アドビ、PDFフル仕様の国際標準化に本格始動

 米国アドビシステムズは1月29日、PDFのフル仕様を国際標準化機構(ISO)の世界標準とすることを目指し、エンタープライズ・コンテンツ管理の標準化を推進する非営利団体「AIIM(Association for Information and Image Management)」に「PDF 1.7」の仕様全体を提出すると発表した。

 アドビの製品管理担当ディレクター、サラ・ローゼンバウム氏によると、今回の決定は、PDFのサブセットの周りにさまざまなISO標準が生まれつつあることが背景にあるという。「PDF仕様は、業界や用途の違いに応じて作成される難解な仕様になりつつあった」と同氏は指摘している。

 すでに、「PDF/Archive(PDF/A)」と「PDF/Exchange(PDF/X)」はISO標準として承認され、そのほかにも「PDF for Engineering(PDF/E)」と「PDF for Universal Access(PDF/UA)」の2つの仕様が標準化プロセスに入っており、8〜12カ月中に標準化される見通しだ。また、AIIMは「PDF for Healthcare(PDF/H)」をベスト・プラクティス・ガイドとしてISOに提案している。

 PDF 1.7のISO標準化は、仕様全体が包括的標準として提供されることを意味しており、PDFフォーマットの使用を義務づけられた公的機関などの組織にとってはきわめて有益だ。

 最近、サン・マイクロシステムズやIBM、OpenOffice.orgが推進する「OpenDocument Format(ODF)」と、マイクロソフトが推進する「Office Open XML(OOXML)」という対立する電子文書フォーマットの支持者らが標準化に向けた動きを活発化させている。しかし、ローゼンバウム氏は、今回のアドビの決定はこうした動きに対抗するものではないと強調する。

 ISOは2006年5月にODFを国際標準として承認しており、現在、同じ認定をOpen XMLにも与えるかどうかの検討を進めている。ちなみに、PDFのサブセットをISO標準にするためのアドビの働きかけは、PDF/Xの作業が始まった1995年までさかのぼる。

 PDF 1.7のISO標準化を求めるプロセスは、アドビ、マイクロソフト、SAPなどがメンバーとして参加するAIIMに共同技術委員会を設置することから始まる。

 同グループは、PDF仕様の中で対応が必要な問題やその解決方法について議論し、国際標準案としてISOに提出するドラフト文書などを作成する。PDF 1.7が完全なISO標準になるまでには1〜3年の期間を要すると見られるが、その間のどの時点においても仕様に変更を加えることができるという。

 一方、現在策定中のほかのPDFサブセット仕様の標準化作業もそのまま進められることになりそうだ。ローゼンバウム氏もPDF/AやPDF/Xの仕様が変更されることはないと見ている。

 アドビは、1993年にフルPDF仕様の公開を開始し、Acrobatソフトウェアの新版リリースに合わせてオンラインPDFリファレンス・マニュアルを通じて仕様のアップデートを公開してきた。これにより、サードパーティ各社は、アドビのソフトウェアを使用しなくてもPDFファイルを読み書きするアプリケーションを開発することができた。

 一方、ユーザーがPDF仕様の変更を望むケースもあったが、これまでは変更個所が仕様に含まれるには次のAcrobatのリリースを待たなければならなかった。PDF仕様全体がISO標準となれば、こうした変更個所がより早く公開されることにつながる、とローゼンバウム氏は説明する。

 「われわれは、人々がPDFの新たなアプリケーションや利用方法を生み出すことを期待している」と同氏は付け加えた。

(チャイナ・マーテンス/IDG News Service ボストン支局)

米国アドビ システムズ http://www.adobe.com/

提供:Computerworld.jp