Minisys Linux:強化されたPuppy Linuxディストリビューション

minisys_thm.png

 Puppy Linuxではディストリビューションを簡単にリマスタリングできるため、おそらくそれがpupletと呼ばれるPuppy Linuxの派生版が多く存在する理由だろう。pupletの中には、同梱されるソフトウェアやウィンドウマネージャがオリジナル版と異なるだけというものもあれば、特定のハードウェアプラットフォームをターゲットとしたものもある(Pupeeeなど)。本記事では興味深いpupletの1つとして、Puppy LinuxとSlackware 12をベースとしたモジュール型のLinuxディストリビューションであるMinisys Linux(Muppy)を紹介する。

 96MB版のみが提供されるPuppy Linuxとは異なり、Minisys LinuxはLive、Mini、Server、Embryoという4つのバージョンで提供されている。Live版の必要メモリ容量は690MBで、考えられるすべてのタスク向けにありとあらゆるアプリケーションがぎっしりつまっている。ブラウザスイートの「Seamonkey」、電子メールクライアントの「Sylpheed」、インターネット用のIMアプリケーション「Pidgin」や、オフィス系としては「OpenOffice.org」「AbiWord」「Gnumeric」「Adobe Acrobat Reader」が含まれている。マルチメディア系としては、メディアプレーヤー「MPlayer」、オーディオプレーヤー「XMMS」、DVDプレーヤー「Goggles」がある。グラフィックスの表示や編集用には「GIMP」「MtPaint」「Gqview」があり、Windowsベースのアプリケーションを稼働させるための「Wine」もある。さらには、ゲームもいくつか同梱されている。

 これとは対照的にMini版は、必須のツールやアプリケーションのみを含み、必要メモリ容量はわずか128MBである。しかしMinisys Linuxのウェブサイトには、ベースシステムに簡単に追加することができるエクステンションである.sfsパッケージが提供されており、これによってMini版を拡張することができる。同サイトでは、Office、Games、Addons、Developmentの各種パッケージや、KDEやEnlightenmentなど他のデスクトップ環境を追加するエクステンションが提供されている。

minisys1_thumb.png
Minisys Linux

 Server版とEmbryo版は、Muppy Linuxの特殊バージョンだ。Server版はその名が示すとおり、サーバーシステムとして設計されており、Embryo版は、メモリを最適化し、カスタマイズした特殊なソリューションを構築するための、骨組みとなるシステムである。

 Live版またはMini版を起動すると、そのデスクトップがPuppy Linuxと比べて非常に豪華になっていることにすぐに気がつくだろう。デフォルトでシステムモニター「Conky」がインストールされており、また、「Icedock」アプレットと同様にシステムの統計情報の概要が表示されるが、その表示形態はテキストではなくグラフィックスだ。デスクトップ上には、Puppy Linuxにはない便利なツールもいくつか見られる。たとえば「MuppyBackup」は、システムを迅速にバックアップおよび復元するアプリケーションであり、「Autostart」は、特定のアプリケーションをブート時に起動させるユーティリティである。アプリケーションを[Autostart]アイコン上にドラッグするだけで、起動スクリプトが自動的に生成される。

 Minisys Linuxには2つのファイルマネージャが同梱されている。軽量な「PCman」とツインパネルからなる「Xfe」だ。さらに、簡素化されたツインパネルのカスタムファイルマネージャ「Muppy-Filer」が含まれている。Muppy-Filerは余計であるように思われるかもしれないが、軽量なファイル管理タスク向けには非常に機能的で便利なツールである。Puppy Linuxのデフォルトのカレンダーツールである「Osmo」は、Minisys Linuxでは「lcal」に置き換えられており、[Internet]アイコンをクリックすると起動するブラウザもSeamonkeyではなく「Opera」になっている。

 Minisysの[Start]メニューにはランチャーパネルがあり、インストールされているすべてのアプリケーションがセクション毎にグループ分けされていて、必要なアプリケーションを簡単に見つけて起動できるようになっている。Minisys Linuxでは、Puppy Linuxと同様にPETパッケージマネージャを用いて.petパッケージをインストールすることもできるが、パッケージ管理ツール「Gslapt」を用いてSlackwareリポジトリからソフトウェアをインストールすることも可能である。

 Minisys Linuxは、Puppy Linuxの優れた構成設定ウィザードを継承しており、これによってキーボード配置、音声、ビデオ、有線または無線のネットワークインターフェース、プリンタ、ファイアウォールなどの基本的な設定を行う。同梱されている「Puppy Universal Installer」により、外付けハードディスクやUSBスティックを含む多種多様なデバイスに、さまざまな方法でMinisys Linuxをインストールすることができる。

 Puppy Linuxでは、すべてのデータやシステム設定が、独立した.2sfファイルに保存される。最初のシャットダウン時にこのファイルの作成を促すメッセージが表示される。.2sfファイルを作成することにより、すべての設定やデータが保存されるだけでなく、.sfsパッケージを用いたシステムの拡張が可能となる。Minisys Linuxにおけるエクステンションのインストールは非常に容易である。必要な.sfsエクステンションをダウンロードし、/mnt/homeディレクトリに移動して、[Start]→[System]→[Boot Manager]を選択し、[Choose which extra SFS files to load at bootup(起動時にロードする他のSFSファイルを選択する)]ボタンをクリックする。そこでダウンロードした.sfsファイルを指定し、[Ignore above user selection(上記のユーザー設定を無視する)]チェックボックスが選択されていないことを確認する。最後にシステムをリブートすれば、エクステンションが適用される。

 Minisys Linuxの現行版は、Puppy 3とカーネル2.6.21.7をベースとするが、リードデベロッパーであるMark Ulrich氏は既に、最新のPuppy Linux 4.1をベースとするMuppyの新しいバージョンに取り組んでいるという。

 Minisys Linuxが目指す方向性は、Puppy Linuxとは異なるものの、元の軌道から大きく逸脱することのない賢明な方法でそれを実現している。Minisys Linuxは、そのユーザーフレンドリな構成設定およびインストールウィザードやPETパッケージマネージャなど、Puppy Linuxの最大の長所はそのまま受け継ぎつつ、独自の気のきいたアプリケーションや機能を加えている。Minisys Linux最大の特長といえば、.sfsパッケージによってシステムをカスタマイズできる点だろう。これによりシステムを短時間で自分の用途に適したものに改造することができる。

Dmitri Popov フリーライター。ロシア、英国、米国、ドイツ、デンマークのコンピューター雑誌で活躍している。

Linux.com 原文(2008年10月21日)