投資コンサル会社がAppleを痛烈批判――特定取締役の解任を投資家に助言。ストック・オプションの不正付与問題に対する姿勢は「ずさん」で「不誠実」

 年次株主総会を間近に控えた米国Appleの取締役会が、機関投資家向けに議決権行使の助言サービスを提供する大手企業、米国インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシズ(ISS)からやり玉に挙げられている。

 ISSはAppleの株主に対し、5月10日に開催されるAppleの株主総会において、同社の現取締役の大部分を再任しないように勧めている。ISSではその理由として、オプションの不正付与に関する問題を挙げている。

 これは、Appleがストック・オプション取得の付与日を、株価が安かった以前の日付にさかのぼって記録する「バックデート」を行い、多額の利益を得たとされる問題だ。

 米国証券取引委員会(SEC)は、この問題に関与したとして、Appleの元CFOであるフレッド・アンダーソン氏と同社の元法務顧問であるナンシー・ハイネン氏を提訴していた。アンダーソン氏は不正取得した350万ドルの利益と罰金を支払うことでSECと和解、一方ハイネン氏は和解する意思は表明しておらず、SECと連邦裁判所で争うと見られている。

 ISSが再任に賛成しないように勧めている取締役は、以下の報酬委員会と特別委員会のメンバーだ。

  • 報酬委員会メンバー ミラード S.ドレクスラー氏、ウィリアム V.キャンベル氏、アル・ゴア氏、アーサー・レビンソン氏
  • 特別委員会メンバー ジェローム B.ヨーク氏、エリック E.シュミット氏、ゴア氏

 ちなみにCEOのスティーブ・ジョブズ氏は、このリストに含まれていない。ISSはリポートの中で、「ジョブズ氏については、ISSは引き続き状況の動きを注視し、必要があれば再任投票に関して、あらためて助言を行う」と述べている。

 ただし、Appleの取締役選任の投票方式から考えると、株主がISSの助言どおりにしたとしても、現取締役が職を失うことはなさそうだ。

 ISSはリポートの中で、「特定の取締役に投資家が『ノー』を突きつければ、ストック・オプションの不正付与に関する問題で、SECが同社を調査する事態になったことに投資家や株主が不満を持っているという“強いシグナルを送る”ことになる」と述べている。

 またリポートでは、ストック・オプションの不正付与問題に対する取締役会の姿勢を痛烈に批判している。

 特にISSでは、Appleがバックデートの再発防止策の詳細を投資家に公表していないことに懸念を表明している。また、ストック・オプションを付与するタイミングや付与の承認プロセスに関する詳細を明らかにしていないことも問題だとしている。

 さらにISSは、Appleの報酬委員会と特別委員会のメンバーが、ストック・オプション行使によって2001年1月に役員らが得た利益の回収を行っていないと批判している。

 実は、AppleがISSから批判を受けるのは今回が初めてではない。ISSは2003年、Appleが事前に株主の承認を得ずにストック・オプション交換プログラムを実施したことを問題視し、ジョブズ氏を含む、ほぼ全員の取締役の再任に賛成しないよう勧めた“実績”がある。

 ISSはリポートの中でAppleを以下のように痛烈に批判している。

 「またしてもAppleは身内に甘いずさんな支払いと、報酬問題に関する株主の意見の軽視という行動パターンを繰り返している。ストック・オプション問題の紛糾に対するAppleの取締役会の対処は、投資家の信頼に反するものだ」

(ジム・ダルリンプル/Macworld.com オンライン米国版)

米国Apple
http://www.apple.com/

提供:Computerworld.jp