Fedora Core 6:Zod様の御登場!
FC6のリリース予定については最後の段階で若干の遅延が生じており、その理由はExt3データの損傷などの重大な問題がいくつか発生していたためだが、最終的にFedoraチームはほぼスケジュール通りの日程での公開にこぎつけている。問題は、いくつかのバグが残されたままだという点だ。欲を言えばリリースを1ないし2週間ほど延期してでも問題点の改善に努めた方が良かったかもしれないが、ユーザが慎重にインストール作業を進める限りにおいて、FC6は総合的に優れたリリースだと言えるだろう。
Fedora Core 6のインストール
私の場合Fedora Core 6の使用歴は、9月にリリースされたTest 3の段階にまで遡ることができる。テストリリースからプレリリース当時のAnacondaインストーラはバグだらけの代物で、インストレーションのソフトウェア選択時にデフォルト設定を変更するだけでクラッシュを引き起こしていた。ファイナルリリースではある程度の改善が施されているものの、インストレーション中にExtrasリポジトリを選択すると、やはりクラッシュしてしまう。こうした状況は、テキストモードのインストーラを使おうがGUIインストーラを使おうが変わることなく、私の場合は2台のマシンで試してもみたが、結果は同じだった。
Anacondaを使ったFC6のインストールをテキストモードで実行すると、デフォルトでランレベル3に移行し、マルチユーザ/テキストモードの操作環境に置かれることになる。このモードではインストール後の設定画面が何も表示されないのだが、この点はデフォルトでランレベル5に移行してマルチユーザ/X11モードとなるGUIインストーラの場合とは大きく異なっている。つまりこの場合、追加ユーザやテストサウンドなどのセットアップを行うことができないのだ。これをバグと見なすのは酷だろうが、非常に貧弱な設定環境だと私には感じられた。
リリースノートの説明によると、今回のリリースにおける新機能の1つとしてAnacondaでIPv6のサポートが追加されている。私はこの措置にどうも納得できないのだが、それと言うのも、現状でIPv6を使用しているソフトウェア製品をついぞ見たことがないからだ。確かに今からIPv6をサポートしておいても害はないだろうが、そのための開発時間があったら何か別の作業に回せたのではないだろうか。
今回のテストでは、FC6のファイナルリリースをラップトップおよびワークステーション上にVMware Serverを介してインストールしてみた。マシンのスペックは、ワークステーションが、Athlon XP 2600+ CPU、1GB RAM、GeForce FX 5500ビデオカード、WinBook C1700 17インチ LCDという構成で、ラップトップが、3.06GHz Pentium 4、1GB RAM、ATI Radeon 250ビデオチップセットという構成である。
今回のテストに用いたマシンに限ってのことかもしれないが、Fedora Core 6における各種ハードウェアのサポート状況は非常に良好であった。例えばビデオ設定は一発で成功し、サウンド関連の設定でも問題は発生しなかった。またワークステーションでは、内蔵サウンドカードの代わりにNovell BrainShareで購入していたUSBサウンドカード/スピーカコンボを試してみたが、その場合でもFC6は問題なく対応できている。
結局ハードウェア関連で生じたFC6のトラブルは、ラップトップのトラックパッドに関するものだけであった。トラックパッドの不調が気にならないのであれば、Firefoxを使って履歴を遡るくらいは、それほど難しい操作ではない。結局Googleで検索してみたところ、他のユーザもFedora Coreの以前のリリースで同様の問題に遭遇していたことが判明した。他のディストリビューションの場合、同じマシンを使っていても、この種の問題が発生したことはないのだが。
Fedoraの使用感
Anacondaはかなり不安定で設定変更があまりお勧めできないから説明しておくのだが、インストール時にパッケージをカスタマイズしない場合、デスクトップ環境としてはGNOMEだけがインストールされる。もっともPirutパッケージマネージャを使えば、数クリックするだけでXfceないしはKDEを設定することも可能だ。
