Microsoft、EU命令に従いWindows互換性情報をSambaチームに開示
欧州連合(EU)の欧州委員会は2004年3月24日、Microsoftが欧州独占禁止法に違反していると認定し、是正するよう同社に命令した。これにより、MicrosoftはWindows技術情報の開示を義務づけられた。
EUはその2年後の2006年7月、MicrosoftがWindowsプロトコルに関するドキュメントを競合他社に開示していないとして、2億8,050万ユーロ(当時の為替レート換算で3億3,860万ドル)の制裁金を同社に科した。
Microsoftは当初、こうした是正命令や制裁金などを不服として欧州司法裁判所に訴訟を提起した。だが、同社は今年10月にそれらの訴訟を取り下げると発表。是正命令で義務づけられた技術情報の開示に応じることなどを明らかにした( 関連記事 )。
これを受け、PFIFはSamba開発チームに代わってMicrosoftと契約交渉を行い、両者は20日の契約締結に至ったのである。PFIFがSamba開発チームの代理を務めたのは、Sambaが企業体の管理下にないためだ。同契約の下、PFIFは1万ユーロをMicrosoftに支払い、その引き換えに、Sambaチームを含むオープンソース開発者がWindowsプロトコルに関するドキュメントにアクセスできるようにした。
このドキュメントにアクセスするには、開発者は機密保持契約に署名する必要がある。また、開発者がドキュメントを再配布することもできない。それさえ守れば、オープンソース・ソフトウェアにWindowsプロトコルを実装できるようになる。
今回の契約で、Microsoftはドキュメント対象のWindowsプロトコルと関連する特許も明確にしており、オープンソース開発者は特許侵害を回避しやすくなるとみられる。
Microsoftはこれまで、欧州委員会の是正命令に基づき、Microsoft Communications Protocol Program(MCPP)やWork Group Server Protocol Program(WSPP)などのプロトコル・ライセンス・プログラムを策定している。だが、これらの規定はオープンソース・ソフトウェア・ライセンスと互換性がない。
しかし、互換性がないことは今回の契約で問題視されていないようだ。
Sambaの開発者の1人、ジェレミー・アリソン(Jeremy Allison)氏は、「彼ら(Microsoft)は、Samba開発に必要なドキュメントをわれわれにすべて提供しようとしている。われわれはもう言い訳はできない。仮にSambaで不備が見つかっても、それは情報がないことが原因ではなく、われわれが未熟なだけだ」と述べている。
Sambaは、Windowsで使われるファイル/プリンタ共有ソフトのオープンソース版であり、LinuxやUNIXの標準コンポーネントとなっている。このため、これらのOSを搭載したシステムとWindowsクライアントの間でデータを共有でき、両者を共存させることができる。
Samba開発者にとって、Windowsとの互換性の確保は手間のかかる作業だった。というのも、ネットワーク・トラフィックを解析してWindowsの動作に関する情報を収集し、それに基づいてSambaを開発するというリバース・エンジニアリングを行わなければならなかったからだ。
「今回の契約により、オープンソース開発者はMicrosoftのプロトコル仕様にアクセスし、これらの仕様に関するドキュメントに基づいてソフトウェアを開発できるようになる」とAllison氏。今後は、Windows Vistaで使われるServer Message Block(SMB)2.0プロトコルを実装した次世代版Sambaの開発にも弾みがつきそうだ。
今回の契約は20日に締結されたが、ドキュメントの引き渡しに関する細部の詰めがまだ残っていると、Allison氏は語った。だが同氏は、技術仕様はごく近いうちに手に入るとみている。「クリスマス休暇には楽しい読み物が届くと思う」(同氏)
(Robert McMillan/IDG News Service サンフランシスコ支局)
米国Microsoft
http://www.microsoft.com/
PFIFとの契約内容
http://samba.org/samba/PFIF/PFIF_agreement.html
提供:Computerworld.jp