GNOME Debian Package Finder:完成数歩手前のデスクトップ操作型パッケージ検索ツール

 Debianのパッケージ管理をコマンドラインから行っているユーザであれば、apt-cacheapt-file、dpkgなど、各種のプログラム検索ユーティリティの存在を知っていることだろう。それと同時に、Synapticなどのグラフィカルインタフェースを利用した場合は、名称、バージョン、依存性といった、非常に限定された情報検索しかできない点に不満を覚えているはずだ。そうしたギャップを埋める目的で現在開発が進められているのが GNOME Debian Package Finder (gpfind)というツールであり、これはコマンドライン系ユーティリティの有す優れた検索能力をデスクトップにて再現することを目指したものだが、残念ながらバージョン0.1.6という数字からも分かるように、今すぐコマンドライン操作がすべて不要になるという完成度には至っていない。

 まず最初に遭遇する未完成部分は、インストール段階の処理である。つまりgpfindの場合、Debianのパッケージシステムを採用している二大ディストリビューションであるDebianおよびUbuntuにおいてすら、依存性関連の問題がインストール時に自動で解決されるようになっていないのだ。そのためdpkg -iによるgpfindのインストールを実施するには、事前にlibconfig-file-perl、libapt-pkg-perl、liblist-moreutils-perl、perl-baseのインストールが必要なのである。そしてgpfindのインストール完了後も、「apt-file update」コマンドを実行しておかないと、パッケージ内部のファイル検索の結果としてはブランク画面しか表示されないのだ。

 こうしたインストール段階の障害を克服できたら、メインメニューのAccessories→GNOME Package Findを選択することでgpfindが起動できるはずである。なおgpfindは、apt-getやdpkgの実行前に関連情報を収集することを目的としたツールであり、システムの構成に変更を加えるのではなく、現在の構成情報を確認するだけの処理しか行わないため、その使用時にroot権限でログインする必要はない。

 gpfindのインターフェイスの完成度は、よく言っても“現在開発中”というレベルである。このウィンドウは一番上側に検索用語の入力フィールドが配置されているのだが、デフォルトでは指定した検索用語に対する完全一致のみが実施可能となっているのだ。ただしその他の検索オプションとしては、インストール済みパッケージのみ、パッケージ名、パッケージ中のファイル群という検索対象を組み合わせることが可能で、これらは完全一致モード以外で実行させることもできる。ところがSynapticですら実行可能な、メンテナ、バージョン、依存性関係を直接指定した検索機能は実装されていないのである。

 ここでの検索結果は、検索用語の入力フィールドの下側に配置されたフィールドにて表示されるようになっている。そして付属するHTML形式のヘルプによると、検索結果フィールの左端には「ii」(selected for installation and installed)や「rc」(removed along with its configuration file)などの略号が表示されるはずなのだが、私が試したDebianシステムではこれらの表示が出されないのである。

 この2つ目のフィールドにある検索結果をクリックすると、対応する詳細情報が3つ目のフィールドに表示されるようになっている。ここで得られる説明文の有用性は個々のメンテナの技量次第というのが実状だが、各パッケージの構成ファイル群やその依存関係については右クリックにより確認することができる。

 確かにこうして得られる検索結果は有用な情報なのではあるが、apt-cacheで利用可能な一部の機能は実装されておらず、逆依存関係(選択したパッケージに依存しているパッケージ群)や異なるバージョン番号の検索、あるいはパッケージキャッシュそのものの情報表示はできない。

 また現行のgpfindの場合、ウィンドウデザインの悪さがその操作性を一段と引き下げる状況が発生しかねない。例えばGNOMEデスクトップにてデフォルトのフォントサイズを大きくすると、gpfindウィンドウ上では検索結果テーブルを除く表示テキストの大半が隠されてしまい、操作上のヒントを記したテキストなども見えなくなってしまうのである。

 それよりも深刻なのは、検索結果および情報表示用のフィールドがいずれも3行分の表示スペースに固定されていて、これを拡張できない点だ。そのためユーザはスクロール操作を何度も繰り返す必要に迫られるのだが、肝心のスクロールバーの操作性が悪く、こうした不具合を回避しようと思えば、各フィールドのスクロール操作をするためのホットキー割り当てを確認しなくてはならない。

 おそらくgpfindの開発陣はインタフェースまわりの改善よりも機能的な完成を優先するであろうが、現行のgpfindを使用する上で最大の問題となっているのはインタフェース的な操作性の悪さだとしていいだろう。

 現状ではっきり言えるのは、gpfindは将来性を期待させるユーティリティということだけである。パッケージ管理をコマンドラインで行ってきたユーザが現行のgpfindに乗り換えることはないであろうし、ソフトウェアのインストールをデスクトップ操作で行ってきたユーザも、パッケージ情報の確認程度なら従来どおりにDebianの「package」ページを使用し続けるだろうからだ。

Bruce Byfieldは、コンピュータジャーナリストとして活躍しており、Linux.comに定期的に寄稿している。

Linux.com 原文(2008年9月3日)