デザインワークに適したフォントマネージャを見極める

v 多数のフォントライブラリを使用するデザイナの場合、作業に応じて必要とするフォントに素早くアクセスできるようプロジェクト別にカテゴリ分けしつつ、不要なフォントは随時無効化してシステムメモリの浪費を防止するという使い分けができれば理想的であろう。GNU/Linuxデスクトップにてこれらのニーズをすべて満たすフォントマネージャはわずか2年前には皆無であったのだが、将来的な可能性をも含めるならば、今では実に4種類ものフォントマネージャがその候補として上るようになっているのである。

Fonty Python

 私が Fonty Python レビュー記事を最初に執筆したのは1年前の話であった。それ以降の変化として、Type 1(PostScript)フォントのファイルフォーマットが追加サポートされはしたものの、その他には特に目に付く拡張は施されていないようである。

 Fonty Pythonの場合、python2.4-imagingおよびpython-wxgtk2.6に対する特異な依存関係を有しているが、メジャーなディストリビューションであればこれらは問題なく手に入るはずである。これらの依存関係がクリアできた後のインストール手順では、ダウンロードした最新バージョンのtarボールを展開し、root権限でログインし直してから、ファイルの展開先ディレクトリにて「python setup.py install」というコマンドを実行する。その後数秒待つとfontypythonというコマンドによるFonty Pythonの起動が可能となっているはずである。

 Fonty Pythonにはデザインワークで必要とされる機能はすべて装備されているものの、インタフェース構成については風変わりな点が散見される。その手始めはフォントのコレクションを“Pog”という単位で管理することであり、作成者であるDonn Ingle氏によるとこれはMonty Pythonに敬意を表した命名だそうだが、知らない人間にとっては意味をなさないのではなかろうか。またフォントサンプルも1行分のテキストしか表示されない。

 より重大な問題は、Pogの設定手順において3ペイン構成のインタフェースを駆けずり回らされることになる仕様であろう。このプロセスでは最初に右側のペインにて新規のPogを作成した後、左側のペインに移動して必要なフォントファイルを特定し、次に画面右上に移動し直してインストール先のPogを選択して、中央のペインにてこのPogに登録するフォント群を指定したら、最後に再び右下のペインに移動してPogのインストールを行うのである。

 この手間のかかる作業手順も慣れてしまえばそれ程苦にならないのかもしれないが、それでも機能性を重視した結果としてインタフェースにしわ寄せされた些細な不備と見なすには無理があるだろう。いずれにせよこのインタフェースについての改善を提案したとしても、同プロジェクトにおける過去の進捗ペースからして数カ月は待たされるはずだ。

fontmanager1.png
Fonty Python

FontMatrix

 以前に私はPierre Marchand氏の作成した FontMatrix についてのレビュー記事を執筆した際に、このファイルマネージャはバージョン0.1段階ではあるが高い将来性を感じさせられると評しておいた。そして現行のバージョン0.4.2は、この予測の正しさが立証されたと言えるだけの出来に仕上がっている。もっともこうした予測を立てていたのは私だけではないはずで、その証拠にインターネットを検索すればグラフィックス系プログラム関連のメーリングリストにてFontMatrixは多数取り上げられているし、今ではDebian、Fedora、Mandriva、openSUSE、Ubuntuなどの大手ディストリビューションにて同梱されるようにもなっている。

 FontMatrixのインタフェース構成は一見すると複雑に感じるかもしれないが、Fonty Pythonとは異なり、基本的にここでの操作手順は左から右に順序よく進行するよう配慮されている。左側のペインはインストール済みフォントのリストであり、これは書体のファミリ別に一覧されるようになっているが、文字列指定(フォントの名称や太さなど)ないし個々の書体に割り当てられたタグによるフィルタリングを施すこともできる。同じくフォントの簡易サンプルはリストの下段に一覧される。右上には選択したフォントの説明およびそのライセンスが表示され、右下では選択したフォントへのタグ付けが行えるので、この機能を利用すると、例えば使用するプロジェクト名で分類させるといった使い分けができる。またフォントの有効化/無効化の切り替えに必要な操作は、フォントリストで該当する項目を選択してから編集ウィンドウに移動するだけである。

 その他の有用な機能としては、右上のペインにおける選択フォント中で使用可能なアルファベットおよびグリフ(glyph)の一覧ビューおよび、ユーザ独自の表示サンプルを作成する機能を挙げることができる。またフォントブック機能を使うと、カスタムのサンプルファイルを作成することも可能だ。

