Ethernet上にFC-SANプロトコルを統合する新仕様が標準化プロセスへ――iSCSIとは異なりデータセンターやHPCシステムでの利用を想定

 米国の複数のITベンダーが、Ethernet上でファイバ・チャネルSAN(Storage Area Network)プロトコルを動作可能にする新たな仕様を提案した。

 「Fibre Channel over Ethernet(FCoE)」と呼ばれる新たな規格を提案したのは、米国規格協会(ANSI)、Brocade、Cisco Systems、EMC、Emulex、Intel、Nuova Systems、QLogic、Sun Microsystemsなどだ。

 すでにファイバ・チャネルSANを運用しており、Ethernetインフラストラクチャ上でその環境を利用したいと考えている組織にとって、Ethernetとファイバ・チャネルの両方を利用できる統合的なネットワーク基盤は大いに魅力的であり、ITベンダーらによる今回の提案はそうした環境を構築するための第一歩となると見られる。

 FCoEは、SCSIコマンドをTCP/IP経由で送信するiSCSIとは異なり、データセンターでの使用を想定して策定されている。また、その他の専門的な用途に用いられる可能性も十分にあるという。

 Brocadeで製品マネジメント担当上級ディレクターを務めるダグ・イングラハム氏は、「ブレードPCやHPC(High-Performance Computing)システムを運用し、1つのアダプタでEthernetとストレージの両方のトラフィックを処理したいと考える組織にとっては朗報になるだろう」と強調する。

 FCoEは、今日のEthernetネットワークを悩ませているパケット・ロスを軽減してくれる。Nuova Systemsの共同創設者であるルカ・カフィエロ氏は、ファイバ・チャネル・プロトコルは、Ethernetスイッチのようにフレームの消失に対処する機能を持っていないため、フロー制御機能を備えるEthernetスイッチを使用する必要があると説明する。

 Ethernetの進化とともに、Ethernetプロトコルにはポーズ機能を追加する機能拡張がサポートされ、パケットの消失が起こっていないこと、あるいはバッファ間クレジットが実装されていることを確かめられるようになった。こうした拡張の開発は、IEEEの主導の下で進められている。

 業界アナリストも、標準的なEthernetリンクにおけるファイバ・チャネル利用を目指した今回の取り組みを高く評価している。

 ストレージ・アイオーの上級アナリスト、グレッグ・シュルツ氏は、「物理レイヤーの最下層で、ファイバ・チャネルとEthernetが互いの物理層機能を利用し合うというFCoEの集約性は、非常に興味深い特徴だ。ユニファイド・ネットワークの構築だけでなく、有線インフラストラクチャの統合も検討している組織にとって、FCoEは有効に機能するだろう」と評価する。

 Emulexのマーケティング・ディレクターを務めるマイク・スミス氏によれば、新仕様は10Gbps以上のEthernetに適用され、サーバ側には、サーバを管理するファイバ・チャネル・アダプタや、ネットワークを管理するEthernetアダプタのような特別なホスト・バス・アダプタが必要になるという。

 FCoE は、iSCSI層ではなくデータリンク層(レイヤー2)で動作するという点で、iSCSIとは異なっている。また、ファイバ・チャネル・フレームをTCP/IP経由で送信するインターネット・ファイバ・チャネル・プロトコルやFCIP(Fibre Channel over IP)プロトコルとも異なるものだ。レイヤー2のサービスとして機能させることで、FCoEはTCP/IPのオーバヘッドを回避することができる。

 Ciscoもデータセンターもしくは遅延の小さいLow Latency Ethernetに対応する技術の特許を出願しているが、FCoEはこれとも異なる性質を持つ。Ciscoは、Ethernetおよびファイバ・チャネル双方のトラフィックを仮想経路上で送信する集約型I/Oを提案している。この仮想経路には、フレーム落ちに対処できるEthernetデータ転送用の経路と、対処できないファイバ・チャネル・データ転送用の経路がある。

 ファイバ・チャネル規格を統括しているANSIのT11委員会メンバーによれば、新たな仕様は今後18~24カ月の間に承認される見込みで、実際の運用は2009年中に始まるという。

(デニ・コナー/Network World 米国版)

提供:Computerworld.jp