OpenOffice.orgからMediaWikiへのエクスポートを簡単化するSun Wiki Publisher機能拡張

 wikiはコラボレーション形態にてテキスト系ドキュメントを構築する際の優れたツールとして機能するが、wiki用のマークアップ言語どうしは互換性に乏しく、扱いやすいWYSIWYG形式のエディタが利用可能なwikiも少数派でしかないのが現状だ。実際wikiのマークアップ作業そのものに習熟した人間であっても、wikiのコンテンツ作成自体はワードプロセッサで行う方が便利だと感じているであろうし、特に既存のテキスト系ドキュメントからの移植や新規の表組みなどを行う場合は、後者を介した作業が不可避となる。本稿で紹介する Sun Wiki Publisher はこうしたプロセスを簡単化する目的で作成されたもので、これを利用するとOpenOffice.org 2.4以降におけるWriterドキュメントからMediaWiki形式のwikiへのエクスポート作業が、Webブラウザを介すことなく直接実行可能となるのだ。

 OpenOffice.orgからMediaWikiへのデータ出力自体は別段に目新しい機能でもないだろう。特にバージョン2.3以降ではXSLTエクスポートフィルタが標準で組み込まれ、WriterドキュメントからMediaWikiフォーマットへの出力がそのまま行えるようになっている。しかしながらこの方式のエクスポート処理では、エクスポート後のドキュメントを改めてテキストエディタで開き直した上で、Webブラウザ経由でwikiに必要なデータをコピー&ぺーストしなければならない。本稿で紹介するWiki Publisher機能拡張は、こうしたプロセスをクリック数回で済ませるために開発されたものであり、また同時にキャラクタエンコードに付随する問題を回避する上でも役立つようになっている。ただしこの機能拡張を使用するには、Java 1.4以降のインストールが必要である。

その他のwikiへの対応法
 本文中で触れたようにWiki Publisher機能拡張でサポートされているのはMediaWikiだけだが、DokuWiki、TikiWiki、MoinMoinなど他のマークアップ言語で記述されているwikiも多く存在している。こうしたMediaWiki以外のwikiへのエクスポートを行う場合は、Wiki Publisher機能拡張ではなく HTML::WikiConverter というサイトを利用すればいいだろう。ここでの操作では、まず最初にエクスポート対象のWriterドキュメントを開いておく。次にメニューにてFile → Exportを選択し、ファイルフォーマットをXHTMLに変更してからドキュメントのエクスポートを実施する。後はこうして出力された.xhtmlファイルをテキストエディタで開き、その中のXHTMLコードをHTML::WikiConverterにコピー&ペーストして、残りの操作は同サイトの指示に従えばいい。

 Wiki Publisher機能拡張を使用するには、まず最初にエクスポート対象となるMediaWiki形式のwikiを特定しておかなくてはならない(現状で他のwikiはサポートされていない)。なおwikiの多くは匿名ユーザによる編集を許可していないが、そうしたwikiを扱う際には専用のアカウントが必要となる場合もある。次に機能拡張のダウンロードとインストールを行い、Writerにてテキストドキュメントを開く。そしてメニューからFile → Send → To MediaWikiを選択してAddボタンをクリックし、エクスポート対象となるwiki記事のURLを入力ないしペーストする。また必要な場合はログイン情報も入力しておく。これらの情報の指定後にOKボタンをクリックするとドロップダウンリストにwikiサーバが一覧されるので、その中から該当するwikiサーバを選択する。Titleフィールドについては、記事のURLにある通りのタイトルを正確に入力しておく必要があり、例えばhttp://en.wikipedia.org/wiki/OpenOffice.orgというURLであればTitleフィールドには“OpenOffice.org”と入力すればいい。その他、Summaryフィールドにも必要な情報を入力しておく(これはwikiページの履歴に表示される)。なお入力時のタイプミスやフォーマットだけを修正してコンテンツ本体は変更しないという場合はThis is a minor edit(これは些細な変更)チェックボックスを選択しておくと、wikiのエディタはレビューをする必要がないと判断してくれるはずだ。またShow in Web browser(Webブラウザで表示)を選択しておくと、ここでの作業の終了後に各自のデフォルトWebブラウザによるエクスポート結果の内容確認が実行されるようになる。以上、必要な操作がすべて終了したらSendをクリックする。

 なお特定wikiの変更作業を頻繁に実行するユーザの場合は、Tools → Options → SecurityにあるPersistently save passwords protected by a master password(マスターパスワードで保護されたパスワードを永続的に保持)を有効化しておくことで、自分のパスワードを記憶させておくことができる。

各種の装飾情報についての互換性

 下記に一覧したようなWriterで利用可能なテキスト/段落装飾機能の多くは、MediaWikiへのエクスポート時にも保持されるようになっている。

  • 段落末尾の改行およびユーザ指定の改行
  • 段落配置の指定
  • 斜体、太字、上付き/下付き文字
  • 見出し
  • 順序付き/箇条書きリスト
  • 表組み
  • ハイパーリンク

 ただし、下線、打ち消し線、フォントカラー、ハイライトなどのテキスト装飾は維持されないし、画像などは手作業で別途アップロードしなければならない。

 Sun Wiki Publisherに習熟する過程では、実際のコンテンツとは別にテスト用の記事を試験的にエクスポートしたいという場合も出てくるだろう。通常そうした操作はSandboxというタイトルの記事(サンドボックス)にて行えばいいはずなので、そうしたものが各自のwikiにて作成されているかを確認し、Sandboxが存在しない場合はMediaWikiにてユーザ個人の名前空間を作成する必要がある。あるいは自分の名前空間に個人用のサンドボックスを作成しておいてもいいだろう。

 wikiページからWriterへのインポート機能については、Sun Wiki Publisherの将来バージョンにてサポートされるかもしれない。ただしこれが実現されるまでの間、こうした操作については、Webブラウザ上にてwikiの既存テキストデータの必要部を選択し、クリップボード経由でWriter側にコピー&ペーストするしかないはずだ。

 Sun Wiki Publisherは、操作性に優れたOpenOffice.orgにコラボレーションツールとしてのMediaWikiを組み合わせるための存在と位置付けられるだろう。ただしその将来バージョンについては、エクスポート時における表の背景色の保持、サーバのURL表示を行うダイアログの拡大、アイコン式ツールバーの装備を要望したいところである。

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Andrew Ziemはバージョン1.0に到達する以前からのOpenOffice.org使用者で、1人のユーザ、システム管理者、トレーナ、QAチームメンバ、インポートフィルタ開発者としての立場から同スイートに関与しており、1997年からはオープンソースソフトウェアをテーマとした記事を執筆している。

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