ZodではGUI形式のパッケージ管理機能が向上しているが、コマンドライン用のyumパッケージマネージャにも改善が施され、C言語で記述された新しいメタデータパーサ機能が追加された。新しいyumではパッケージ情報を高速処理できるようだが、過去のリリースのものと比べても若干の高速化が施されている感じがする。またFC6には、パッケージのアップデート情報をデスクトップトレイのアイコン表示を介して通知する機能が追加されているが、これは私のように毎朝のアップデートチェックを忘れがちな人間にとって非常に重宝する機能だ。
FC6のデスクトップ用パッケージには、Firefox、Gaim、Evolution、OpenOffice.orgなど、GNOMEのデスクトップでお馴染みのアプリケーションが一通りそろっている。一般に開発陣がこうしたアプリケーションを選ぶ場合、最新バージョンないしはできる限り最新のものを選択する傾向があるようで、Gaim 2.0などは過去の安定バージョンではなくbeta4が同梱されている。もっともFirefoxに関しては1.5系列のままになっているので、最新版を使いたければMozillaのサイトにアクセスして自分で正式リリースを取得しなければならない。
Compizについては、デフォルトではインストールされるだけで、使用可能な状態にまでは設定されない。とは言うものの、ビデオカードが対応さえしていれば、ごく簡単な手順でCompizをアクティブにすることができる。GNOMEデスクトップのメニューでSystem -> Preferencesを選択すると、Desktop Effectsという項目が見つかるはずだ。後はEnable Desktop Effectsをクリックすればいい。ビデオカードが対応していない場合は、エラーが表示される。
Compizの動作状況だが、ATI Radeonカードを搭載したラップトップでは正常に使えたが、Nvidiaカードを搭載したワークステーションでは起動することもできなかった。正常な動作が確認されているビデオカード(および動作しないカード)の情報はFedoraサイトに一覧されている。
読者の中で、静止画やビデオでCompizの動作する様子を見たことはあるが、実際に手元のデスクトップで使ったことがない人は、Compizのことをハッタリだけの無用の長物と見なしているかもしれないが、その認識は半分は正しく半分は間違っている。確かにハッタリ的要素も含んでいるが、完全な役立たずでもないからだ。例えばウィンドウのサムネイル表示はMac OS XのExposéと同様の機能だが、これ1つを取ってもCompizは充分に使用する価値はあるだろう。実際ウィンドウがあまりに簡単に整理できるので、Compizの無い環境にはもう戻りたくない気分にさせてくれる。
“回転するキューブ”や“うねるウィンドウ”に比べると地味な機能だが、FC6では印刷関連の処理も改善されている。印刷設定ツールの起動速度はFC5版よりも高速化されているが、これは始動時にデバイスを検出する必要性が無くなったためであり、プリンタ定義ファイルのスキャンも、ツールの実行ごとではなく必要に応じて行われるようになった。
この印刷ツールが特に優れているのは、プリンタのスキャン能力だ。Brother 1270Nネットワークレーザプリンタを接続している手元の環境で試したところ、正しいドライバを選択させるにはプリンタモデルを指定する必要があるものの、それ以外は特に問題なく印刷ツールがプリンタを自動検出してくれた。このツールについては、細かな問題点が改善され操作性が向上した点を高く評価すべきだろう。
Xenの操作性
FC6では、新たなセットアップツールを用意することでXenの操作性が改善されているが、VMwareのServerやWorkstationあるいはParallelsのゲストシステム設定と比べると、Xenゲストのセットアップ法はまだまだ改善の余地が残されている。なおXenはデフォルトでセットアップされないが、多くのユーザはXenゲストのセットアップを必要としないであろうから、これは妥当な仕様だと言えるだろう。
