Oracle、インメモリ・データ・グリッド技術を取得――複数サーバにまたがるデータ・オブジェクトを単一メモリ上で高速処理
データ・グリッド・ソフトウェアは、複数サーバにまたがって存在するデータ・オブジェクトを単一物理メモリ上で効率的に処理するためのミドルウェア。使用頻度の高いデータへのアクセスを高速化し、低速なバックエンド・システムからそうしたデータにアクセスする必要をなくすことで、アプリケーションのパフォーマンスを向上させる。
Oracleの開発部門担当副社長、スティーブ・ハリス氏は、「タンゴソルは、われわれに新たなソリューションを与えてくれる。Oracleの技術スタックに新要素が加わることにより、リアルタイム・トランザクションの処理能力の強化が図れる」と強調した。
タンゴソルの「Coherence」ソフトウェアは、金融サービスや通信、物流といったリアルタイム・データ・アクセスを必要とする産業が共通して導入を進める「eXtreme Transaction Processing(XTP)」を実現する。タンゴソルのCEOを務めるキャメロン・パーディ氏によれば、同社は収入の大半を金融サービス企業から得ているという。
サービス指向アーキテクチャ(SOA)やイベント駆動アーキテクチャへ移行する企業が増加するにつれ、タンゴソルなどの企業が提供する強力なアクセスおよび処理技術に対する需要も大きくなっていると、ハリス氏は指摘する。
パーディ氏も、タンゴソルが開発に取り組んできたようなインメモリ・データ・グリッドがきわめて有用な技術であることが、ここ数年で広く認識され始めたと説明する。その証拠に、同社は18カ月前から、同技術に関する説明を新規顧客にしなくて済むようになったという。
タンゴソルのソフトウェアを採用し、可用性の高いトランザクション処理を行っているある銀行では、特定のタスクの実行に要していた時間を50日間から1時間へ短縮できたと、パーディ氏は強調している。
3月23日にタンゴソルの買収を発表したOracleは、慣例的な取引実行条件に従って、2007年4月中に同社の買収を終える見通しだ。両社ともに、買収金額についての情報は公表していない。
Oracleはこのところ、データベースやミドルウェアよりも、アプリケーション・ビジネスに焦点を絞った企業買収に積極的に取り組んでいる。例えば3月初頭には、ビジネス・インテリジェンス・アプリケーション・ベンダーのハイペリオン・ソリューションズを33億ドルで取得する契約を結んだ。
Oracleはタンゴソルの技術をFusionミドルウェア、インメモリ・データベース「TimesTen」、エンタープライズ・レベルの「Oracle Database」に統合し、リアルタイムのデータ分析やグリッド・ベースのインメモリ・コンピューティング、高パフォーマンス・トランザクションなどを実現するアプリケーションに対応するミドルウェア・スタックを作り上げていくという。
Oracleはタイムズテンを2005年6月に買収して以来、インメモリ・リレーショナル・データベースであるTimesTenの開発に力を注いできた。同製品の初めてのメジャー・バージョンは、今年2月にリリースされている。
マサチューセッツ州サマービルに拠点を置くタンゴソルは、デルタ・エアライン、フェデックス、メイシーズ、スターウッド、ワコビアなど100社以上の企業顧客を抱え、同社のソフトウェアは世界1,500カ所で運用されいている。
Oracleは今後、独立した製品ラインの提供、Fusionミドルウェアへの統合という2つの取り組みでタンゴソルのソフトウェアをサポートし、開発作業を継続していく。
また同社は、タンゴソル・ユーザーにFusionの導入を求めることはせず、Coherenceを独立したミドルウェアとして使用できるよう引き続き開発・機能強化を進めていくという。
ハリス氏は、「既存の環境で製品を使い続けられる体制を維持するという当社の戦略の一環としてこうした方針を立てた」と力説する。Coherenceは、BEAシステムズ、IBM、Microsoftの.Net部門、Oracle、Red HatのJBoss部門などのミドルウェアに対応している。
(チャイナ・マーテンス、ナンシー・ゴーリング/IDG News Service ボストン支局)
米国Oracle
http://www.oracle.com/
提供:Computerworld.jp