航空会社の機内エンターテインメントシステム賞を制したLinux
このRed Hatベースのシステムは、カンタス航空(Qantas Airways)の各機種とデルタ航空(Delta)およびコンチネンタル航空(Continental)のボーイング777型機にも設置されている。Panasonicの機内エンターテインメントシステムの最新版であるeX2は、これまでのようなお決まりのラジオ番組ではなく、そのコンテンツは航空会社にもよるが、オンデマンドのオーディオおよびビデオ番組、ゲーム、オンライン書籍まで提供するものだ。
獲得票数の多かった上位3社がすべてPanasonic AvionicsのIFEを採用していることから、実際に各賞を制したのはPanasonicではないかと思われる方もいるだろう。南カリフォルニアに本社を置くPanasonic Avionicsによると、同社のシステムは世界中の3,000を超える機体に導入されているという。
Panasonic AvionicsのCEO、Paul Margis氏は次のように話している。「我々の顧客を非常に誇りに思っている。それぞれに独自色の強いシステムをお持ちだ」
受賞した航空会社はいずれも同じeX2のコアソフトウェアを使用していて類似のハードウェアプラットフォームを共有しているが、Margis氏によるとユーザインタフェースの部分はカスタマイズされていて外観は各社で異なるという。
Red HatのオペレーティングシステムはPanasonicのハードウェア構成と連携させるために「相当なテーラリング」が必要だった、とMargis氏は語る。こうしたテーラリングを可能にしたのがLinuxのオープンソース性だったという。同社ではコンテンツの高速ストリーミングが必要な少数のコンポーネントにはWind RiverのVxWorksを採用しているが、eX2のほとんどのコンポーネントは各種Linuxを動作させている。
また、ヴァージンアメリカ航空(Virgin America)も自社のLinuxベースのシステムREDにおいて、Panasonic製システムのコンポーネントを利用している。REDは社内で「スクラッチから」構築されたもので、PanasonicのeFXなど各種のIFEコンポーネントを利用している、とヴァージンアメリカで機内エンターテインメントシステムに携わるディレクタCharles Ogilvie氏は話す。
このIFEを備えた各機体全域に及ぶ無線アクセス機能により、持ち込んだノートPCを使って座席に居ながらゲームを楽しんだり食事を注文したりできるという。手持ちのPCがなくても、それぞれの座席にはキーボードが用意されている。
REDは継続的にアップデートが行われるベータ版的製品と見なされているため、同システムには投書箱も用意されている。「求められるものは常に変化しているはずだ」とOgilvie氏は述べる。
今年、ヴァージンアメリカがAvion Awardsに選ばれなかったのは8月の時点で運航を開始していなかったためだが、来年は受賞を狙いたいとOgilvie氏は語る。
また、Thales Aerospace社もLinuxベースのIFEシステムを手がけている。同社のTopSeriesシステムは、エアチャイナ、エアインディア、アイスランド航空など、いくつかの航空会社で機内エンターテインメント用として採用されており、さらに来年には日本航空での導入も予定されている。
Avion Awardsについて
Avion AwardsのスポンサーであるWorld Airline Entertainment Association(WAEA)は、ワシントンDCに本部を置いている。今年の受賞各社は世界中の36,000名の搭乗客からの投票に基づいて選ばれた、と話すのはWAEAの広報マネージャElinor Kinnier氏だ。賞の選定は、総合部門と地域別のそれぞれに行われた。この方法は、審査団が総合部門と特定のさまざまな部門別に審査を行った前年から変わっている。
「昨年は搭乗客からの観点が完全に欠落していた」とKinnier氏は言う。結果として、WAEAはこの賞の決定を、ロンドンのSkytrax Research社が全世界の搭乗客を対象に行う人気投票に委ねることになった。このインターネットでの投票は、今年前半に2か月以上にわたって実施された。