IBM、System pサーバーでx86 Linuxアプリをサポートへ

 4月23日、IBMは、System p Unixサーバー上でx86アプリケーションをそのまま実行できる仮想Linux環境の公開ベータ試験を行うと発表した。このIBM System p Application Virtual Environment(AVE)技術を用いるとLinux用のx86バイナリーをそのままの形で動かすことができ、一部の企業で効果的な仮想化を妨げていた大きな障害がなくなる。これにより、数百台はともかく、数十台のサーバーであれば、1つの仮想環境への集約が実現可能となる。

 IBMによると、この仮想環境では、開発に18か月以上かけ、約25の顧客が協力する6週間の非公開ベータ試験を行ってきた。最終リリース日はまだ決まっていないが、現在System p AVEを利用している顧客および今後利用する顧客に、今夏、無償で提供する予定だという。

 POWERプロセッサーを搭載するIBMのSystem pサーバーでは、現在でも、およそ2,800にも及ぶLinuxベースのアプリケーションが動作するが、下位のx86サーバーでしか動作しないアプリケーションも何万とある。System pで動かないアプリケーションがあれば、サーバーを何種類か用意しなければならず、効率が低下し、仮想化の目的を損なうことになる。

 System p AVEのアイディアが生まれたのは3年前のこと、AppleのPowerPC向けアプリケーションをインテル搭載Macで動かす技術を開発していたTransitiveが、IBMに同様の技術を提案したのが発端だ。

 このときのいきさつについて、IBMでSystem pのマーケティングと戦略を担当する副社長Scott Handyは次のように述べている。「お客様にそうした要望があることは承知していました。そこへ、Transitiveから『当社なら実現できる』と提案されたのです。それを見た私は『これだ』と頷いていました」

 「この技術は魔法のようにも見えますが、TransitiveがApple向けに開発したものとよく似ています。チップレベルから作られているので、アプリケーションには本来の環境と区別することはできません。アプリケーションはx86だと信じ『何の疑いもなく動く』のです」

 x86ベースの処理を単一のサーバーに集約する利点は大きい。顧客からは、冷房が効率化したため電力は66%減、必要な床面積は80%小さくなったが、質的な問題はないという評価を得ているという。

 「お客様はこの方法の効果を具体的な数字で納得していることがわかります。x86の魅力の一つはコストにありました。ですから、技術が『そこそこの品質』であれば、お客様にとっては、それでも問題はなかったのです。しかし、300台のサーバーを集約しようという場合はさらなる高品質が求められますから、『そこそこの品質』では問題ないとは言えなくなります。p AVE技術は、当社が品質を極めて重視している現れなのです」

 WebDeal Hostingで販売とマーケティングを担当しているマネージャーEgil Fujikawa Nesによると、p AVEを3週間試用した結果よい感触を得たという。同社は中小企業のWebプロジェクト管理を代行しているが、クライアントの80%以上が、アプリケーションがx86システム以外では動作しないという問題を抱えているという。

 「当社にとっては大きな利用価値があります。スケーラビリティーが高く、可能性が大きく、パフォーマンスの良い優れたソリューションです。PHPのサポートは特にいいですね」

 Fujikawa Nesが最も高く評価するのはサーバーを効率的に集約できる点だ。「当社のお客様が必要とするものを動かすのに複数のマシンを用意するのではなく、1台で済ますことができます。これは素晴らしいことです」

 現在、IBMは世界の仮想化市場において販売額の32%を占めているが、IBMとしては、System p AVEによりさらなる拡大を目指しているのだとHandyは説明する。つまり、System p AVEにより「サーバー・コンソリデーションの可能性を多くの顧客に向けて開き、UnixとLinuxを再統一しようとしているのです」

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