという。これは月当たり8000万ページ・ビューを超えるということだ。openDesktop.orgは、押しも押されもせぬ人気サイトなのである。
今後
このように成功しているにも関わらず、Karlitschekはさらなる改善の道を探っている。「その一つはWeb 2.0型Webサイトが持つコミュニティー機能とデスクトップ・アプリケーションの統合だ」。今年、KDEのカンファレンスであるAkademyの基調講演でこれを取り上げ、実現のための仕様を公表した。
「考えていることはほかにもある。しかし、私としては、利用者の改善希望を聞きたい。詰まるところ、このサイトは自分のためではなく、コミュニティーのためにあるのだ。だから、要望を忌憚なく言ってほしい」
「私はインフラストラクチャーを提供しているだけだ。才能ある何千という開発者やアーティストがいなければ、openDesktop.orgというWebサイトは退屈なものになってしまうだろう」。そう、彼らがいるからこそ、openDesktop.orgは最新のFOSSがほしい人のための主要な情報源になろうとしているのだ。
Bruce Byfield コンピューター・ジャーナリスト。Linux.comに多く執筆している。