レビュー:Fedora 7
Fedora 7では、複数のインストール用ISOイメージが用意されている。GNOME版のライブCDとKDE版のライブCDに加えて、サーバ用のインストールやカスタマイズしたインストールを行ないたいユーザ向けの通常版のISOイメージがある。今回Fedoraのリリースとしては初めて、デスクトップユーザ向けにUbuntu風の1-CD/DVD版が提供されたのだが、結果は良好のようだ。
今回私はGNOME版のライブCDを使ってIBM ThinkPad T43にインストールしてみた。インストールの際は、パーティションやタイムゾーンについての質問に答え、ルートのパスワードを入力する必要があった。そしてリブートすると、インストール後に起動するウィザードがファイアウォールの設定やSELinuxについての質問をいくつか行なった。ウィザードではまた、一般ユーザの設定をすることもできた。
それが終わった後、私はGNOMEデスクトップにログインした。するとそのほぼ直後に、私のThinkPadのバッテリーについての予期せぬメッセージが表示された。メッセージは画面の右下に表示され、私のバッテリーがリコール対象になっている可能性があるということを知らせるものだった。実際のところ私のバッテリーはリコールの対象となっているので、これは有益なメッセージだった。
次に私はFirefoxを起動したが、インストールの時にもインストール後のウィザードの時にもネットワークを設定しなかったことに気付いた。たいていのユーザはコンピュータがブートしたらすぐにオンラインで何かしたいものなので、ネットワークについてもインストールの際に設定できた方が良かっただろう。私はインストールの後、Network Managerがワイヤレスネットワークにログインするように手動で設定しなければならなかった。また残念なことに、リブートする度に、Network Managerにネットワークにログインするように指示し、キーリングマネージャにパスワードを入力する必要があった。
ログインすると、アップデートするべきパッケージの存在を知らせる、ソフトウェアアップデータからの通知が表示された。最初にパッケージをアップデートしたとき、パッケージが署名されていないというエラーがあるとソフトウェアアップデータが報告した。これについては実際にそうだったのか、あるいはFedoraサーバに接続する際に不具合があったのか、私にはわからない。ただこれを行なったのがFedoraの正式リリースのすぐ後だったため、Fedoraのサーバの混み具合いと何か関係があったのかもしれないとも思える。なおそれ以降は、何の問題もなくパッケージをアップデートすることができている。
Fedora 7は、「extra」レポジトリと、Red Hat社員が管理していた「core」レポジトリとの統合(翻訳記事)後にリリースされた最初のバージョンだ。エンドユーザとして私はそれほど違いを感じなかったが、「core」パッケージ以外のパッケージのために「extra」レポジトリを有効にする必要はなくなった。
後述するFireWireの問題以外には、Fedoraはハードウェアを問題なく認識した。音声、ネットワーク、ビデオ、その他に試した外部デバイスなどはFedora 7ですべて問題なく動いた。ただ1点だけ音声に関して惜しい点があり、ThinkPadの音量調整ボタンがFedora 7ではデフォルトでは動かなかった。tpbパッケージをインストールすればこの問題を解決できるとのことだが、それでもデフォルトでそうなっていれば嬉しかった。
ハードウェアと言えば私は、Fedoraの開発者がテストなどのために使用することができるように、Smoltハードウェアプロファイラを使って私のハードウェアのプロファイルをアップロードした。Smoltの統計情報のページによると、先週のFedora 7のリリース以来23,000台以上のマシンがデータをアップロードしているとのことだ。
インストールされるソフトウェア
デフォルトのGNOMEのインストールには、メール/カレンダー/アドレスブック用のEvolution、IM用のPidgin、ウェブ閲覧用のFirefox、音楽用のRhythmbox、ビデオ用のTotemなど、通常含まれていると期待される標準的なデスクトップ用のアプリケーションが含まれていた。
Fedoraには、非フリーのコーデックや特許がかかっているコーデックは含まれていない。また、それらをインストールするための何らかの手軽な方法もFedoraチームからは提供されていない。
