「Linuxに“負債”などない」──採用企業のCIOらがバルマー発言に反発
「自分の会社が(Microsoftに対して)『隠れた負債』を抱えているとは思わない」と強調するのは、米国の情報プロバイダー、クロール・ファクチュアル(コロラド州ラブランド)のCIO、ラス・ダナン氏だ。
グローバル・サービス・プロバイダー、マーシュ&マクレナンの子会社である同社のデータ・センターでは、WindowsサーバとともにRed Hat Linuxサーバを導入している。同氏は、MicrosoftとNovellの特許協定に関するComputerworld 米国版の質問に電子メールで回答してくれた。
Novellとの特許協定についてしばらく沈黙を守っていたMicrosoftのCEO、スティーブ・バルマー氏は先週、「LinuxソースコードはMicrosoftの知的財産を侵害している」と明言した。NovellのSUSEディストリビューション以外のLinuxを採用している企業は、賠償にかかわる潜在的な時限爆弾(同氏が言うところの「隠れた負債」)を抱えるというのである。
MicrosoftとNovellは11月20日、それぞれ異なる見解を発表した。Microsoftはバルマー氏の発言よりも控えめながら依然支持する見解を、一方、NovellのCEO、ロナルド・ホブスピアン氏は、Microsoftの考えに異議を唱えるコメントを出している。
クロールのダナン氏は、「(自分は)ソフトウェア特許の強い支持者ではないが、『負債』があるという(Microsoftの)脅しによって、Red Hatを使い続けるか、あるいはSUSEやWindowsに移行するかどうかが左右されることは一切ない」と断言する。
「スティーブ・バルマー氏は、自身の発言が企業のIT幹部にほとんどあるいはまったく影響を及ぼさないと知りながら、マインドシェア獲得のために企業幹部にそうした姿勢をちらつかせている」(同氏)
金融サービス・プロバイダーのシティストリート(マサチューセッツ州ノースクインシー)でCIOを務めるバリー・ストラスニック氏は、さらに厳しい姿勢を示している。
同氏は電子メールの中で、「多くのIT幹部と同様、バルマー氏のコメントに強く反対する」とコメントした。シティストリートのデータ・センターはRed Hat Linuxを広範に採用している。
「Microsoftが、特許侵害にあたるコードがLinuxに含まれていると確信するのなら、マスコミにそう振舞うだけでなく直ちにそのコードを公開すべきだ。FUD(恐怖、不安、疑念)は1970年代のIBMには効果的な戦術だったかもしれないが(当時を経験した人もいるだろう)、今日では通用しない」
イルミナータのアナリスト、ゴードン・ハフ氏によれば、1990年代後半、Linuxがドットコム企業の間に広まり始めたころ、主要ユーザー企業のCIOの多くからは「リスクの高いOS」と見られていた。同OSの知的財産を統括するオープンソース・ライセンス規約であるGPL(GNU General Public License)が当時まだ浸透していなかったことがその理由の1つだった。
「1999年当時のCIOは、Linuxの知的財産問題を慎重に研究したわけではない。この問題に関する情報が少なかったために、構想全体への疑念をぬぐえていなかった」(同氏)
懸念されたリスクは、2003年に現実となった。元Linuxディストリビューターで、のちにライセンスを供与するようになったSCOグループが、IBMやRed HatなどのLinuxベンダーとともに、オートゾーンやダイムラー・クライスラーを含む元顧客を著作権侵害で提訴したのだ。
しかし、これまでSCOの訴訟はほとんど進展していない。その間にもヒューレット・パッカード(HP)、Red Hat、SUSEをはじめ多くのオープンソース・ベンダーは、対応策として顧客向けの標準サポート・パッケージの中に訴訟対象となった場合の免責補償を提供している。一方、IBMなどは「補償は不要」との姿勢を以前から貫いている。
「当社が補償(サービス)を提供しないのは、顧客がめったにそれを要求しないからだ」(IBM広報担当)
いずれにせよ、「Linuxの成功は、顧客のほとんどがLinuxをリスキーだととらえていないことを表している」とイルミナータのハフ氏は指摘する。
Microsoftの主張が裏目に出る可能性もある。シティストリートのストラスニック氏は、「Microsoftプラットフォームへの移行を検討したアプリケーションもあったが、今回の件で私自身の気持ちは完全にMicrosoftから離れた」と怒りをあらわにしている。
(エリック・レイ/Computerworld オンライン米国版)
提供:Computerworld.jp