Linspire、CNRを汎用ツール化へ

Linspireは、1月23日、「CNR for all」ウェアハウスを新設する計画を発表した。計画が実現すれば、Linspire系以外のLinuxディストリビューションでもソフトウェアを簡単にインストールできるようになる。Linspireには、ソフトウェアのダウンロード、依存性の解決、アプリケーションの追加・削除が可能なワンクリック・インストール・プログラムClick ‘N Runがあるが、現在は、Linspire(商用ディストリビューション)とFreespire(フリー版)でしか利用できない。このツールのオープンソース・プラグインを提供し、Red HatおよびDebianベースのディストリビューションでも利用できるようにする計画だ。

「(Microsoft)WindowsユーザーやMacユーザーにLinuxに対する不満を聞くと、最もよく指摘されるのが、ディストリビューションの多さ、しかもインストールの方法がまちまちだという点です」。LinspireのCEOであるKevin CarmonyはLinspire Letter to the communityの中でこう述べている。そして、平均的なデスクトップ・ユーザーにとって、アプリケーションを探し出しインストールするまでの手間が障害になっているという。「デスクトップLinuxでは、使いたいアプリケーションがあったとしても、そのプログラムを探すことから始めなければならず、さらに『自分が使っている』Linuxディストリビューションに対応するファイル形式・インストール手順のファイル(.debファイル、.rpmファイル、.tar.gzファイルなど)が用意されている必要もあります。平均的な利用者にとって、これはあまりにも煩雑すぎます。彼らがLinuxを敬遠するのも無理はありません」

CNRは、そうした煩雑なインストール手順を簡略化する仕組みだ。Carmonyは、広く使われている画像編集アプリケーションGIMPを引き合いに出し、GIMPのダウンロード・ページとそれに対応するCNRのページを比較して説明している。

もちろん、Linspire以外の主要ディストリビューションにも、CNRのような仕組みを持っているものはある。たとえば、UbuntuにはSynapticが、FedoraにはPirutがある。どちらも、アプリケーションを探し出し依存性を解決することができる。しかし、こうしたディストリビューションを頻繁に使い回しているユーザーならおわかりのとおり、あるアプリケーションをあるディストリビューションで見つけたとしても、ディストリビューションが変われば、もう一度探し直すことになる場合が多い。新たに提供されるCNRプラグインの意義はここにある。Linspire以外のディストリビューションの利用者もCNRが使えるようになれば、.debと.rpmベースのディストリビューションに共通して使えるソフトウェア・インストールの仕組みが生まれることになる。

「CNRプラグインは、WebサイトCNR.comと組み合わせて用いる、ディストリビューションにはよらないパッケージ管理アプリケーションです」と、Linspireのマーケティング・プログラム・マネージャーAurelia Negrerieは説明する。オープンソースでリリースする予定だそうだが、ライセンスについての発言はなかった。

「完成すれば、CNR.comは全く新しいCNRウェアハウスとなるでしょう。他のディストリビューションからも、対応する『プラグイン』をダウンロードすれば、CNR.comにあるアプリケーションをワンクリックでインストールできるようになります」(Carmony)

UbuntuのSynapticなど、各ディストリビューションが持つ現行ツールとの互換性について、Negrerieは「このツールとサービスはオープンソースですから、対応しようと思えばできるはずです」という。

そして、ソフトウェアの検索とインストールが一個所でできるようになることについて、ほとんどのLinuxディストリビューションは「強い期待感を示した」という。「将来、多くのディストリビューションがCNR.comへの対応に前向きになり参加することになれば、仕組みの一部を開放することになるでしょう」

Debianは無関心

これに対して、Debianプロジェクトの反応は消極的だ。同プロジェクトのコア開発者Martin ‘Joey’ Schulzeは、Debianプロジェクトとしては改善に繋がることであれば喜んで協力するが、「この(CNRの)場合は、必ずしも必要なものではありません」と述べている。そして、CNRがディストリビューションを超えて機能する仕組みの詳細を知る機会はまだないが、Debianプロジェクトとしてはフリーにしてもらいたいという。「Debianプロジェクトはフリーソフトウェアの利用を勧め、自らもすべてのコードをフリーにしています。フリーでありさえすれば、Debianディストリビューションに直接組み込むこともでき、Debianの派生品にも同梱されるでしょう」

また、現行のDebianパッケージ管理システムはCNRの影響を受けるべきではないという。「CNRは、新しいパッケージをインストールする際、すでにある情報を利用してインストールに必要なものを調べるはずです。Debianのパッケージ管理システムには、あるディストリビューションにはまだないパッケージを適切に組み込む手段が用意されています。backports.org、rpmseek.com、apt pinningなどですが、Linspireはそうしたものを使っているはずです」

これについて、Negrerieは次のように述べている。「CNRと同じリポジトリーのAPTを使ってインストールすれば問題は発生しませんが、異なるリポジトリーからインストールすれば依存性問題の発生は避けられません。しかし、それはCNRだけの問題ではなく、どのようなパッケージ管理システムでも同じです。私たちがやろうとしているのは、ディストリビューションを超えて機能するツールを提供することです。パッケージを探し回り、多くのツールを使い分ける手間をなくしたいのです」

新CNRシステムを通じてパッケージを配布するには、Linspireのソフトウェア提供者向けプログラムに登録する必要がある。登録すると、製品をアップロードできるようになる。Negrerieによれば、CNRの基本サービスは無償だが、商用のソフトウェアおよびサービスも提供するという。「現在、CNR Gold Serviceは49.95ドルですが、商用Linuxソフトウェアについては大幅な割引があります」

各ディストリビューションが持つ固有のソリューションに対してCNRがどういう結果を出すか、また、Linspireが最新のオープンソフトウェアをリリースし続けられるか、興味深いところだ。新しいCNRウェアハウスとプラグインは今年第2四半期の提供開始。開始日は間もなく発表される(Negrerie)。

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