またOpenOffice.orgもデフォルトではインストールされていない。その代わりにGNOME版のライブCDではAbiWordとGnumericが含まれているが、プレゼンテーション用やデータベース用のパッケージはデフォルトでは含まれていない。OpenOffice.orgを探すために、yumインストーラのグラフィカルフロントエンドであるPirutを使用したところ、めまいがするほどの数のパッケージが選択候補として表示された。各コンポーネントがそれぞれ別々にパッケージにされているので、Pirutの検索機能を使ってOpenOffice.orgのパッケージを見つけようとすると、膨大な数の言語パックの中から探す必要もある。例えばWriterのみをインストールしたいという場合にはOpenOffice.orgのコンポーネントを一つだけ選択できるようになっているのは嬉しいことだが、オフィススィート全体をインストールする場合には、必要なものがすべて入っている一つのメタパッケージを選択することもできた方が嬉しいだろう。
全体的には私はPirutが気に入っているが、唯一の細かい欠点として、Browse(閲覧)タブやSearch(検索)タブからList(一覧)タブに切り替えるときに、Pirutがパッケージのデータベースを「毎回」読み込み直すため、毎回5秒から10秒ほど時間がかかるという点があった。Fedora 8がリリースされる頃にはPirut開発チームがこの欠点をなくしてくれることを願っている。
Fedoraチームは、ライブCDで使い始めるという観点で非常に適切なパッケージの選び方をしているが、自分の好みとは異なるという場合にはいつでも、Revisorを使って独自のライブCDを作成することができる。Revisorは今の時点ではまだFedoraのレポジトリには入っていないが、Fedora Project LeaderのMax Spevack氏のpeople.redhat.comのディレクトリからダウンロードすることができる。
高速ユーザ切り替え機能
コンピュータを複数人で共有しているなら、Fedora 7に含まれている高速ユーザ切り替え機能が便利だ。高速ユーザ切り替え機能を使うと、ログアウトする必要なく別のユーザに切り替えることができる。
リリースノートによると、高速ユーザ切り替え機能ではデバイスの所有に関していくらか問題があるとのことだが、私が使っている範囲では特に問題は起こらなかった。
私は2人目のユーザを作成して、Fedoraシステムをこのレビュー記事のために試していた日は一日中、2つのユーザを交互に切り替えていた。ユーザの切り替えを行なう際にわずかな遅延が発生するものの、ログイン/ログアウトし直す手間に比べたら時間はまったくかからない。複数ユーザを利用することができると、通常のアカウントとテスト用のユーザアカウントとを交互に切り替えて利用することができるため、私の場合はテストを行なう際に役立った。もちろんコンピュータを共有している家族などにとっても便利なことは間違いないだろう。家族の別の人がメールを読みたいというとき、それまでの作業を中断してすべてを片付けなければならないのではなく、この高速ユーザ切り替え機能を使用するだけで良いというのは、どちらのユーザにとっても嬉しいことだ。複数人に対し一台のマシンしかないという問題が完全に解決するわけではないが、かなり解決に近いところまでは行くだろう。
新たなSELinuxツール
Fedora 7には、2つのSELinux用のツールが含まれている。今回初めて含まれた新しいGUI管理ツール「system-config-selinux」と、前回までのFedoraリリースではデフォルトでは有効になっていなかったトラブルシュート用ツール「selinuxtroubleshoot」だ。以前はセキュリティレベルツールの一部だった、管理ツールのBoolean(ブーリアン)タブでは、Samba、rsync、PPPD、Apacheなどのシステムサービス/機能についてのSELinuxの設定を行なうことができる。Boolean(ブーリアン)タブは、何を行なうためのセクションなのかが分かりにくい名前だが、その点を除くとかなりユーザフレンドリだ。例えばSambaでNFSディレクトリを共有したい場合には、Boolean(ブーリアン)→Sambaへ行き、「Allow Samba to share NFS directories(SambaでNFSディレクトリを共有する)」をクリックすれば良いだけであり、かなり簡単だ。