今回のテストではwikiにあった指示に従ってXen対応カーネルおよびXenツールをインストールしてから、Virtual Machine Manager(VMM)を用いてFC6環境下でのゲストOSの1つとしてFC6を別途インストールしてみた。VMMと言ってもその操作は比較的簡単で、GUIアプリケーション上で仮想マシンのパラメータ(メモリ量やディスクスペースなど)を設定してFCパッケージの格納位置をインストーラに指定するだけだ。
VMMはCD/DVDおよびISOイメージからのインストールはサポートしていないので、ユーザはHTTP、FTP、NFSを介したネットワーク経由でFCツリーの位置をVMMに指定する必要がある。Fedoraミラーを使うこともできるが、転送速度はかなり遅い。おそらく一番良い手順は、ISOのマウント先をローカルシステムあるいはLAN上にある別システムに設定して、NFS経由でエクスポートすることだろう。
現状のVMMにはかなりの進歩が見られるものの、万人向けの機能となるには、まだまだ改善すべき余地が多く残されている。例えばVMMが一覧するゲストは実行中のものに限られているので、停止状態にあるゲストをVMMから起動させることはできず、そうした場合はVMMの管理下にあるXenゲストであってもxm create vmname
を用いて起動させなければならない。
ところで現行のXenインストールガイドには、説明が1つ抜けているのではないだろうか。それと言うのも、FC6ではデフォルトでSELinuxが使用可能となるが、これが原因となってXenゲストのセットアップ作業が阻害されているようなのである。今回、最初にゲストのセットアップを試したところエラーが生じてリスタートさせるしかなかった。結局、以前のインストールガイドの説明の中に、SELinuxをオフにすることが推奨される旨の記述が見つかり、その説明に従って操作を進めたところ、FC6のインストールは問題なく進行したのである。
SELinuxの操作性の向上
ひょっとしたらSELinuxの登場は、Bruce Schneier氏の業績以来、セキュリティ分野における最大の進歩かもしれないが、その操作法については依然として一筋縄ではいかない部分が残されている。その点Fedoraの開発スタッフは、未だ荒削りの感のあるSELinuxの運用を簡単化する目的でトラブルシューティング用ツールを用意すると同時に、Security Level Configurationツールという形で、SELinuxポリシ変更用のオプションを多数利用できるようにしてくれた。
私自身はSELinux Troubleshooterを使う機会には遭遇しなかったが、ポリシエディタを起動してマウス操作だけでどの程度の変更をSELinuxポリシに施せるかを確認してみた。FC5の場合と同様、SELinuxのレベルについては、enabled、permissive、disabledを設定できる。また、FTP、Apache、名前付きサービスなど特定のサービスに対してSELinuxを不使用にすることも可能だ。その他、Sambaにユーザのhomeディレクトリを共有させないなど、より細かな動作設定を施すことができる。
一部の問題に目をつぶれば総合評価としては優秀
Fedora Core 6には荒削りな部分が残されているが、その辺を気にしなければ、非常に優れたディストリビューションだと言えるだろう。もっとも私個人としては、より入念なテストをしてからリリースした方が良かったと考えているし、そうした点はインストーラ関連の動作に特に当てはまる。これがレビュー記事を書くためではなく、個人的な使用目的でFC6を評価していたなら、2台のテストマシンへの導入時にインストーラでsegfaultが発生した段階において、おそらく私はFC6を放り出していただろう。
Fedora CoreはRed Hatのベータ版に過ぎないと言ったらFedoraの開発スタッフは眉間にしわを寄せるだろうが、そうした批判を聞かされたくないのであれば、インストーラにバグが残されているのを承知しながらリリースを強行するようなまねはせず、予定を先延ばしにしてでもより入念なテストを施すべきであったはずだ。
もっとも、インストールさえ終わってしまえば、FC6は順調に稼働してくれた。デスクトップシステムとしては堅実な作りであるし、Fedoraリリースサイクルの短さが問題にならなければサーバとしての運用にも耐えるはずだ。