デル、Linux OS搭載PCの販売を検討--同社ブログにユーザーからの要望が殺到
Dell Ideastormは、ユーザーからの要望やアイデアをインターネット上で募集し、それに対してユーザーが賛成かどうかを投票したり、投稿されたアイデアを基にユーザーどうし(デル社員も含む)が意見交換したりできるブログである。
同ブログは、今月からCEO(最高経営責任者)に復帰したマイケル・デル氏が、業績回復に向けた取り組みの1つとしてスタートさせたものだ。
同社では、「ユーザーのアイデアや意見には注目しているが、賛成票(意見)が多いアイデアだからといって、必ずしも製品化するとはかぎらない」としている。ただし、デル氏は、「ユーザーからのフィードバックを活用し、顧客サービスの改善につなげたい」とコメントしている。
2月21日時点で最も多く寄せられた要望は、Linux搭載PCや、アプリケーションがインストールされていないPC、さらにはサン・マイクロシステムズの「OpenOffice」をバンドルしたPCを販売してほしいというものだ。また、マイクロソフトの「Internet Explorer」ではなく、モジラの「Firefox」をバンドルしてほしいという要望や、電話サポートを海外のオペレーターに回さないよう求める声も多い。
同社の広報担当、キャロライン・ディーツ氏は、Linux搭載PCの販売を求める声に対し、今週中に同社の幹部社員が同ブログで説明する予定であることを明らかにした。
「アイデアを採用するかどうかの判断は、ユーザーの支持率以外の要素も考慮したうえで下すことになる」(ディーツ氏)
またディーツ氏は、同ブログは公開されたばかりの“発展途上段階”で、利用ルールを調整/改善しながら運用していることも明らかにした。
例えば、ブログが公開された最初の週末には、少数のユーザーが特定のアイデアに対して賛成票を“大量に”投じるという事態が発生した。これを受け、同社では2月21日から同ブログを登録制にして、1人のユーザーが1つの意見に対して1回だけしか投票できないように改善したという。
もう1つの問題は、「ポイント」という単位である。Dell Ideastormでは、1回の投票で「10ポイント」がカウントされる仕組みになっている。このため、Linux OSを搭載したPCを販売してほしいという意見は“6万7,703ポイント”を獲得しているが、これに実際に投票したのは6,000人程度だ。なお、2位の意見(OpenOfficeのバンドル)は4万572ポイント(約4,570人)、3位の意見(アプリケーションの未インストールPC)は2万 7,476ポイント(約2,750人)となっている。
公開から1週間しか経っておらず、運営の仕組みに課題はあるものの、多くの専門家は、同ブログに寄せられた意見を基に、デルが一般消費者向けのLinux搭載PCを販売すると予測している。
米国クラビー・アナリティックスのCEO、ジョー・クラビー氏は、「デルは、レッドハットやオラクルと強力な提携関係を結び、エンタープライズ・サーバ分野でLinuxの普及拡大を目指している。それを考えれば、コンシューマー向けのLinux PCが発売される可能性は十分にある。デルはおそらく、コンシューマーがLinux OSを利用したくなるような“キラー・アプリケーション”が登場するのを待っているのではないか」と分析する。
また投資家たちも、デルが業績を改善させるには、こうした大胆なビジネス戦略が必要だと見ているようだ。
ここ数カ月を見ても、同社は逆境続きである。不正会計を巡る株主提訴や、ノートPCバッテリのリコール、さらには昨年下半期(7月-12月期)の世界PC出荷台数でヒューレット・パッカード(HP)にトップの座を奪われているのだ。
CEOに復帰したデル氏は、このような状況を速やかに打破し、投資家と消費者の信頼を回復するべく奔走しているようだ。すでに一部のベテラン役員を更迭し、モトローラやセレクトロンなどから幹部を迎えるといった措置を矢継ぎ早に打ち出している。
(ベン・エームズ/IDG News Service ボストン支局)
米国デル http://www.dell.com/
提供:Computerworld.jp