Gartner、グリーン・グリッドの活動を批判――「会員企業の利己的な利益追求が、グリーン化推進を阻む」

 米国Gartner Groupは、グリーン化を推進するIT企業団体「グリーン・グリッド」について、「もっと活動範囲を広げ、積極的な法制化運動を展開すべきだ」と批判するリポートを発行した。Gartnerは会員企業による利己的な利益の追求が、グリーン化活動を阻む可能性があるとの懸念も示している。

 グリーン・グリッドは、IT関連企業約80社で構成される非営利団体で、今年2月に発足した。会員には、Intel、Microsoft、IBM、Sun Microsystems、AMDなど、大手IT企業が名を連ねる。

 グリーン・グリッドの主な活動は、エネルギー効率のよいプロセッサやサーバ、ネットワークなどの技術を開発/策定し、コンピューティング・エコシステムの推進を提唱していくことである。現在は「データ収集/分析」「テクノロジー/戦略」「データセンター運用」「測定基準/測定法」の4つの作業部会が設置され、それぞれの分野で活動が行われている。

 グリーン・グリッドの「憲章」には、「包括的アプローチでコンピューティング・エコシステムを推進する。(中略)ITベンダーとエンドユーザー・コミュニティが情報を共有し、(グリーン化に関する)問題を解決する。そしてベンダーに依存しない共通のナレッジ・ベースを確立し、中立的なソリューションや信頼できるリソースを、エンドユーザーに提供する」と書かれている。

 しかし、Gartnerはリポート「Toolkit: The Green Grid: A Per Shade Of Green(進まないグリーン・グリッドのグリーン化運動)」の中で、「発足から5カ月が経過したが、いまだに包括的アプローチの具体的戦略が示されていない」と指摘したうえで、以下の点を批判している。

  • いつまでに何を提供するか、具体的なタイム・スケジュールが示されていない。
  • 会員企業の構成が偏りすぎている。もっとユーザー企業の参加を促し、均衡を図るべき。
  • 会員企業は、各社が推進するグリーン化戦略のプロプライエタリ技術を開発するが、それを(ライバルである)他社と共有することは好まないはずだ。そうであれば、同団体の効力はかぎられたものになる。
  • IT業界はデータセンター以外のグリーン化問題を網羅し、法制化を促す活動を望んでいる。しかし、グリーン・グリッドはこれに取り組んでいない。

 リポートの結論としてGartnerは、「グリーン・グリッドはIT業界に有益な新しい標準を策定する可能性はあるが、過度の期待はできない」としている。

 もっとも、多くのユーザー企業や組織がグリーン・グリッドに参加するべきであることは、グリーン・グリッドも認めているところだ。

 グリーン・グリッドで理事を務めるAMDのブルース・ショー氏は、「この5カ月間は、理事会を立ち上げ、将来のルール基盤となる内規と憲章を定めていた。今後は、会員を拡大することに注力する。(エンドユーザーからは)すでに数百件の参加申し込みがある」と語っている。

 グリーン・グリッドの一般会員の会費は年額5,000ドルで、グリーン・グリッドが作成したすべての技術文書の利用、知的財産のライセンス取得その他の特典を得られる。会費2万5,000ドルの賛助会員は、さらに技術作業部会に参加し、開発の各段階における技術文書をレビューし、団体の将来的方向性の決定に貢献できる。

(クリス・メラー/Techworld.com)

グリーン・グリッド
http://www.thegreengrid.org/

提供:Computerworld.jp