オープンソースが見えるCeBIT 2007
オープンソース・ソフトウェアを扱う企業は、大概、第5ホールのLinux Parkに集まる――これがCeBITの伝統であり、今年も例外ではなかった。もう一つの伝統、Knoppix新バージョンのリリースも例年通りで、今年は5.2がリリースされた。ただし、Klaus Knopper――ミスターKnoppixその人――がフリー・ディスクを配ったり訪れた人の質問に答えたりすることはなく、その代わりにドイツの出版社Heiseが最新バージョンのKnoppixを付録とする同社の雑誌C’tを販売した。
今回のリリースにおける最大の特徴は仮想化だ。Linuxディストリビューションとしては唯一、仮想化ソフトウェアVirtualBoxのオープンソース版が搭載されている。また、QEMU(KQEMU高速化モジュールを含む)、Xen、VServer、OpenVZも同梱されている。もう一つの特徴は、Knoppixインストーラーに代わるまったく新しいインストーラー0wn(Zero Work Needed)だ。名前から予想されるとおり、Knoppixが従来以上に簡単にインストールできるようになる。ただし、ダウンロードは4月からだ。
VirtualBoxと言えば、開発元であるInnoTekのUlrich Moller博士と楽しく話をする機会があった。博士によると、同社はここ数か月間驚きの連続だったそうだ。GPL版をリリースしたことでVirtualBoxへの関心が一気に高まったからで、1月15日(公式リリース日)だけでも60,000件を超えるダウンロードがあったという。
InnoTekのUlrich Moller博士(クリックすると大きな写真が見られます) |
VirtualBoxオープンソース・エディションのバイナリー版をリリースする予定はないそうだが、すでにKnoppix 5.2に同梱され、Ubuntuの次期バージョン(Feisty Fawn)にも搭載されるという(同博士談、未確認)。同社は引き続きバージョン1.3のアップデートを提供する一方、数週間ほど後にはメジャー・リリースを発表する予定だ。そのVirtualBox 1.4では新たにMac OS X版と64ビット版が加わり、さらに、VMwareイメージを一切変更することなくそのまま使えるようにもなる。リリースされればVMwareとParallelsにとって強敵となりそうだ。
今年のCeBITでは、O3Spaces(関連記事あり)の開発者たちが、ドキュメント・コラボレーション・ソフトウェアの次期バージョンに関する発表を行った。現行バージョンでは独立したWorkplace Assistantアプレットを使ってOpenOffice.orgスイートとの統合を実現していたが、新バージョンではエクステンションあるいはプラグインによって実現され、OpenOffice.orgやMicrosoft Officeとの統合が大幅に改善された。どちらのモジュールでも、自動チェックイン/チェックアウト、バージョニング、コメント、ドキュメントの公開など、O3Spacesのほとんどの機能にオフィス・スイートの中から直接シームレスにアクセスできるようになる。
CeBITに展示されていたのはソフトウェアばかりではない。Yoggie Security SystemsのYoggie Gatekeeperも展示されていた。これは、Windowsユーザーをウィルスやスパムなどの迷惑行為から守るために設計されたLinuxベースの簡易な装置だ。スパム防止、フィッシング防止、スパイウェア防止、ウィルス防止、POP3/SMTP用電子メール・プロキシ、HTTP/FTP用Webプロキシ、VPNクライアント、ステートフル・インスペクション方式のファイアウォールなど、13種以上のセキュリティー・アプリケーションが組み込まれているという。しかし、それより何より、インストールや設定やアップデートの心配がいらないのがよい。YoggieをコンピューターのUSBポートに差し込むか、ネットワークにつなぐだけで設置は完了する。手のひらに軽く載るくらいの大きさだから、ノートパソコンの利用者は外出中にも使えるだろう。
一言でいえば、今年のCeBITは見応えがあった。もちろんLinuxやオープンソース・ソフトウェア専門のショーには比べるべくもないが、オープンソース・ワールドの動向を俯瞰することはできた。
Dmitri Popov フリーランスのライター。ロシア・英国・米国・ドイツ・デンマークのコンピューター雑誌に寄稿している。