SFLCがBusyBox開発者の代理でGPL訴訟を提起
訴訟の中心となっているのは、GPLバージョン2の第3条項だ。第3条項では、ソースコードを製品と一緒に配布するか、またはソースコードの提供を申し出る文書を製品に含めておくことによって、顧客がソースコードを入手することができるようにしておけば、ユーザはBusyBoxのようなGPLプログラムをコピー/配布することができるとなっている。またMonsoonは第2条項bも違反しているとされている。第2条項bは、「『プログラム』またはその一部を含む著作物、あるいは『プログラム』 かその一部から派生した著作物を頒布あるいは発表する場合には、その全体をこの契約書の条件に従って第三者へ無償で利用許諾しなければならない」としている。HavaのEULA(使用許諾契約書)は、どちらの規定にも反するということのようだ。
Monsoon Multimediaに問い合わせたが、コメントを得ることはできなかった。
Ravicher氏によると、SFLCはこのGPL違反疑惑について9月初旬に連絡を受けたという。そしてSFLCがHavaを調べたところ「製品とファームウェアがBusyBoxを配布しているという結論に至った」とのことだ。そこでSFLCは先週、GPL違反の疑いがあることを説明した文書をMonsoonに送った。しかしそれに対する返事がなかったため、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に訴えを起こしたということだ。
Ravicher氏の説明によると、通常はこのような場合、通知を正式に受理したということだけの内容であるかもしれないが、数日以内に正式な返事があるようだ。Ravicher氏は「この件を(Monsoonが)重要だとみなしたり少なくとも認識したりしていることを示すような何らかの反応があれば、われわれのクライアントも裁判に持ち込む必要性を感じなかったことだろう。誰も好き好んで裁判を起こすわけではないが、まったく反応がない場合には裁判に持ち込むのも仕方がない。結局、われわれの文書に対して反応しなくても連邦地方裁判所の裁判官の言うことには反応するかもしれないという結論に達した」と述べた。
今回の訴訟は、2人のBusyBox前プロジェクトリーダーであるErik Andersen氏とRob Landley氏に代わって提起された。Landley氏によると、BusyBoxには法人格がないため、また寄与されたコードの著作権は各寄与者にあるため、Andersen氏とLandley氏とが個人として訴えを起こさざるを得なかったのだという。またAndersen氏とLandley氏自身が行なった寄与を保護することによって、BusyBox全体を保護することができるという。
BusyBoxがライセンス違反に遭遇したのは、今回が初めてのことではない。BusyBoxプロジェクトでは2、3年前まで、恥の殿堂というリストを管理していた。このリストにはライセンスへの準拠を促す目的で、違反と考えられるケースが18件も列挙されていた。
残念ながらこの作戦はおおかた不成功に終わった。プロジェクトの初期の頃はしばしば、たまたま弁護士であったAndersen氏の父親が違反容疑について知らせる文書を送っていたのだが、組み込みシステムが一般的になるにつれ、そのようなケースは法外な数に増えてしまった。SFLCが2006年3月に開設した時、GroklawのPamela Jones氏にSFLCのことを教えてもらったのがきっかけで、Andersen氏とLandley氏はSFLCの最初期のクライアントになった。Andersen氏は「GPLが唱える権利と自由を施行する取り組みをSFLCが引き継いでくれることになり、とても嬉しく思う」と述べている。
特にLandley氏にとっては、GPLの施行は個人的な権利という問題以上の意味がある。Landley氏は「ライセンスには存在意義があって欲しいと思っている。GPL2とLGPL(GNU劣等一般公衆利用許諾契約書)の下にあるプロジェクトに寄与することを私が決めたのには、理由があるのだ」と述べた。
Landley氏はまた、フリーソフトウェアプロジェクトに寄与しようとする開発者の気持ちがライセンス違反によってくじかれてしまいかねないことを恐れている。Landley氏は元BusyBox開発者のGlenn McGrath氏のケースを引き合いに出した。McGrath氏は2年前に、A-Link製品にライセンス違反の疑いがあることを発見した。
Landley氏によると「McGrath氏はライセンス準拠を求める取り組みを自ら行なった。その取り組みに彼は自分の人生の半年間を費やしたが、あまりにもうんざりしたため最後には寄与することをやめてしまった。ライセンス準拠を求める取り組みに疲れ果ててしまったので、自分をそのように痛めつける企業に対して無料でコードを寄与したくはないと考えて、あらゆるオープンソース開発をやめてしまったのだ」とのことだ。そしてLandley氏は今回の提訴の理由として「そのようなことはもう二度と起こって欲しくなかった」と付け加えた。
Andrsen氏とLandley氏は、損害賠償の額については現時点ではまだ未定としている。Ravicher氏によると「損害賠償額を決定するためには、相手方が得た利益や実際の違反内容などを知ることが必要」とのことだ。目下の訴訟は、SFLCとそのクライアントが違反の程度を判断するのに必要なソースコードなどの情報を入手することができるように開示手続きを進めることを目的としている。またSFLCは現在、審理中であってもHavaの配布が停止されるよう、仮差し止めの申請も検討している。
Bruce Byfieldは、Linux.com、IT Manager’s Journalへ定期的に寄稿するコンピュータジャーナリスト。