 このようにFontMatrixの完成度は、ユーザに機能追加の必要性をほとんど感じさせないレベルに到達している。実際、現在装備されていない機能として私が思いつくのはシステムフォントの操作くらいだが、これは開発者であるMarchand氏が実装を意図的に避けている機能であり、その背景として個々のデザインプロジェクトごとにユーザが使い分けるフォントとは異なりシステムフォントとは「安定していてその挙動が予測できて然るべきもの」という理由があるためだそうだ。

fontmanager2.png
FontMatrix

Font Manager

 Karl Pickett氏の手による Font Manager という名前のPythonスクリプトも、新たに登場したフォントマネージャの1つである。インストールする手順としては、配布用サイトにて公開されている最新バージョンのコードをコピーし、それを例えばfontmanager.pyといった名前のファイルにペーストしておけばいい。既にPythonがインストール済みの環境であれば、コマンドラインにて「python ./fontmanager.py」と入力すればFont Managerが起動するはずである。

 Font Managerのウィンドウは3つの列で構成されており、そのうち左端がコレクションとして分類されたフォントのリスト、中央が選択中のコレクションに属すフォントの一覧、右端がサンプルテキストの表示ペインである。このビューでデフォルト表示されるフォントサンプルはアルファベットの一覧および「The Hungry Penguin Ate a Big Fish」という文字列とされているが、Viewメニューにてサンプル用テキストの変更およびフォントファイル情報の確認をすることもできる。

 1つの書体ファミリに属すフォントを個別に扱う仕様になっている点は頂けないが、Font Managerの将来性には大いに期待させられる点が存在する。ただし現行バージョンでは、正常に動作しない機能が一部残されたままになっている。例えば新規カテゴリを追加しても、それを有効化することができないのだ。また既存カテゴリ(All Fonts、System、User)の間でフォントを移動させることはできるものの、特定のフォントを無効化したり新規フォントを追加させることはできない。とは言うものの開発が完了した暁には、Font Managerの簡素なインタフェースもそれなりに使い勝手のあるものになってくれるだろう。

KDE Font Installer

 KDE 4.xに関しては多くの変更が施されているが、フォントインストーラの改善もそうした1つである。実際Favorites → System Settingsからアクセスする現行のFont Installerは、旧バージョンから大幅な進歩を果たしている。確かにFont Installer本来の役割であるシステムフォントおよびユーザフォントのインストールという機能自体に変化はないのだが、新たなバージョン4.xではより秩序だった方式にてフォント管理ができるようになっているのだ。従来は単独で扱われていたフォント群は書体ファミリ別に整理されるようになっており、またフォントサンプルについてもデフォルトで表示される簡易表示だけでなく、リスト上の項目を右クリックすることで、短めのサンプル文字列を各種の異なるサイズで表示させたものや、Unicodeで定義されているグリフの一覧をFont Viewerにて表示させることができる。

 一般のユーザにとっては、現行のKDE 4 Font Installerに装備されている機能だけで特に不満を感じることはないのかもしれない。しかしながらデザイナであれば、書体ファミリ以外の単位ではフォントを整理できなかったり、フォントを無効化してメモリを節約させるにはフォントリストから削除する必要があるという制限に歯がゆさを感じることもあるだろう。もっともKDE 4は新規にリリースされたばかりの段階であり、先に挙げた機能的な不備もやがては改善されていくのかもしれない。

自分が使用すべきフォントマネージャはどれか?

 Font Managerについては、その将来性に期待することはできるものの、現状では実用に供するレベルには達していないとしていいだろう。残り3つのうちでKDE 4 Font Installerは、インストールするシステムフォントの数やプロジェクトごとに使い分けるフォントの種類が限られているユーザに適しているはずだ。

 そうではなく、個々の用途別に読み込むフォントを頻繁に切り替えるというタイプのユーザであれば、現状で取りうる選択肢はFonty PythonかFontMatrixのいずれかになるだろう。どちらのフォントマネージャであっても通常のデザインワークで求められる機能は一通り満たされるはずだが、それでも敢えてどちらか一方を選ぶとすればFontMatrixがお勧めだ。FontMatrixではブログその他のWebコンテンツを扱う人間にとってお馴染みのタグという概念がサポートされているため、非常に柔軟なフォント管理が行えるからである。その他にもワークフローがスムースである点やデザインワークに適したサンプル表示機能も、こうした用途においては重要な要素と見なせるだろう。

Bruce Byfieldは、コンピュータジャーナリストとして活躍しており、Linux.comに定期的に寄稿している。

Linux.com 原文