Mandrakeの創設者、新ディストリビューションについて語る

すでにGaël Duval氏はフリーソフトウェアの歴史にMandrakeの開発者、そしてMandrakeSoft(現Mandriva)の共同設立者として、その名を刻んでいる。今年3月にMandrivaから解任されたDuval氏は、ユーザをシステム管理の作業から解放することでコンピューティングの簡素化をねらう新しいディストリビューションUlteoによって、再びその名を知らしめようとしている。今週、6ヶ月間の沈黙を破ってUlteoのアルファ版がリリースされるのに伴い、Duval氏は自身の計画をLinux.comに語ってくれた。

Ulteoのアイデアは、ここ数年のDuval氏の経験から生まれたという。「ソフトウェアの専門家である私は、友人や家族から手助けを求められることが非常に多い。どんなオペレーティングシステムが使われていようと、これと同じ状況が発生する機会はますます増えつつある。通常、ユーザは問題のあるシステム動作の修正、またはアプリケーションの追加や削除といったシステム管理作業の実行を求められる。そうした作業をユーザが行えると思うのは、すばらしいGUIが存在するからであり、いつでもOK(了解)/Cancel(取消)をクリックできるからだ」

「それでうまくいくこともあるが、こうしたシステム管理の作業には時間がかかり過ぎる。作業に失敗して、詳しい人にシステムのリカバリを行ってもらう破目になることも多い。こうした問題への対応にユーザがあまりに多くの時間を費やしているのは、嘆かわしいことだ」(Duval氏)。

Duval氏はUlteoのねらいを「システム管理をできる限りユーザの手からコンピュータの専門家の手に委ねることにより、こうした問題を解決すること」だと説明している。

Ulteoの動作の仕組み

Ulteoの設計に関する詳細はほとんど公表されていない。UlteoプロジェクトのWebページには、11月初めにアルファテストに入ったUlteo Connected Desktopについての記載はあるが、「Ulteo OSのユーザとその他すべてのOSのユーザの両者を対象としたUlteoデスクトップ」ということ以上の詳しい情報は見あたらない。

ただし、Ulteoのニュースレターは、この新しいディストリビューションについて次のように記している。

  • 最新の安定した機能の大半と自己アップデートの機能を常に自動的に提供。
  • ユーザにとって必要なシステム管理の作業は皆無またはごくわずか。
  • ユーザの利用範囲をオープンにし、既存のあらゆるアプリケーションを簡単に利用可能。

Duval氏は次のように説明する。「一般に、LinuxやMac、またはWindowsを利用すると、古いシステムを棄てて新しいシステムをインストールするか、決して安全でも安定したものでもないアップグレードを実行するかのどちらかをいつかは行わなければならない。だがUlteoの場合は違う。Ulteoはコアシステムのほか、システム全体の一部としてみなせるコアのアプリケーションも管理している。我々はこのシステムを‘アプリケーションシステム’と呼び、任意のエンドユーザアプリケーションを提供することを想定していない従来の‘オペレーティングシステム’と区別したいと考えている」

今回のアルファ版は、ソフトウェアの安定した自動アップデートというUlteoの最初のねらいに焦点を当てたものだ。リリースノートによると、UlteoはYuchというシステムを利用して「システム全体を読み取り専用のSquashFSイメージとその他レイヤからループとしてマウント」するという。また「読み取り専用の各種レイヤと読み書きを行うシステムレイヤとは、UnionFSのほか、新たに最新のシステムが利用できないかを確認するために常にUlteoサーバに接続されたUGD(Ulteo General Daemon)と呼ばれるデーモンを使って統合される」とも記されている。

Duval氏は次のように補足している。「このシステムは安全だ。というのも、我々はファイルシステムではなく、ビット単位で複製が必要なシステムイメージに対してアドレス指定を行っているからだ」

残念ながら、このリリース版は出たばかりなので、この記事の掲載時には利用可能なアップデートが存在しなかった。結果として、ハードディスクにUlteoをインストールするユーザは、しばらく待たなければYuchおよびUGDの動作を確認できないことになる。また、CDからのアップグレードや、スワップ領域以外に複数のパーティションを持つハードディスクへのインストールなど、実装待ちになっている機能も数多くある。今のところUlteoは、KDEデスクトップを備えたもう1つのディストリビューションに過ぎない。

しかしDuval氏は、Ulteoは単なる新手のディストリビューションではない、と主張する。UlteoはDebianとUbuntuをベースにしているが、そのパッケージは「調整されており、最終的な結果はソースから再生成」されている。もっと端的に、Duval氏は次のように問いかけている。「他と同じようなLinuxディストリビューションをまた手がけることに何の意味があるだろうか。Ulteoの開発は、ユーザの苦悩から生じたものであり、我々はそれを解消するソリューションを提供したいと考えている」

ビジネスの開拓

Duval氏の意図する、または安全にオンサイト管理者の代わりをしてくれるコンピューティングをUlteoが実践できるかどうかに関係なく、このプロジェクトの活動がMandrivaからの離脱という不遇に甘んじた彼のコンピューティングにおける影響力を復活させたことは明らかだ。「これは、その技術的な見通しという点と、過去半年の間に非常に多くの聡明で興味深い人々と私が触れ合ってきた点の双方の理由から、胸を踊らせる新たな冒険だと言える」(Duval氏)。

今のところ、Ulteoを支援するベンチャー資本家はいないが、Notix Technical SolutionsがプロジェクトのWebサイトに関する支援を行っている。ただしDuval氏は、最終的にUlteoをビジネスに発展させたいと考えている。事業化を遅らせているのは「オープンソース/フリーソフトウェアに完全に適合したビジネスモデルをUlteoに用意したい」からであり、Ulteoは「価格の手頃なOEM PC向けのすばらしい選択肢になるだろう」とDuval氏は述べている。

MandrakeSoftとMandrivaから学んだ経験をUlteoに活かそうとしているかと尋ねたところ、彼は次のように答えた。「もちろんだ! 可能な限りあるいは必要な限り、私は平常心を保つよう努めているし、何をすべきかやどうすべきかを私に吹き込もうとする人々は決して信用しないようにしているよ」

Bruce Byfield氏はセミナーのデザイナ兼インストラクタで、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリストでもある。

NewsForge.com 原文