SPI、長年のドメイン名問題に終止符か

Software in the Public Interest(SPI)は、フリーのハードウェアとソフトウェアの振興に取り組むNPOである。Debianの公共の顔として最もよく知られる。ただし、比較的活動の停滞した数年の後、現在は活動を見直し、他のプロジェクトにまで手を広げつつある。先日開かれた11月のミーティングでSPI理事会は、参加が検討されているプロジェクトとの協議の状況、挫折が明らかなプロジェクトの削除、スペインにおけるDebianの商標問題など、さまざまな議題を話し合った。なかでも重要なのは、1998年以来のOpen Source Initiative(OSI)とのドメイン名を巡る紛争に次回のミーティングで決着を付けると決議されたことである。

SPIの理事会は、irc.oftc.netの#spiチャネルで毎月開催される。理事会は現在と過去のDebian紳士録のような顔ぶれで、元Debian Project LeaderであるSPI議長Bdale Garbee氏やBranden Robinson氏のほか、Ian Jackson氏、Martin “Joey” Schulze氏のような長年のDebian活動家で構成される。

ゲストもオブザーバーとして歓迎され、たいていは大勢のDebian開発者が加わる。IRCニックネームでのやり取りやチャットにありがちな脱線のためディスカッションがシュールに見えることが ─ 特に議事進行上の問題について ─ 多いが、それでもほとんどの場合に1時間ほどで決議に至る。

再生のきざし

SPIが長い眠りから目覚めつつあることは、現会計担当Josh Berkus氏の報告書からもわかる。このレポートが公開されたのは、詳細な情報をIRCチャネルに提示するのが難しいためだ。Berkus氏(SPIの最初の会計担当をしばらくの間勤めた特別理事David Graham氏によれば経理に通じた人物)は、2005年度の財務報告書が完成し、まもなく2006年度報告書と4年間の懸案だったSPIのニューヨーク州でのNPO登録に動ける見込みだと報告した。また、同氏はSPIが年間10万ドル以上の収入を得ており、NPO資格を維持するため、これまでより厳しい報告書の提出が義務付けられることも明らかにした。

活性化のきざしは、Garbee氏からも報告された。LedgerSMBやOpenOffice.orgなど、SPIの新メンバーになることが有望視される関係者とオンラインや直接会って話し合いを重ねているという。このニュースに意を強くしたBerkus氏は、SPIがAssociated Projects HOWTO(関連プロジェクトHOWTO)を早急にオンラインで公開する必要があることを理事会にあらためて提案した。

逆に、理事会はOpenVASのSPI参加資格の抹消も可決した。OpenVASのWebサイトがダウンし、問い合わせに回答がなく、明らかにプロジェクトは頓挫したという事実による判断だ。また、OpenVAS向けの寄付金を提供者に返金することも決議された。

スペインでのDebian商標

SPI理事会では、長年の懸案であるスペイン国内でのDebian商標の問題についても議論された。この問題は、DebianともSPIとも無縁の人物、Jesus Martinez氏がDebian商標を保有することに起因する。そのため、スペインが加盟するEU圏全体でDebianを商標登録できない状態になっている。Martinez氏の側からは、同氏による商標収用に関する記述をインターネット上から完全に削除すること、そして同氏に3,000ユーロが支払われ、Debian商標の個人的使用を認める文書がSPIから発行されることが和解の条件として提示されたが、SPI理事会はこれを拒否したという経緯がある。

SPIの法律コンサルタントGregory Pomerantz氏が、この問題に現在も取り組んでいる。だが、Berkus氏によると、理事会の懸念は、Pomerantz氏が「この無報酬の法律業務に費やせる時間が十分ではなく」、理事会から十分な情報を得ていないのではないかということだ。案件を熟知するPomerantz氏が今後もコンサルタントを勤めることを理事会は望んでいるが、問題を早期に解決するために同氏が多くの時間を費やせるようにするため、コンサルタント料の支払いも考慮されている。だが、結局、どのような措置を取るかは決定に至らなかった。

OSIドメイン名の譲渡

理事会は、OSIとの長年の係争事案の解決にも前進した。1998年、Bruce Perens氏がSPIを離れてOSIの設立に加わったが、このときドメインopensource.orgとopensource.netの権利譲渡は行われなかった。SPIは現在も2つのドメインの権利を保有するが、OSIからは権利の譲渡がいまだに要求される。

過去、この要求は両NPOの対立感情から黙殺されていた。以前のSPI理事は、OSIの組織に対する異議を根拠に要求を拒否した。現在、SPI理事Graham氏は、「他の501(c)3 NPOの組織は当方の関知するところではなく、これらのドメインをできるだけ早い時期にOSIに引き渡す責任があります。この決議を先延ばしにしたくありません。これを最後に決着を付けるべき問題だと思うからです」と提案する。

メールで十分に話し合える時間を作るため、決議を次のミーティングに延期することをJackson氏が提案した。この動議は了承されたが、Garbee氏は議長として注意を促した。「私の立場をはっきりさせておきます。この問題には、結論がなんであれはっきり決着を付けたいのです。これ以上の延期は許容できません。理事の方々はどうか審議を継続し、来月の決議までに立場を決めてください」

現Debian LeaderのAnthony Towns氏は、数件の議題の提出を予定していたが、これを延期した。そして、Garbee氏が、フリーソフトウェア・ビジネスの最も活動的な部分を最大限に多くの人々に届けるのではなく、コミュニティの誰かが取り組むべき日常的な懸案を取り上げることを目指そうと宣言し、まもなくミーティングは閉会となった。

注記:SPIミーティングについて記事で紹介するのは、NewsForgeにとって実験である。ミーティングのたびにレポートを掲載する予定はないが、面白い動きがあれば記事にすることを考えている。判断の参考にしたいので、この実験に関するご意見を歓迎する。

Bruce Byfieldは、NewsForge、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿しているコンピュータ・ジャーナリストでもある。

NewsForge.com 原文