限界に近づくインターネット回線のキャパシティ、2010年にはパンク状態に

 独立系調査会社のNemertes Research Groupは11月19日、バックボーン・プロバイダーが新たな大規模投資を行わないかぎり、2010年にインターネット回線がパンクするとの調査結果を発表した。

 Nemertes Research Groupでは、バックボーン・プロバイダーが数十億ドル規模の投資を行い、インフラを強化しなければ、動画をはじめとする大量のWebコンテンツにより、2010年にはインターネットが使い物にならなくなると予想している。増設にかかる費用は全世界で最高1,370億ドルに上り、サービス・プロバイダーが現状で予定している投資額の2倍以上になる。北米だけでも、需要を満たすには今後3~5年でバックボーンに420~550億ドルの投資が必要だという。

 「今回の調査では、ネット上のアプリケーション革命のペースに初めてムーアの法則(もしくはそれに非常に近い法則)を適用した。この結果、コア・ファイバとスイッチング/ルーティング・リソースについては、増大していくユーザー・ニーズに対応していけるが、北米のインターネット・アクセス基盤については、現状のままでは今後3~5年以内にニーズを十分に満たせなくなるだろう」と同調査は報告している。

 米国でブロードバンド・ネットワークのアップグレードを推進しているInternet Innovation Alliance(IIA)の共同会長であるブルース・メールマン(Bruce Mehlman)氏によれば、この調査結果は同団体が以前より指摘してきた懸念を裏付けるものだという。

 IIAはAT&T、Level 3 Communications、Corning、Americans for Tax Reform、American Council of the Blindといったメンバーで構成される業界団体だ。彼らはかねてから、動画をはじめとするWebコンテンツの「エクサフラッド(エクサバイト単位のデータ洪水)」により、インターネット回線がパンクする可能性を警告してきた。

 Nemertesの調査結果はIIAの懸念を「第三者的立場から実証する信頼性の高いデータ」だと、Mehlman氏は評価する。キャパシティ不足が深刻化する理由は、ストリーミング/インタラクティブ・ビデオ、P2Pのファイル転送、そして楽曲ダウンロードといったWebアプリケーションへの需要が急増するためだ。

 米国の調査会社comScoreによると、米国のインターネット・ユーザーの4分の3近くが今年5月にビデオを平均158分視聴し、83億本以上のストリーミング・ビデオを再生したという。

 インターネット・ユーザーが今年新規に作成するデータ量は161エクサバイト(EB)に達する見込みだが、こうしたエクサフラッドはインターネット・ユーザーと企業にとってはむしろ好ましい進展だと、IIAは歓迎する。ちなみにEBは1,000の6乗バイト、約11億GBであり、1EBでDVDビデオ50万年分に相当する。

 通信キャリアと政策立案者はWebコンテンツの増大をしっかり認識してほしいと、Mehlman氏は付け加えた。「Webコンテンツが爆発的に増加した原因はビデオだ。エクサフラッドはまだ一般的によく理解されておらず、投資の意義についても十分定義されていない」(同氏)

 インターネット回線の増設に応えることはバックボーン・プロバイダーと国の政策立案者の責任だと、Mehlman氏は語る。同氏は米国商務省の技術政策担当次官補を務めていたこともある。

 Mehlman氏は、米国議員にも協力できる分野はあると強調する。例えば、政府から助成金を受け取っている建築業者に対して、家屋にブロードバンド回線を敷設するよう義務づけたらどうかと提案する。プロバイダーによる容量増設を促すため、税額控除を提供する方法もある。

 一般ユーザーは通信サービスに高い税金を払わされており、一部の通信サービスにおいては税率が平均13%にもなる。これはタバコやアルコールの税率に近いと、Mehlman氏は指摘する。米国で電話を保有する住民がほとんどいなかった、1898年のスペイン・アメリカ戦争(西米戦争)以来、一度も改定されてない税金さえあるそうだ。

 「通信サービスを贅沢品のように扱い懲罰的な税率を課すのは間違っている」と同氏は主張している。

(Grant Gross/IDG News Serviceワシントン支局)

Nemertes Research Group
http://www.nemertes.com/

提供:Computerworld.jp