サン、移動型データセンター「Project Blackbox」を本邦初公開
Project Blackboxは、データセンターそのものをモジュール化し省スペースで迅速に配備できるものとして、2006年10月にその構想が発表された。サーバ／ストレージ／ネットワーク機器など、データセンターを構成するうえで必要不可欠な機器を、ISOに準拠した標準的な輸送用コンテナ（20フィート：約 6.1メートル）にすべて統合することが可能だ。
コンテナの内部は中央の通路をはさみ、両側併せて15㎡のスペースに19インチ・ラックを4つずつ、計8ラックを用意しており、最大320のラック・ユニット数を誇る。ラックにはサン製のサーバ／ストレージのほか、他社製品も搭載でき、顧客の要望により搭載機器や構成を自由にカスタマイズできる。総重量は、8つのラックに機器をフルで搭載した場合で、約15トンとなる。
工期は、施設の設計などが含まれる通常のデータセンターを構築する場合と比較して、10分の1に短縮可能。また、ラックあたりの電力効率は25kWを実現。これは、通常のデータセンターにおけるラックあたりの電力効率（6kW）と比較して約4倍となる。
また、全体では1,250W平方フィートの給電能力となるが、この数値はProject Blackboxの高密度コンピューティングという特徴を示しているにすぎず、サンのシステムズ・ビジネス統括本部主幹部長、馬場寿氏は、「そこまでのキャパシティを持つプラットフォームとして提供するということを言っているのであり、単にエネルギーを大量消費するという意味ではない。エネルギー効率も十分追求している」と語っている。
実際、独自の冷却システムにより冷却コストを40％低減（通常のデータセンター比）しており、5年間で約1,459トンの二酸化炭素（CO2）削減につながるとする。冷却システムは、各ラックの間にファンと熱交換機をサンドイッチした構造を採用した、閉ループの水冷システムを採用している。また、サンはProject Blackboxのリサイクルも実施する計画である。
さらに、高い可搬性とさまざまな場所での安定稼働を実現するための工夫も随所に見られる。ラック下部には縦揺れを吸収するスプリングを装備。これにより、9Gの負荷まで耐えることが可能という。また、マイナス29度から54度までの温度帯域で稼働するほか、カリフォルニア大学で実施した耐久テストでは、マグニチュード6.7の地震にも耐えうる設計であることが実証されている。
合理的な投資を実践できる点もProject Blackboxのメリットだ。例えば、将来的に必要となる能力を想定して大規模な施設を構築し、段階的に機器を設置していくことは、機器が埋まるまでの空きスペースがある意味無駄になる。より小刻みに能力を拡張でき、配備後も移動が可能なProject Blackboxは、「リスクを抑えた合理的な投資」（馬場氏）とアピールする。
ただし、Project Blackboxは、あくまでもデータセンター機能を統合するための“箱”を提供するものである。Project Blackboxに含まれるコンテナ内の設備は、外部電源コネクタ用ソケットを備えた内部電源インフラ、熱交換器／ファンなどを含む冷却システム、8つの19インチ・ラック、内部照明／エア・フィルター／除湿機といった制御設備などである。導入を検討する顧客はこれら以外に、サーバ／ストレージ／ルータに代表される搭載機器や発電装置／変圧器などへの外部コネクタなどを別途そろえる必要がある。
サンによれば、Project Blackboxは搭載機器を含まない本体価格で約1億円弱になるという。正式発表は2008年早々を予定しており、そのときに正式名称も発表される予定だ。また、サンの代表取締役社長である末次朝彦氏は、「発売後2～3年で数十台は販売したい」と意気込みを語っている。
現状では、早期購入プログラムを利用したスタンフォード大学とロシアのモバイル・テレシステムズへの導入実績がある。日本でもISPを中心にすでに10社ほどから引き合いがあるという。
(山上朝之／Computerworld)
サン・マイクロシステムズ
http://jp.sun.com/
サンのProject BlackboxのWebページ
http://jp.sun.com/blackbox/introduction/
提供：Computerworld.jp