しかし、テキストファイルを編集するよりも管理ツールを使った方が簡単であるとは言え、SELinuxが真に簡単に使えるものになるにはまだ改善の余地がある。管理ツールの多くのセクションでは、SELinuxについてのかなりの知識が要求されるため、少なくとも多様なフィールドの意味を説明する何らかの文書がある方が望ましいだろう。現状では、管理ツールにはHelp(ヘルプ)メニューの中にAbout(system-config-selinuxについて)ダイアログがあるだけだ。どれほど単純なアプリケーションであったとしても、Help(ヘルプ)メニュー経由で何らかの文書が利用可能になっていなければ、完成しているとも出荷準備万端とも言えないと思う。
FireWireの問題
Fedora 7の大きな変更点の一つに、カーネルのFireWireスタックが書き直されたということがある。私は既存のFireWireスタックをもう1年以上もの間、外付けディスクの利用やデジタルカメラからThinkPadとデスクトップマシンへデータを転送するために使用しているのだが、何が問題視されていたのかよく分からないのだが、新しいスタックの方が「優れていることになっている」ようだ。
「優れている『ことになっている』」という表現を使ったのは、実際には新しいスタックには、広く使用されるようになる前に直しておく必要がある欠陥が存在するように思われるためだ。Fedoraをインストールしてから3時間も経たないうちに、ビープ音が2度鳴った後、私のシステムは完全にロックアップしてしまった。最初は何が原因だったのか分からなかった。というのもその時はPirut、Firefox、いくつかの端末ウィンドウ、OpenOffice.org Writer、2、3個のNautilusウィンドウなど多くのウィンドウを開いていたためだ。
問題に再現性があるかどうかを調べるためにリブートしたところ、その2時間後に再びコンソールでビープ音がしてマシンがロックアップしてしまった。そこでシステムログを確認してみると、PCIバス上のハードウェアの問題についてのエラーに気付いた。私は問題がデスクトップ効果に関係があるのではないかと思ったので、デスクトップ効果を無効にして、また別の作業に取り掛かっていたのだが、結果的にはデスクトップ効果が問題ではなかった。
デスクトップ効果を無効にした後、外付けのFireWireディスクにアクセスできないことと、再接続しようとするとエラーメッセージが出ることに気付いた。そこで今度は、ディスクの寿命が切れかかっていることが原因かもしれないと考えたが、外付けディスクをUbuntuデスクトップに接続してみると問題なくアクセスすることができたため、そうではなかったことが分かった。外付けディスクを取り外すと、Firefoxが2度クラッシュした以外には、Fedoraは問題なく動いた。
ディスクが実際に故障しつつあるという可能性を考えて、念のためディスクからデータをすべて避難させた後、失敗を起こさせたり何らかのエラーメッセージを出させたりできないかと、私は数ギガバイト相当のファイルを外付けディスクからコピーしたり外付けディスクにコピーしたりして、その様子を観察した。そして2日経ったが、外付けディスクに問題が起こることはなかった。したがって今回の問題の原因は外付けディスクにあるのではなく、Fedora 7の新しいFireWireスタックにあると結論せざるを得ない。
FireWireのバグを除くと、Fedora 7には優れた部分が非常に多くあると思う。例えば、1-CD版も私は非常に気に入っいてる。インストールが少し簡単になり、おまけにダウンロードするISOイメージが一つで済むからだ。もちろん一枚のCDでは望みのものすべてが入っているわけではないが、いくつかのアプリケーションを追加でダウンロードしたとしても、4、5枚分のISOイメージをダウンロードするよりは短い時間で済む。なおFedoraはすべてのソフトウェアをインストールしたいユーザのためのISOイメージも提供しているため、誰もが満足できると思う。
Fedora 7がリリースされたばかりだが、FedoraファンはFedora 8の登場までそう長く待たされることはないだろう。プロジェクトのスケジュールによると、FedoraチームはFedora 8を通常の6ヶ月サイクルよりも短い期間で、ハロウィーンに合わせてリリースしようとしている。
この野心的なスケジュールを守るつもりなのであれば、私はFedoraチームが今までと比べて新機能の追加は控えめにして、今回のリリースのバグを修正することに集中することを願っている。以前、Fedora Core 6をレビューした(翻訳記事)とき、私はインストーラのバグに遭遇した。このバグはどうやらリリース時に既知であったようだが、私はリリース前に修正しておくべきだったと思う。そして今回のリリースでは、私のバックアップディスクのデータを失いかねないバグに遭遇した。私は大きなバグのないFedoraのリリースを期待している。